「ねんきん定期便」の見方と確認ポイント
厚生労働省が発表した2024年の財政検証結果によると、長期的には年金給付水準が緩やかに低下する見通しです。
具体的には、現在の60%程度から50%程度に低下する可能性があるとしています。
自分が将来いくらくらい年金をもらえそうなのかはだれもが気になるところです。
公的年金の保険料納付実績や将来受給できる年金額の見込みなどを毎年定期的に通知してくれる仕組みがあります。「ねんきん定期便」です。
「ねんきん定期便」の記載内容や見方、確認ポイントなどについてお話しします。
1 「ねんきん定期便」の概要
「ねんきん定期便」は、日本年金機構が毎年、国民年金や厚生年金に加入している人に送付する書類です。
年金加入記録の確認や訂正のために、加入者の誕生月の2カ月前に作成し、誕生月に届くように送付されます。
つぎの表のとおり年齢によって形式や記載される内容が異なります。
おもな記載内容はつぎのとおりです。
(1)加入記録
これまでの年金加入期間や納付状況が記載されています。
自分の年金加入状況を確認できます。
(2)年金見込額
将来受け取ることができる年金の見込額が記載されています。
老後の生活設計に役立てることができます。
なお、50歳未満の人と50歳以上の人では、老齢年金の見込額(これまでの加入実績に応じた年金額)の部分が異なります。
①50歳未満の人
これまでの加入実績(「ねんきん定期便」で通知している年金加入記録)をもとに計算した老齢年金の額が表示されます。
②50歳以上の人
現在加入している年金制度に、60歳まで同じ条件で加入し続けたものと仮定して計算した老齢年金の見込額が表示されます。
(3)保険料納付額
これまでに納付した保険料の総額が記載されています。
自分がどれだけの保険料を納付してきたかを確認できます。
(4)その他のお知らせ
住所変更や年金受給開始手続きなど、重要なお知らせが記載されています。
2 「ねんきん定期便」の見方
2024年度送付分の「ねんきん定期便」の見方はつぎのとおりです。
日本年金機構のウェブページに「50歳未満の方」用の見方ガイドと「50歳以上の方」用の見方ガイドがそれぞれ掲載されています。
(1)表面
【50歳未満】(2024年度分 2024年10月~)
【50歳以上】(2024年度分 2024年10月~)
①照会番号
「ねんきん定期便」「ねんきんネット」専用番号へ問い合わせる際に使用する番号です。
基礎年金番号とは異なります。
公務員共済や私学共済に加入していた人は、加入者番号も表示されます。
②これまでの加入実績に応じた年金額または老齢年金の見込額
㋐【50歳未満】これまでの加入実績に応じた年金額
これまでの加入実績にもとづいて、将来受け取ることができる年金の見込額が記載されています。
グラフ形式で表示されており、昨年と比較してどれだけ増えたかがわかります。
㋑【50歳以上】老齢年金の見込額
65歳から受け取れる年金見込額が表示されます。
60歳未満の人は現在の年金加入制度に60歳まで継続して加入したと仮定した見込額です。
60歳以上65歳未満の人は「ねんきん定期便」の作成時点の年金加入実績に応じた見込額です。
さらに、70歳または75歳まで受給を遅らせた場合の老齢年金見込額も表示されます。
グラフ形式で表示されており、受給を遅らせることでどれだけ増えるのかがわかります。
③最近の月別状況
直近13カ月の国民年金の納付状況や、厚生年金保険の加入区分、標準報酬月額・標準賞与額・保険料納付額が確認できます。
④公的年金シミュレーター二次元コード
スマートフォンでスキャンすると、年金見込額の簡易試算ができる「公的年金シミュレーター」にアクセスできます。
⑤これまでの保険料納付額(累計額)
これまでに納めた国民年金保険料および厚生年金保険料の合計額が記載されています。
(注) 50歳未満は裏面に記載されます。
(2)裏面
【50歳未満】(2024年度分 2024年10月~)
【50歳以上】(2024年度分 2024年10月~)
⑥これまでの年金加入期間
年金の加入期間が確認できます。
加入資格ごとの保険期間とその合計が記載されています。
⑦これまでの加入実績に応じた年金額または老齢年金の見込額
表面(②)の【50歳未満】「これまでの加入実績に応じた年金額(今年)」または【50歳以上】「老齢年金の見込額」の内訳です。
⑧お客様へのお知らせ
住所確認のお願いなど、個人向けのメッセージが記載されています。
⑨ねんきんネットの「お客様のアクセスキー」
「ねんきんネット」に登録する際に利用できる17桁の番号です。
「ねんきんネット」を利用すると、パソコンやスマートフォンで自分の年金情報を確認できます。
なお、「お客様のアクセスキー」有効期限は、作成日の5カ月後の月末までなので注意が必要です。
3 「ねんきん定期便」の確認ポイント
「ねんきん定期便」を確認する際のポイントはつぎのとおりです。
(1)基本情報の確認
自分の氏名や住所が正しく記載されているか確認します。
誤りがある場合は、速やかに修正手続きを行いましょう。
(2)最近の月別状況の確認
直近13カ月の国民年金の納付状況や、厚生年金保険の加入区分、標準報酬月額・標準賞与額・保険料納付額が確認できます。
納付漏れや誤りがないか確認しましょう。
(3)保険料納付状況の確認
これまでに納付した保険料の状況が正しく記載されているか確認します。
とくに、転職や退職などで納付状況が変わった場合、記録が正確かどうか確認する必要があります。
(4)加入期間の確認
これまでの年金加入期間が正しく記載されているか確認します。
とくに、転職や結婚などで名前や住所が変わった場合、記録が漏れていることがあります。
また、未納期間がないか確認します。未納期間がある場合は、追納手続きを検討しましょう。
なお、「ねんきん定期便」で確認できない詳細な記録については、「ねんきんネット」によりオンラインで確認できます。
「ねんきん定期便」記載の「お客様のアクセスキー」により「ねんきんネット」にアクセスします。
(5)将来の年金見込額の確認
50歳以上の人には、将来の年金見込額が詳細に記載されているので、確認して老後の生活設計に役立てましょう.
(6)お知らせの確認
住所確認のお願いなど、個人向けのメッセージが記載されています。重要なお知らせがないか確認しましょう。
日本年金機構のウェブサイトによると、とくに漏れや誤りが起こりやすいのはつぎのような人です。
・転職のたびに年金手帳が発行された
・勤務先の会社が、その後、合併、社名変更、倒産した
・同じ会社(グループ)内で転勤や出向を繰り返していた
・試用期間中に退職した
・保険の外交員、期間工などとして勤めていた
・いろいろな名前の読み方がある
・退職後、結婚し姓が変わった
・学生であったが国民年金に加入していた
・夫(妻)の扶養家族であったが国民年金に加入していた
4 年金加入記録に漏れや誤りがあった場合の対処方法
年金加入記録に漏れや誤りがある場合には、つぎの手順で対処できます。
「年金加入記録回答票」に必要事項を記入し、日本年金機構へ郵送するか、最寄りの年金事務所に提出します。
なお、35歳、45歳、59歳の人に送付される封書「ねんきん定期便」には「年金加入記録回答票」と返信用封筒が同封されています。
日本年金機構が年金加入記録の調査・確認のうえ、必要な対応を行います。
5 電子版「ねんきん定期便」
電子版「ねんきん定期便」は、従来の紙の「ねんきん定期便」をデジタル形式で提供するサービスです。
「ねんきんネット」に登録することで、毎年の誕生月に電子版「ねんきん定期便」をオンラインでPDF形式にて確認できます。
ダウンロードが可能で、年金記録の管理や保存に便利です。
電子版を利用することで、紙の「ねんきん定期便」の郵送を停止できます。
利用対象者は、国民年金または厚生年金保険の加入者(20歳以上60歳未満の年金未加入者を含む)です。
利用には「ねんきんネット」に登録する必要があります。
登録には、マイナポータルとの連携やユーザーIDの取得が必要です。
「ねんきん定期便」は、老後のライフプランを立てるうえで重要な書類です。
毎年確認して老後資金対策を考えていくことが大事です。
なお、「ねんきんネット」は年金記録を随時確認できるので、合わせて活用できます。