性能信仰
家電を買うときは、美輪明宏さんのこんな言葉をいつも思い浮かべる。
「今どきは性能にたいした差はないのよ。デザインで決めなさい」
確か『人生ノート』の中の一節だったと思う。強く印象に残ったのだが、なぜそれほど印象的だったかというと、私がどうしても「性能重視」信仰から逃れられないからである。性能信仰、性能信者である。
これが必ずしもいいことではないことは、これまでの人生、実証済みだ。高性能を全く生かせない、ということを何度も経験してきた。
オーブンレンジはほぼ電子レンジ単体使用。
炊飯器は様々なお米料理やお米の種類に対応しているが、無洗米の白米しか炊いてない。
電子レンジ買えばよかった。
マイコン炊飯ジャーでよかった。
使ってみないとわからない、と言い訳しているが、実は買うときになるとどういうわけか「性能信仰」がむくむくと頭をもたげてくる。
何度も買うようなものではないし、どうせ高いお金を出して買うのなら良いものを。
そんな気持ちがどこかから湧いてくる。
なんらかの家電を買うことになったときは、ひと通り量販店のネットや当該メーカーのサイト、コメントなどを見比べる。
このところは感染症流行のためになかなか行けないが、家電量販店にも足を運ぶ。しかし、破損からすぐに必要、という緊急事態でもない限り、即買いすることはほとんどない。突如買うことになるのは、引っ越しをするときくらいだ。
先日、パソコンの調子が悪くなり、最近PCでnoteの作業をしていた私は困惑した。
まったく動かない、という状況ではないのが、悩むところだった。
結局、まだ前のPCが生きているうちに、買い替えることにした。
そもそも、どういう不具合だったか、というと、息子がゲームでPCを酷使したため、おそらくは物理的にキーがダメになったのと、負荷がかかりすぎたこと、半端に「初期化」をしたため、認証問題が発生したために起きた不具合だったようだ。ワードとエクセルが使えなくなった。
ゲームをするだけなら問題はないが、私はどうしてもスマホと同期するWordが必要なので、そうするとOSを買いなおさなければならない。
OSを買いなおすすくらいなら、今のPCは息子にゲーム用として貸し与えたほうがいいかもしれない、と思った。息子は先般よりゲーミングPCを欲しがっていて、そんなものを買うくらいなら自分のPCを買ったほうがいいし、息子には「お母さんのPCあげるから」でごまかしたほうがいい。
様々な大人の事情が頭をよぎり、電卓をはじき、量販店のオンラインショップで前のモデルを中心に調べ始めた。割引とおなじくらいポイントがつくのも、量販店のいいところ。
いろいろと見ていて、AMD Ryzenが気になった。
電卓に置いた手も、マウスを持つ手も、Ryzenのところで思わずピクリと止まる。
ゲーミングならRyzenのほうがいいのかもしれない…
コア数が多いRyzenはintelに比べてマルチタスクが得意らしい。
いやいや、私はゲーミングPCなんか買おうと思っていない。
絶対に思ってない。断じて。
気を取り直す。
そこまでのスペックは必要ない。
intelでいい、慣れたintelで…
しかしintelのほうも、同じcore i7でも世代がある。
core i7とcore i5、世代が新しければcore i5のほうが性能がよかったりする。
それから最近の変化で顕著なのは、SSDの性能がUPして容量が大きくなったからか、最初からHDDが付いていないモデルがほとんどだということだった。
最初は、HDDは外付けでいいから要らない、と思っていたくせに、「全くついてなくていいんだろうか…」という気持ちがわいてくる。不思議だ。
それにしても、ちょっと見ない間に、なんでこんなに変わるんだろう?
どうして「前と同じもの」が存在しないのか。
存在していたとしても、たった数年で中古品しかなくなってしまう。
なんで?
こういうのを、科学の進歩っていうのだろうか。
いやいや、商売の問題だよね、これね。
このご時世特有の事情ともあいまって、今後の半導体事情などを考え合わせると、在庫がある限り今買い替えるのはまんざら悪い判断ではないと思うのだが、いかんせん、高い買い物だ。
ああでもないこうでもないと悩んでいたら、メーカー直販という買い方があるのを知った。カスタマイズに近いカスタムPCなるものがあるらしい。
量販店で売っているモデルに比べて、自分が好きなスペックを組み合わせることができる。なんだかんだと組み合わせても、量販店の最新モデルよりは安く上がる。しかもそのとき(いつもしているのかもしれないが)15%前後の割引があるキャンペーン中だった。
これいいかも!
だってそんなにスペック要らないからね。
ところがカスタマイズというのは不思議なもので、金額をにらみながら何度もカートに入れたり出したりした挙句、どういうわけか結局、今のスペックとほぼ同等で若干性能がUPしたマイモデルが出来上がった。
金額は、予算ギリギリだった。
もっと安くあげるつもりだったのに、だ。
しかもWindowsは10でよかったのに、Windows11のほうが希望のスペックが組み合わせられる仕組みになっていた。
…そういうことか。
しかしま、もうそのころにはずいぶん疲れていたのと、どう見比べても量販店のPCより安かったので、そこで手を打った。あと数年使うだろうし、今度こそ、息子には触らせない(つまりはゲームをさせない)。
それと、使い方としてちょっと雑になっていたところ(バッテリーつけっぱなしとか)を今度こそはしないぞ!と誓った。
デザインなんて全然見ていなかった。
美輪明宏さん、ごめんなさい。
さて、待つこと1週間。
ネット通販でPCを買うのなんて初めてだったし、ワクワクしたが心配もしていた。実際は、量販店で買ったとしても、結局修理はメーカーなのだからさほど大きな差はないのだが、それでも到着するまで緊張した。
到着して、さっそく初期設定。
説明書も、買い替えるたびに簡便になっていく。
起動も信じられないほど素早く、感動しながら説明書通りに新しいPCを立ち上げる作業をしていたが、なんと。
途中でフリーズしてしまった。
オーマイガー
ずいぶん前に使い古された雑言を、私は言った。ほんとに。
あっちこっちひっくり返して、LINEのカスタマーチャットに
「初期設定中フリーズしました」
「止まりました」
「初期設定ができません」
と立て続けに入力するも、AIボットからは、はかばかしい回答は得られないまま。
電話で問い合わせようにも、電話は「予約受付」しかなく、こちらから電話をして予約して、向こうの都合で折り返してくれるらしいが、それまでどのくらいかかるかわからない、とのこと。
いやいや。今、答えてほしいのよ。
わがままだろうがなんだろうが、まだ立ち上がってさえいないの。
電源を落としていいかすら、わからないのよ~。
結局、前のPCを立ち上げ、サイトからチャットで問い合わせ、そこからようやく、(たぶん)人間のカスタマーサービスの方とチャットで会話ができた。これが一番早いようだった。
はいはい(とは言わなかったが)、途中でフリーズされたんですね。
それでは試していただきたいことがあります。
一瞬にして解決策が示され、どうやら「放電」することであっさりと解決した。
その後は事なきを得て今に至っているが、通販でカスタムという慣れないことをしたために、解決するまで心臓がバクバクだった。
前のPC生きててよかった…
事務所のようにPCを二台並べ、あれこれと操作することができたので、いろいろなことがスムーズだった。
スマホでも対応できたかもしれないが、スマホではPCサイトが大変見づらかったので、PCがあって本当に助かった。
にしても、電話がすぐつながらないなんて…
今回教訓として得たのは、
PCの買い替えは、PCがまだ生きているうちに。
ということだ。
データの移行もこうしたトラブル対応も、心の余裕が全然違う。
最近はデータがクラウドにあるからいろいろと楽だったのだが、それでもPC内部のデータが「完全に消える」というのを防ぐことができる。
その後の新PCは、大変快適である。
直販で買ってよかった。
完全に後付の話だが、デザインもよかった。
結局、前のPCは完全に初期化し、認証その他に若干の問題はあるものの、ゲーム機として第二のPC生を全うしている。
完全にダメになる前に買い替えることは、意外と難しい。
つい、まだ必要ない、と思ってしまいがちだ。
でも実際に壊れてしまってからだと、気持ちが焦るし、余裕をもって比較したり熟考することができない。
今現在「もうそろそろ」と思っているのはフライパン。
フライパンは家電ではないが、買うときにものすごく悩む。
どう考えても焦げ付いていてスルッといかないんだけど。なんとなくベトっとしているんだけど。もう「今だよ」マークは全然見えないんだけど。
プライパンの「もう、これ以上、だめ」がわからない。
そして買い替えるとなると、例の「性能信仰」がムクムクと頭をもたげてきて、全然、決められないのだ。
フライパンって結局安いのを買い替えたほうがいいんだよね、と思いながら、フッ素加工ならPFOAフリーじゃなきゃダメとかいっそ鉄?とか頭がぐるぐるする。お値段もピンからキリまである。
そう、私は立派なフライパン難民だ。
それこそ、鉄、ステンレス、フッ素加工、アルミ、いろいろ試したが、これ!というものに決まらず、買い替えの時には別に料理上手でもないのに、フライパンのことを考えると夜も眠れない日がある(ちょっと嘘)。
ちなみに今みなさんがお使いのフライパンは、どんなフライパンですか?