企業研究(160) 7280 ミツバ/超割安なんだが…種類株式とは??
こんばんは。日曜日の夜~月曜日の朝は、企業研究しましょう。
7280 ミツバ
自動車ワイパーモーターなどが主力。ホンダ向けが5割弱。旧日産系の自動車電機工業と合併。海外比率69%(会社四季報新刊より)。
<1> 株価指標&財務状態
PERとPBRは超割安です。ただ、種類株式発行しているので、その辺は後ほど。配当は現状は1株あたり3円と微々たるものですが、中計を見ると増配の可能性が高いです。
財務状態ですが、自己資本比率が20%程度とかなり低い。利益剰余金が280億円くらいありますが、有利子負債が1,700億円とバカでかい。これは良くはないですね。
<2> 株価チャート
株式市況が冷え込んだ3月に直近底値447円をつけましたが、そこから直近高値(6/16 816円)まで+80%超の上昇。特に、5/10本決算発表後に窓を開けてガンと上げています。
チャート形状は非常に良いですね。このまま順調に上げて、4桁に乗せても良いんじゃないでしょうか。
<3> 決算情報
今期大きく業績を回復しています。前期で自動車部品の価格改定があったようで、今期はフルに効いてくる模様。
アジア好調、中国都市封鎖反動増、円安ドル高など、今期は追い風が多く、大幅営業増益となっています。
<4> 中期経営計画
前期の本決算に合わせて5ヵ年(FY23~27)の中期経営計画を発表しています。
■ 5/19決算説明会資料
https://www.mitsuba.co.jp/jp/ir/library/files/briefing/20230524_01.pdf
私的な中計の最重要チェックポイントは、数値目標と株主還元方針なんですが、数値目標は妥当な感じだとして、「株主還元」は5年で320億円資金を配分する計画とのこと。
右の吹き出しを見てみると…、ん??、「種類株式の償還」って何だろう。気になって調べてみると…。※次項に続く
<5> 種類株式発行と償還・転換等
種類株式って特殊な株式で、普通株式とは配当率や優先配当設定、議決権有無などが異なります。まずは当銘柄の種類株式の発行経緯を書いていきましょう。
過去の独禁法違反や米カルテル訴訟関連で資金流出が続き、大幅に財務状態が悪化したため、構造改革としてFY2020までに大規模な特損を計上。
繰越利益剰余金が欠損(マイナス)に転じたことから、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第弐号投資事業有限責任組合を引受先とした種別株式の発行を実施。A種150億円(1.5万株)+C種50億円(0.5万株)=200億円を調達。(取得時の株価390.3円)
A種は年6%を優先配当で議決権なし。普通株式・B種株式・金銭を対価とする取得条項が付されている。2022年度に発行1.5万株のうち0.5万株を償還済み(残 1万株)。なお、B種は年8%の優先配当。
C種は配当・議決権ともになし。普通株式・金銭を対価とする取得条項が付されている。
A種・C種ともに取得請求権の行使は2024年7月1日以降であったが、2023年3月期の営業利益目標が達成されなかったため、制限が解除されて請求権行使が可能となった。(13.5カ月くらい前倒し)
まぁ要するに、資本増強のために普通株式か現金に変換できる特殊な株式を発行していて、普通株式ベースで換算するとA種 約2,562万株+C種 約1,281万株=約3,843万株が潜在株式となっています。
引受先の投資組合としては、A種よりもB種の方が配当利率が高いのでB種に、C種は持っていても金を生まないので普通株式か金銭に変換したいはず。現金に変換する際の係数よりも、普通株式を取得して売った方が大分高そうなんですが、普通株式を取得した時点で株価が大きく下がるだろうから、どちらを選ぶかは不明。
ではでは、種類株式が償還or返還される場合のケーススタディ。
<ケース1> 全て普通株式に変換された場合
① 普通株式発行数 約4,558万株→約8,401万株(自己株除くと約8,319万株)
② 今期EPS見通し 178.8円 → 96.2円 / PER 4.44倍 → 8.26倍
③ 5年累計の1株あたり配当 Max 385円 (配当利回り 5年累計 48.4%)
<ケース2> A種がB種に変換、C種が償還された場合
① 普通株式発行数 変わらず
② B種の配当総額 40億円+C種の金銭 75.5億円(1.51倍)=115.5億円
③ 5年累計の1株あたり配当 Max 448円 (配当利回り 5年累計 56.4%)
※普通株式の配当利回りがB種の年率8%を超えてしまうからなさそう。
※償還時期は23年7月~24年6月を想定。
<ケース3> すべて償還された場合
① 普通株式発行数 変わらず
② A種 金銭 130億円(1.24倍+配当)+ C種 75.5億円(1.51倍)=205.5億円
③ 5年累計の1株あたり配当 Max 251円 (配当利回り 5年累計 31.6%)
※これが一番現実的か…。償還時期はケース2と同じ想定。
ケース3が、普通株式の配当利回りが一番低いケースですが、それでも5年累計31.6%=年平均6.3%。ただ、種別株式が償還されるのか、それとも転換されるのか、動向が定まらない限りは、配当は当初のまま3円でしょうから、それまで我慢して保有できるかという課題はありますね…。
前触れなく発表されると思うので、増配起因で利益を得るためには結構腹を括って長期保有する必要があります。
<6> 売買戦略
基本的には業績好調なので現在株価で購入しても良いのですが、種別株式という不確定要素を抱えているので、関連のIRが出た際の値動きが想定できないのが悩ましいですね…。
こういう場合は、購入基準を決めて腹を括って保有する感じがよいと思います。
(例)
買付基準 780円
第一利確 980円 (+25.6%)
最終利確 1,180円 (+51.3%)
取組期間 1年超の長期保有
長期でお付き合いできる方であればおススメできる銘柄だと思います。