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里山の雨のある暮らし #描写遊び

窓をあけた。
雨は止んだが、どんよりとしたグレーの空に、雨とは違った川の水が流れる音がする。

ある人が
「雨が降って得する人が、ワザと雨を降らせてるんだ」という。
それを聞いて、わたしは
「秋が早まって、長雨を降らせてると思ってた」と答える。

昨日の夜は、肌寒さといっしょに、すずむしが鳴いていた。
やっぱり、わたしは秋が来たんだと思った。


山と川が間近にあるこの土地に移り住み、半年が経った。
ダムのサイレン、警報を知らせる町内放送、道路の大きな水溜り。
どれもはじめての経験で、わたしの胸をドキドキと緊張させる。

いつも青くて澄んだ大きな川が、茶色く濁り、波打っている。
海の見える道に出た。海は、川を大きく包み込んでくれていた。

長くこの土地に住む男性が「たまには雨もいいね」と、いった。
友人が「晴耕雨読の生活ですね」とメッセージをくれた。


晴れ間が見えた。キレイな澄んだ青だった。
晴れ間が見えてすぐ、子どもの元気な声が聞こえた。
軽トラの走る音が聞こえた。

窓を見なくても、みんなの音で雨が止んだことがわかるから、この土地は好きだ。

長雨のおかげで、根付かない、と思っていた剪定したコスモスが、しっかり土に根を張った。
風でうなだれるように倒れたヒマワリも、わき目から花が咲きはじめた。

飼い主がいるのかノラか分からないネコが「にゃー」と鳴いた。
そしたら、また雨が降りはじめた。柿の葉や、稲穂がしずくの音を作り出す。
ふと、ただただ雨音を聴き、雨のしずくを目で追って、頭をカラッポにしたい。そんな欲求がわいた。


きょうは、空のトーンが少しだけ明るく感じる。
コーヒーを淹れた。雨音と、湿った空気と、コーヒーの香りの組み合わせが、なんだか心地よい。

(おわり)


こちらを参考に遊ばせていただきました。


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あやこにこ☺︎ふわ軽ライフ
読んでくださり、本当にありがとうございます^ ^