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教科書の思い出 vol.2 説明文ディテクティブ『花を見つける手がかり』

 物語との出会いはもちろんのこと、実は国語の教科書の醍醐味は説明文にある、と、大人になってから思うようになりました。

 個人的に、小学校時代はどうしても「物語・小説」に心ひかれがちで、説明文はあまり好きではなかったし、読むのも書くのも苦手だった記憶があります。

 小学校時代の説明文は、理科的なものあり、社会的なものあり、様々に興味を掻き立ててくれます。

 「はたらくじどう車」
 「サケが川に戻ってくる話(サケがおおきくなるまで)」
 「北海道のサロマ湖の話(サロマ湖の変化)」
 「猿には頬袋があるという話(さるのほおぶくろ)」
 「ダンスをするミツバチの話(帰ってくるミツバチ)」

 などなど…
(どれもタイトルは後からサイトで調べました。)

 印象に残っているもののひとつに「花を見つける手がかり」という題材があるのですが、実はこのタイトルにたどり着くまで、結構大変でした。

 とにかく覚えていたのは「モンシロチョウ」のお話ということだけ。
 なぜそんなに心に残っていたか、というと、文章の中に、

 女の小指の爪のようなシジミチョウ

 という表現があり、子供心に「なんて素敵セクシーな表現だろう」と思っていたからなのです。セクシーなんて感覚はまだちょっとわかっていなかったので、たぶん「こういうのを、色っぽい表現というのかな」くらいに思っていたような気がします。

 チョウが色を頼りにして花を見つけているという生態について「日高敏隆先生と東京農大のみなさん」が研究したもの、と記憶していたので、私はある時期から、この文章を日高先生が書かれたと勘違いしていたようです。

 この説明文の本文中で「日高敏隆先生」という行動生物学の有名な先生がいる、という刷り込みが行われたせいか、大人になってから日高先生の名前を見ると、つい読んでみたくなりました。

 先に「説明文にこそ醍醐味」と書いたのは、こういうこと。
 国語の教科書における説明文は、ほとんどがリライトや抜粋なので、なにか片手落ちなところがあります。その続きや、著者、出てきた生物や場所について、思いがけない時に思い出したり、心に残っていたりするものです。

 実際、そんなわけで私も、大人になってから日高先生ご自身の著書やコンラート・ロレンツの訳書を読む機会も多かったのですが、どうにも「あの説明文」に出会わない。

 おかしいなぁ、とは思っていたのです。

 今回、教科書の思い出を書こうと思い立ち、「そうそう、あの話」と、記憶を頼りに探し始めましたが、日高先生の有名な著書である『チョウはなぜ飛ぶか』などにも、あの文章は見当たりません。

 確かに「日高敏隆」先生と「チョウ」に共通点はあるのに、ネット上にも、小学校の教科書に載っていた、という記述も見当たらない。

 実家の片づけで小学校の教科書があったかもしれない、と思っていたのですが、なんと教科書に限っては、父が自分の古い教科書とともに資料館に寄付をしてしまっていました。

 あてが外れ、確か当時の教科書が「教育出版」であったことだけはつきとめたので、こちらのサイトをみるも、どうにもその当時のところにそれらしい題名が探せません。

 万事休すか…と思ったところ、「花を見つける手がかり」は今も教科書に載っているのかよくテスト問題で出題されるらしく、「チョウ」と「日高敏隆」という検索ワードから、「テスト問題と解答・解説」のページに行きあたりました。

 そこでようやく、探していた説明文のタイトルが「花を見つける手がかり」であったことを発見、思い出しました。

 タイトルを目にしてみると「そうだよ、そうだったじゃーん。なにを迷走していたんだろう!」という気分になりました。

 こうなると、芋づる式に吉原順平さんの名前も思い出し…

 人間の記憶というのはまったく、曖昧でご都合主義だと痛感しました。

 「花を見つける手がかり」は、もともとは1968年に羽田澄子さんという方がモンシロチョウの行動の謎を数々の実験で明らかにする記録映画だったそうです。

 それをもとに、映像プランナーの吉原順平さんが1970年代に『生き物ばんざいシリーズ』としてテレビ放映し、それをまとめて金の星社から『モンシロチョウのなぞ』という本にして出版。そこから教科書向けにリライトされたのが、この「花を見つける手がかり」だったようです。

 その後、どうやら小学校四年の教科書に載っていたらしいことがわかり、また教育出版のサイトへ。教育出版さんは、私が小学生だった時代は結構頻繁に改訂を繰り返していて、最初に見た版の時はまだ採用されていなかったようでした。

 自分が四年生だった時の版を確かめると、ついに「花を見つける手がかり」を発見!

 しかーし。

 ここまでたどり着いたものの、実際にその全文を確かめることができません。

 Amazonで吉原順平さんの『モンシロチョウのなぞ―身近な虫たちの不思議(生きものばんざい 2 )』を見つけましたが、なんと!

 古本となった単行本は¥20,812円也!

 シジミチョウの表現も、私の記憶の中だけのことなので、とても確かめようがなく、このような表現があったかどうかも、もはや確かめることができません。

 もしかしたら中学・高校の他の教材と混同しているのかもしれません。

 モンシロチョウのことについて書かれた本文なのに、シジミチョウについての謎が深まるばかり。

 どなたかご存知の方、この謎を解き明かしてくれないでしょうか…



 ※この記事はメディアパルさんのこちらの企画に参加しています。


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