成年年齢引き下げと消費者トラブルの現状・対策
2022年4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
それに伴い、18歳・19歳の若者が巻き込まれる消費者トラブルの増加が指摘されています。
18歳・19歳の消費者トラブルの現状と対策などについてお話しします。
1 成年年齢が18歳に引き下げられて変わったことと変わらないこと
成年年齢の引き下げにより、若者の自立や社会参加が促進される一方で、健康や安全を守るための制限は維持されています。
2 18歳・19歳の若者が巻き込まれる消費者トラブル
18歳・19歳の消費生活相談の件数は、つぎの図のとおりです。
2023年度は、前年と比較してほぼ横ばいとなっています。
商品・役務等別にみると、「美(び)」や「金(かね)」に関する相談が多く寄せられています。
「美」は「脱毛エステ」「医療サービス」など、「金」は「他の内職・副業」「金融コンサルティング」などです。
販売方法・手口別にみると、「インターネット通販」、「定期購入」に関する相談が多くなっています。
独立行政法人国民生活センターに寄せられた消費者トラブルにはつぎのような事例があります。
(出所) 独立行政法人国民生活センター「成年年齢引下げ後の18歳・19歳の消費者トラブルの状況(2022年10月末時点)」「18歳・19歳の消費者トラブルの状況-成年年齢引下げから1年-」
(1)脱毛エステ
・広告を見てお試しのつもりで店舗に行ったが、高額な契約をしてしまった
・解約の電話をしているが繋がらず、メールを送っても返事がない
・契約した脱毛サロンが倒産したが、請求が続いている
(2)商品一般
・自分宛てに身に覚えのない商品が届いた
・架空請求された
(3)他の内職・副業
・簡単に稼げるという広告を見て登録したところ、高額なサポートプランを勧誘された
(4)出会い系サイト・アプリ
・SNSで知り合った相手から出会い系サイトに誘われ、やり取りをするために有料のポイントの購入を何度も求められた
・異性の悩みを聞くだけで報酬がもらえるとのインターネット広告を見てサイトに登録したが、サービスの利用料金や、報酬を受け取るための手続き費用等の支払いを何度も求められた
(5)賃貸アパート
・管理会社のサポートに不満がある
・退去時の原状回復トラブル
3 消費者トラブル防止のポイント
18歳・19歳が消費者トラブルに遭わないために注意すべきポイントはつぎのとおりです。
(出所) 独立行政法人国民生活センター「成年年齢引下げ後の18歳・19歳の消費者トラブルの状況(2022年10月末時点)」
(1)広告や勧誘の文言を鵜呑みにしない
「お試し価格」や「すぐに儲かる」など、安さや気軽さ、メリットのみが強調された文言に注意しましょう。
とくに、SNSやインターネット広告には誇大広告が多いです。
(2)契約は慎重に検討する
契約する商品・役務の内容、契約期間、支払総額をしっかり確認し、納得したうえで契約することが大切です。
契約書をよく読み、不明点があれば問い合わせましょう。
(3)必要がなければ契約しない
必要がなければ「契約はしない」ときっぱり断ることが重要です。
とくに、訪問販売や電話勧誘などの強引な勧誘には注意が必要です。
(4)クーリング・オフや契約の取消しができる場合がある
つぎに該当する契約は、書面またはメールなどによりクーリング・オフ(無条件での契約解除)ができる場合があります。
(5)少しでも不安に思ったら早めに相談する
消費生活センターや消費者ホットライン「188(いやや!)」に相談することが大切です。
専門家のアドバイスを受けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
4 消費者トラブルに巻き込まれた場合の対処法
18歳・19歳が消費者トラブルに巻き込まれた場合、つぎのようなステップで対処することが重要です。
(1)冷静になる
まずは冷静になり、状況を正確に把握することが大切です。
焦って行動すると、さらにトラブルが悪化する可能性があります。
(2)契約内容を確認する
契約書や利用規約を再度確認し、契約内容や解約条件を把握します。
とくに、クーリング・オフや契約解除の条件が記載されているかを確認しましょう。
(4)クーリング・オフの適用を検討する
特定商取引法に基づくクーリング・オフが適用できる場合は、書面で契約解除の意思を通知します。
クーリング・オフの期間内であれば、無条件で契約を解除することができます。
(4)消費生活センターに相談する
少しでも不安に思ったら、消費生活センターや消費者ホットライン(188)に相談しましょう。
専門家のアドバイスを受けることで、適切な対処方法を知ることができます。
(5)証拠を集める
契約書、メール、請求書、録音など、トラブルに関する証拠を集めておきます。
(6)交渉する
相手方と直接交渉する場合は、冷静かつ丁寧に対応しましょう。
解決策を提案し、相手方の意見も尊重しながら話し合います。
(7)法的手段を検討する
交渉がうまくいかない場合は、弁護士に相談し、法的手段を検討します。
訴訟や調停などの手続きを通じて、トラブルを解決できる可能性があります。
5 消費者を保護するための法律や制度
消費者の利益を守るため、特定商取引法、消費者契約法、電子契約法などが制定されています。
トラブル防止に役立ち、実際にトラブルになった場合の助けにもなります。
(1)特定商取引法
消費者トラブルが特に生じやすい取引について、クーリング・オフや中途解約ができることを定めています。
訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引など、消費者トラブルが発生しやすい取引が対象です。
(2)消費者契約法
消費者と事業者の間の情報力や交渉力の格差を前提に、消費者の利益擁護を目的としています。
事業者の不当な勧誘行為によって結ばれた契約の取消しや、不当な契約条項の無効を定めています。
(3)電子契約法
インターネットを利用した契約に関するルールを定めた法律です。
事業者が申込内容の確認画面の表示などの措置をしていないと、消費者が操作ミスや勘違いをしても取り消せるなどと定めています。
6 若者向けの消費者教育
若者の消費者教育は、成年年齢に達することで直面する消費者トラブルを未然に防ぐために、さまざまな方法で行われています。
(1)学校教育
①授業やカリキュラム
高校の「家庭」や「公民」の授業で、消費者教育が取り入れられています。
契約の基本や消費者トラブルの事例を学び、トラブルに巻き込まれないための知識を身につけます。
②特別授業やワークショップ
消費生活センターや消費者団体が学校に出向き、特別授業やワークショップを開催します。
実際のトラブル事例をもとにしたロールプレイングやディスカッションを通じて、実践的な知識を学びます。
(2)オンラインリソース
①政府や自治体のウェブサイト
消費者庁や国民生活センターなどのウェブサイトでは、若者向けの消費者教育コンテンツが提供されています。
動画やクイズ形式の教材を通じて、楽しく学べるよう工夫されています。
②SNSやYouTube
若者がよく利用するSNSやYouTubeを活用して、消費者教育の情報発信が行われています。
インフルエンサーや専門家が出演する動画で、トラブル事例や対策を紹介しています。
(3)地域の取り組み
①消費生活センターの相談窓口
各地の消費生活センターでは、若者向けの相談窓口を設けています。
トラブルに巻き込まれた場合や不安なことがある場合に、気軽に相談できる環境が整っています。
②地域イベントやセミナー
地域のイベントやセミナーで、消費者教育の講座が開催されます。
親子で参加できるものや、若者向けの特別セッションが用意されています。
(4)教材の提供
①パンフレットやリーフレット
消費者庁や国民生活センターが作成したパンフレットやリーフレットが、学校や地域のイベントで配布されています。
具体的なトラブル事例や対策がわかりやすくまとめられています。
②オンライン教材
オンラインで利用できる教材も充実しています。
インタラクティブなコンテンツやシミュレーションゲームを通じて、実践的な知識を身につけることができます。
18歳・19歳のみならず若者が消費者トラブルに巻き込まれる例は依然として多くあります。
しっかりとした知識と対策を身につけることができるよう大人が支援することも大切です。