みらっちセレクション④ わりと人生を決定づけがち
今日は少々懐かしい、昭和の小学生女子の憧れ「少女漫画」のお話など。
私が小学生当時、漫画雑誌と言えば、『なかよし』か『りぼん』か、という二大雑誌がありました。
そのほかに『ちゃお』(小学館)などもあったのですが、とりあえず、『週刊/月刊/別冊フレンド』『週刊/月刊/別冊マーガレット』方面に移行するまでには、たいてい、通る道が『なかよし』と『りぼん』でした。
『なかよし』が講談社で、『りぼん』が集英社ですね。
私は小学生の頃はどちらも、ちゃんと買って読んだ記憶がありませんが、どちらかというと『なかよし』を読んでました(友達の家などで)。中学生になるとお小遣いで時々は『りぼん』を買いました。中学生における『りぼん』は、ちょっと子供っぽい選択です。お姉さんがいたり、大人びた女子はだいたい『マーガレット』や『フレンド』でした。
ちなみに『マーガレット』は集英社。
『フレンド』は講談社。
でも、当時(1980年~1986年頃)の『りぼん』はすごかったんですよ。
👆私の小中高時代。
なにしろ一条ゆかり先生の『有閑倶楽部』、池野恋先生の『ときめきトゥナイト』の第一回がリアルタイムでしたからね。岡田あーみん先生の『お父さんは心配性』などもありました。
実は白状すると高校生になってもたまに懐かしくてりぼんを買ったりしてたので、さくらももこ先生の『ちびまる子ちゃん』の連載第一回を知っています。へーなんかこの漫画、「昭和が懐かしい、って感じなのが新鮮」と思った記憶があります。当時まだ昭和だったので。
中学時代は本田恵子先生の『月の夜星の朝』とか萩岩睦美先生の『小麦畑の三等星』が大好きでした。小椋冬美先生の『リップスティック・グラフィティ』はちょっとオトナっぽい感じでした。
と、語り尽くせぬ中学時代の漫画はまたいずれということにして、今日は小学校時代から読み始めた漫画と漫画家さんについて。
ちなみに私はどうも少年の心をもって生まれたらしく、男兄弟のいる友達の家に遊びに行った際は欠かさず『ジャンプ』『マガジン』『コロコロコミック』等々を読ませてもらっていました。
『サンデー』はちょっとオトナな感じで、読んだことがないんですが、確か『うる星やつら』と『タッチ』はサンデーでしたね。この二作品は男兄弟のいる家庭にはどっちか必ずあるような名作漫画で、借りたり遊びに行って読ませてもらいました。
お友達の男兄弟の皆さま、その節は(たぶん私が読んでいたことはご存じなかったと思いますが)ありがとうございました。
それと、『チャンピオン』はブラックジャックだけ読みました。雑誌『チャンピオン』はあまり、友達のご家庭にはなかったのですが、なぜか病院とか公共機関に置いてあることがあり、あとは単行本ならところどころのご家庭にも存在したので、読ませていただきました。
いやもちろん、読ませてください、と、姉 or 妹である友達に頼みます。黙って読んだりはしませんが、遊びに来て読みふけっているのも何なので、ほんの1冊読ませてもらっては、また遊びに行ったときに…みたいにジリジリと読ませてもらったものでした。
逆に少女漫画のほうは、友達の姉妹の漫画であっても、自分の家の漫画を持って行ったりするとガッツリたっぷり、読むことができました。『ガラスの仮面』『砂の城』などはそれで読んだパターン。
『はいからさんが通る/大和和紀』
大和和紀先生の漫画はもう、少女時代から青春を共にしたというくらい読みました。生まれて初めて全巻そろえて買ってもらったのがこの『はいからさんが通る』でした。もう、読んだ読んだ。何十回、何百回読んだかわかりません。
お転婆な大正時代の女性の大恋愛ストーリー。明朗快活で豪快な紅緒さんは憧れの女性でした。初恋の人であり婚約者である少尉に操を立て一途に初恋を貫く古風さがまた良いのですが、彼女を取り巻く男性陣がとても魅力的。すれ違いあり、引き裂かれる運命あり、記憶喪失あり、クライマックスは関東大震災と、てんこ盛りです。なんと紅緒さんは冤罪で投獄までされており、「牢名主」という言葉をここで覚えました。笑
私は軍隊で少尉の部下だった隻眼の鬼島軍曹と、紅緒さんと結婚直前までいった編集長、青江冬星さんが好きでした。
軍曹はなんと、『ガッチャマン』のコンドルのジョーがモデルだったと今回調べたウィキペディアで知りました。マジか!コンドルのジョー。ガッチャマンはおぼろげな記憶ですが、確かに好きだった……。戦隊で言えば絶対ブルー、いや、戦隊のブルーはコンドルのジョーがモデルだよねみたいな立ち位置のカッコよさ。冬星さんはミステリアスなオトナの魅力。ふたりとも紅緒に振られてしまうんですけどね。うーん、何か、既に男性の好みを見せつけられているようで怖い。
編集長との結婚式の日に起こる大震災。なんとか瓦礫から這い出して少尉を思い出してしまったときの、
という紅緒のセリフまで覚えています。読んでたのは小学校2年生くらいだったけど。笑
その後年月を経ても、小説や映画、舞台、宝塚歌劇、アニメと繰り返し制作、上演され、長く愛されている作品です。
大和和紀先生の漫画は、他はなんといっても『あさきゆめみし』。これはもう、中学生は学校で読むべきです。できたら画集もセットで。画集がなければ表紙だけは外さずに。
ご覧ください、この着物の精緻な描写。全コマこれですよ。どれほどの血と汗と涙の結晶かわかるというものです。
全体像がわからないまま、古典を学習したところで「御簾ってなに?」「床几って?」「烏帽子の種類は?」「重ねの色あわせとは」と引っ掛かるところが多すぎてどうにもなりません。これを読めばとにかく学習がスムーズにいくこと受けあい。和歌の内容も掛詞も覚えることができます。昭和の古典漫画、最高傑作のひとつです。
『天の果て地の限り』も、天智天皇と天武天皇の対立、額田王をめぐる確執など実によく描けているのでお勧めです。
『ヨコハマ物語』『N.Y小町』『菩提樹』などもいいですが、私が好きなのは『アラミス78』。ドタバタコメディがたまりません。
近年になるほど原作や原案ありきの作品が多くなったようで、私は『紅匂う』で祇園の花街のことを描いた漫画を読んだのが大和和紀作品の最後のような気がします。現在は大和和紀さんはどうされているのでしょうか。とにかく私の少女期を共に過ごした漫画家さんです。
『キャンディ・キャンディ/いがらしゆみこ』
これはもう、少女漫画の金字塔と言うべき作品。この後の『ジョージィ!』はコドモにはちょっと刺激的・衝撃的だった印象があるのですが、『キャンディ・キャンディ』はまさに王道を行く漫画で、アニメ化もされたのでテレビにかじりつくようにして観ていました。主題歌はもちろん今も歌えます。
いがらしゆみこ先生は版権をめぐって原作者と裁判になり、結局双方の合意なしには商品として販売ができないということになったようで、現在最初の単行本が古本で高値で売買されている以外はこの世に存在しないという希少本になっているそうです。さらにいがらしゆみこ先生は、その後アダルトな方向へと転換してしまい、少女漫画家としての活躍時期は短かったようです。
おぼろげにおぼえているストーリィは、当時の少女漫画としては画期的だったのかな、と今になって思います。思えばもうすでにアダルトな片鱗があったのかも。
アメリカの孤児院で育って名家の養女になり、その後イギリスの寄宿舎に行ったり、紆余曲折を経た後、家を出て恋をして、看護婦として自立していく女性の話でした。王道のハッピーエンド。
特に孤児院を出て養女になったあたりのいじめが壮絶で、そこがガツンとコンクリートの杭みたいに心に刺さった記憶があります。
今考えると、アメリカの片田舎でスコットランドの民族衣装でバグパイプを吹くとか、どんだけ突飛な登場だったのかと思いますが、バグパイプを吹いていた「丘の上の王子様」に初恋をしたキャンディ。その王子様だと思い込んでいたアンソニーの「キツネ狩り」の時の死。めくるめく怒涛の展開。キャンディに対し、男性はたいてい優しく、女性はかなり当たりが厳しい。笑
強烈に苛め抜いてくる男女のきょうだい、ニールとイライザという名前もまだ憶えています。ニールなんか年頃になってからもストーカーになってキャンディを苦しめてましたね。怖いわ~
忘れられないのが、孤児院で一緒に育ったアニーのことです。
アニーは先に富豪の家に引き取られて行き、しばらくキャンディと文通をしているのですが「孤児院にいたことを知られたくないから」と文通を断ってきます。孤児院から富豪に引き取られた理由も「大人しくて可愛らしい」からだし、なにか子供心にモヤモヤしたものを覚えていました。その後、キャンディが引き取られた家にたまたまアニーが遊びに来ることになって、この家のいじめっ子、ニールとイライザにアニーが陥れられそうになったところをキャンディが救います。それなのにアニーは震えながら黙ってるだけ。キャンディの無実を証言してくれません。最後に帰宅するときに馬小屋にリボンを結んで、それをキャンディへの謝罪にするのです。キャンディはそのリボンを胸に抱いて「アニー…」と思いを馳せるのですが、子供の私にはアニーに対して、憤りを禁じえませんでした。養女だから遠慮しながら生きていたのでしょうが、それにしてもあまりにもひどいんじゃないか、イライザより底意地が悪いのではないか、と思った記憶が鮮明。笑
今回その時のことを調べていたら、同じように感じていた人が沢山いたことがわかりました。そうだよねぇ‼
『花ぶらんこゆれて…/太刀掛秀子』
3番目には、候補が沢山ありすぎて、迷いました。『ベルサイユのばら』『王家の紋章』『ガラスの仮面』『悪魔の花嫁』『有閑俱楽部』、『生徒諸君!』。
いやでもやっぱり、小学生のころは太刀掛秀子先生が好きだったんです。ハーフに生まれ、金髪碧眼でいわれなくいじめられる主人公。途中失明するも視力を取り戻して恋も成就しハッピーエンド。
最初のページが赤ん坊を置き去りにする金髪の女性で、衝撃的でした。
絵も綺麗で、大好きでした。
しかしとにかく、主人公の周辺の人間模様が凄まじかったですね。嫉妬や葛藤、プライド。それぞれの立場では仕方がないのかなと思えるような積み重ねが、主人公を絶望の淵に押しやっていきます。特に義理のお母さんの心理描写とかが、少女漫画にはヘビーとも思える内容でした。
『花ぶらんこゆれて…』以外には『まりのきみの声が』も好きでした。
『まりのきみの声が』の中に、安房直子さんの『きつねの窓』というお話が出てきて、それがきっかけで安房直子さんの本を読んだりしました。
太刀掛先生、結婚されてご主人の都合で海外生活が長いらしいです。
番外編 『青い宇宙のルナ』
『なかよし』発の、私の中で忘れられない作品がこちら、あさぎり夕先生の『青い宇宙のルナ』。SF作品で、あさぎり先生の初の単行本だそうです。『きらら星の大予言』という作品も好きでしたが、私はこの『青い宇宙のルナ』がダントツで唯一無二。
あさぎり夕先生はしばらく『なかよし』で漫画を描かれた後、BLに転向されて、しばらくはラノベ小説やBL小説・漫画などを描かれたそうですが、その時期の活動は残念ながら全く知りません。しかし2018年に死去されたことを知って驚きました。漫画家さんは短命な方が多くいらっしゃいます。残念です。
というわけで、独断と偏見に満ちた少女漫画3選(と番外編)でした。