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Fan letter 11 不思議な力さ☆ユニコーン

 少し前のことになるが、マツコの番組を見ていたら、「マカロニえんぴつ」が出ていた。

 彼らのことは知っていたし、曲も聴いたことがあったけれど、バンドリーダーのはっとりさんの名前があのアルバム『服部』からきていて、「ユニコーン」から大きな影響を受けていたということを初めて知った。

 おお!あの『服部』か!

 「マカロニえんぴつ」のファンの方からしたら何を今さらなのだろうが、30年前に『服部』を聴きまくっていた世代の私にとっては、大きな衝撃だった。

 10代から20代の頃、バンドブームの寵児として絶大な人気を誇り、今や伝説となったバンド「ユニコーン」。
 大好きだった。

 「雪が降る町」を聴いていた記憶があるから、やっぱり最も聴いていたのはベストアルバム『THE VERY BEST OF UNICORN』だったと思う(「雪が降る町」はアルバム未収録)。
 ヘビロテの理由は好きな曲がコンパクトにまとまっていたから。ということは、アルバムの中にはなんとなくフィットしない曲もあった、ということではある。でも基本的には、彼らのアルバムは私の好きなコンセプトアルバムが多かった。

 『ヒゲとボイン』『SPRINGMAN』あたりまでは満遍なくアルバムを聴いていたように思う。奥田民生さんが好きで、友達と奥田さんのことを「タミオ」とか「タミオちゃん」などと呼んでいた(失礼)。「PUFFY」も好きだったし「イージュー★ライダー」も好きだったが、次第にソロは聴かなくなったし、ユニコーン再結成にもさほど心のアンテナが反応しなかった。

 でも今もどこかからは民生ちゃんの曲やプロデュースした曲、カヴァー曲が聞こえてくる。なんとなく安心する。ユニコーンの曲を聴くとホッとする。

 そんな四半世紀を過ごしていたら、この衝撃。
 そうなんだ。
 やっぱり凄いバンドだったんだ、と、改めて再認識した。

 ユニコーンの曲は、とにかく「鼻歌」率が高い。
 日常の中に、不意を突いて出る。

 昨年あたりまで最も口を突いて出たのは「大迷惑」。「まっちのはずれでシュビドゥヴァー♪」ってやつだ。頭の中で前奏が鳴ると、最後までI can't stop。一気に歌詞がやってくる。

 なんで脳内「大迷惑」だったのか、というと、夫が単身赴任していたからだ。

 この悲しみをどうすりゃいいの
 誰がぼくを救ってくれるの
 (中略)
 逆らうと首になる マイホームボツになる
 帰りたい 帰れない
 二度と出られぬ蟻地獄

「大迷惑」より

 寒い朝には「素浪人ファーストアウト」がやってくる。

 今日は特別寒さが身に堪え
 見回りするにもなかなか踏み切れず
 (中略)
 ローニンローニンローニンローニンサムライ~♪

「素浪人ファーストアウト」より

 繰り返し。

 結婚前は実家にいたので、東北の寒い朝は滅法この歌が降りてきた。

 そのうえ、年末、雪をはらって車に乗り込んでまた雪が降りだしたりすると必ず「雪が降る町」がやってくる。

 だからキライだよ こんな日に出かけるの
 人がやたら歩いてて 用もないのに
 (中略)
 人も景色も忙しそうに
 年末だから ああ
 僕らの町に 今年も雪が降る
 見慣れた町に白い雪が つもるつもる

「雪が降る町」より

 実はこう見えて遠恋もしていたので「働く男」「すばらしい日々」「おかしな2人」もよく降りてきた。

 たまにオフィスで電話かけたら
 彼女の声が
 忙しいのは自分だけと思わないで
 ジャマしないで
 (中略)
 いつも僕はひとりきり フロに入って寝るだけ
 いつも僕はひとりきり 明日のために寝るだけ

「働く男」より

 僕らは離ればなれ 
 たまに会っても話題がない
 いっしょにいたいけれど 
 とにかく時間が足りない
 (中略)
 すばらしい日々だ 力溢れ
 すべを捨てて僕は生きてる

「すばらしい日々」より

 とにかくやたら日常の中に滑り込むように「降りてくる」のがユニコーンの曲と歌詞なのだ。

 脱力系と言われる歌詞は、今なら「ゆる」「だる」「だっる」「だる~」などの変格活用で表現されるのだろうが、ユニコーンの「だるい語彙」はとてつもなく豊かなので、ユルダルさがほのかなアイロニーの効いた歌としてやってくる。

 かれこれ30年くらい、まったく色あせることなくいろんなシチュエーションに滑り込んでくるのだから凄い。

 地元の友達みたいに、電話かけたら「おぅ」みたいな。子供のころから当たり前みたいにすーっと隣にいる感じの、曲の数々。

 百人一首は覚えられなくても、「白河の/清きに魚の/すみかねて/もとの濁りの/田沼こひしき」みたいなものは今の中学生でもうっかり覚えちゃったりする。あんなふうに、さらっと面白く皮肉ってみせる働く大人の諧謔の世界が、ユニコーンにはあると思う。

 最近の楽曲なら「私はオジさんになった」に心惹かれる。

 これからの新しい世界に向けて
 これからは生まれ変わる所存です
 これまでのだらけた態度を改め
 ぐいぐいと前向きに生きていく所存であります
(中略)
 すーるーわきゃなーい
 すーるーわきゃなーい
 するわきゃない
 なことない
 わきゃない

「私はオジさんになった」より

 どことなくボブ・ディランを髣髴とする曲。
 「わきゃない」がだんだん「What can I (do)」に聞こえてくる。
 オジさんになっても変わらないんだな。
 やっぱりこういう感じ、大好きだ。

 音楽性については詳しくないので歌詞のことばかり書いてきたが、とにかくバンドマンたちがこよなく愛するバンド「ユニコーン」。
 魅力は計り知れない。

 なんてことを下書きに書いていたら「PUFFY」がうたコンに出ててきて驚いた。考えていたら偶然目にするなんてなんだろう、念力かな?

 ユルダル系の元祖井上陽水との奇跡のコラボやブリーフは履かない草野マサムネとの絶妙マッチ。あの頃のPUFFY最高。全部一緒に歌ってしまう。

 おかげでそれから私は、頭の中で「与える男」なんかを歌っている。

 信じるも信じないも君しだい
 本当のことなんだ
 不思議な~力さ~

「与える男」より








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