第四巻『玄鳥』出来&電子書籍の話
『春告鳥シリーズ』第四巻、『玄鳥』出来でございます。
今回は、こちらの記事(☟)に書いたような失敗をだいぶ克服した巻となりました。
だいぶ、といってもまだまだ印刷屋さんからの直し依頼が入っており、入稿即OKにはなりませんでした。この次の五巻でついに「入稿即OK」を果たしましたので、少しずつ少しずつ前進していると言えると思います。
こうして並べてみるとなかなか壮観で、六巻全部揃ったらどれほど嬉しいだろうなあと今からわくわくしております。今は五巻を入稿し、完成を待っている状態で、ようやく最後の六巻の入稿準備に取り掛かっているところです。
ところで今日は、電子書籍について書いてみようと思います。
これまで紙本や文庫化のことばかり書いてきて、そういえば電子書籍のことにはあまり触れてこなかったな、と思いまして。
Amazon direct publishing
さて私は昨年2023年の1月に最初のエッセイ『駐妻記』をAmazonでkindle出版し、その後10冊ほどの本をkindleで出版しております。
Amazonでは出版するときに、「Amazon direct publishing」というサイトから出版し、出版後の動向を管理します。
出版するのに必要なのは、EPUB原稿とPDFの表紙原稿のみで、順番にタイトルやジャンルを打ち込んだりするだけで、出版できます。
しいて言えば、表紙がうまく基準に当てはまっているかを吟味するくらいで、さしてやることはありません。ベルトコンベア式に流れに乗るだけで出版はできます。
その後、Amazonさんは「じゃあ紙本も作りましょう」と誘導してきます。紙本は少し大変です。電子書籍と違って紙の質や表紙のバランスなどは印刷されるまでわからないのでヒヤヒヤしますし、エラーも出ます。それでも、フォントやページのバランスなどは勝手にやってくれるので、ほぼ考えなくていいところはさすがです。ただ、目次やページの配置など特にこだわりがある時はそのあたりは苦慮するところかもしれません。私は基本、字だけの本なので問題なかったのですが。
出版後の管理
さて出版した後、管理画面では、結構細かく分析してくれます。「注文数(定価で購入された数)」や「既読KENP(unlimitedで読まれたページ数」などもカウントされ、日々グラフになっています。KENPって本当は何と読むのでしょうね。私は勝手に「ケンプ」と読んでいますが。
また、「推計のロイヤリティ」や「ロイヤリティの見積もり」なども出してくれます。これまでどの本がどれだけ読まれたか一目瞭然ですし、累計でどのくらい売り上げがあったかもすぐわかります。
いまのところ、私が出版した本の中で何がいちばん読まれているか、というと、ダントツで『駐妻記』です。
こちらは、細々と、1ヵ月に数ページということもありますが、毎月少しずつでも既読KENPで読まれ続けていて、途切れたことがありません。有難いことです。
その次が『音楽のように言葉を流す』で、これはジャケ読みしている方が結構いるような印象です。しかし読んでみるとちょっと印象が違うのでしょうか――反応についてはわからないです。少々、気がかりなところです。
そのほかの8冊の書籍は、全くと言っていいほど、読まれていません。笑
ごくまれに、たまに「あ、今おひとり読んでくださった」というのがわかりますが、これは「あのかただ」と分かるくらいに完ぺきに知り合いしか読まない本となっております。
残念です・・・
とりあえず、今回出来上がってきた『玄鳥』は電子書籍でも読むことができます。『春告鳥』から読んでいただくのがお勧めです。いちおう、宣伝しておきます。笑
とはいえ、もともとは自分のために出版し、文庫化したもの。
読んでくださる方がたった一人でもいるだけで、本当に有難いのです。
読んでくださった方、ありがとうございます!!
Kindle Unlimitedのしくみ
ところで皆さま、電子書籍で出版すると、どの程度儲かるのか?は気になるところかと思います。
なにやらガッポガッポ儲けている人もいるらしいじゃないの――そんな噂も良く聞きます。断言しますが、それなりに「工夫」している人だけが、そういった恩恵に預かっているのであろうと思われます。読まれるためにはただコンテンツを提供するだけではだめで、「読まれるテーマと仕組み」を理解して、そのために努力しなければいけないのだと思います。
少なくとも「小説」というコンテンツは、かなりダメなほうです。そして私はその工夫をする知識も、する気もないというダメな人です・・・月に百円レベルなんて時も・・・(出版した最初の頃は、紙本を購入して読んでくださった方が多かったので累計では2万円位になっています💦)それでも、自分の書いた本がお金になっていると言えば、そう言えるのかもしれません。ものは考えよう。
Amazonには、プライム会員(月額600円、年額5,900円)になるかサブスク(月額900円)で入会するとかなりの数の書籍が無料で読める「Kindle Unlimited」という仕組みがあります。書店で購入して2、3冊読んだらあっという間にプライム年会費くらいの金額にはなってしまうので、多読の人ならお得ではあると思います。
無料で読めるなんて、果たして著者にはお金が入るのか、と思われる方もいらっしゃると思います。
Kindle Unlimitedでは皆さまが電子書籍をダウンロードし、最初に読んだページ数がカウントされています。その数が「既読KENP(Kindle Edition Normalized Pages)」です。つまり購入されていなくても、ダウンロードされて既読されたページ毎にロイヤリティ(売上金)がつく、ということです。
しかしこのロイヤリティの計算基準は常に変わっていて、Kindle Unlimitedで出版される本が多ければ多いほど(母体となるKDPセレクト グローバル基金に参加している人数が多ければ多いほど)、ロイヤリティの基準は下がっていくのだそうです。ともあれタダで出版しているので、こういった分配方式に準拠する部分は仕方がないのかなと思います。むしろタダで出版しているのに印税が入るということを考えれば凄いシステムなのだと思います。
Amazon direct publishingのヘルプにはこのように記されています。
とりあえず「既読KENP」は著者と読者にとってウィンウィンであると言えると思います。
なお、定額購入の場合は、その分直接著者に入金されますし「注文数」としてカウントされます。著者にとっては有難いですが、こちらはKindle Unlimitedに入っていない場合のやむを得ない手段、の場合が多いように思います。または、電子書籍をずっと保持したいと思うかどうか。読者の考え方次第と言ったところだと思います。
ペーパーバック(紙本)
Amazonのペーパーバックについて、以下にメリットとデメリットをあげてみました。
メリット① 手元に残る
電子書籍と違い、本棚に収めて実体として所持することができます。
メリット② 読みやすい
やはり紙本に慣れていると読みやすいという利点があると思います。
デメリット① 高額
紙の本にするには印刷代がかかります。
私の『音楽のように言葉を流す』を例にとってみます。
$$
\begin{array}{|r|r|r|r|}\hline
希望小売価格& 印刷コスト & レート&ロイヤリティ\\\hline
¥2,300 & ¥1,244 & 60%&¥11\\\hline
\end{array}
$$
この時、希望小売価格の最低金額は2,073円です。これ以上低くは設定できません。最低金額を入力すると、ロイヤリティは0円になります。さすがにロイヤリティ0円は出版するかいがないですので、せめて10円くらいは――と設定した金額が2,300円です。
確かに「小さな鈍器本」というくらい分厚いですが、素人の本が2,000円超えってどうですか。実際全く売れません。そりゃあそうです。そもそもこの価格のおおもとは印刷代が高いこと。単純に考えて、11円以外の売り上げのほとんどが手数料としてAmazonに行くわけですから、Amazonの手数料と印刷代を購入者が支払っているような構図です。
確かに、タダで出版させていただいているので著者に対しては仕方がないと思いますし、結局書籍の値段というのは商業出版でもそのようなものだと思いますが、商業出版の単行本に比べたら明らかにぺらっとした仕様です。
なんとかもう少し購入者ファーストな金額にならないものか・・・と考えてしまいます。
ちなみに「吉穂堂」では、Amazonから自分が買い上げた本を中古本として1,800円でお売りしています。実店舗でご購入いただくのが最もお得ですが、オンライン販売で送料が300円ついても、Amazonで購入するよりはほんの少しお安くなっています。
デメリット② 場所を取る
どうしても「現物」ですので本棚に置くときに場所を取ります。
ところで余談ですが、先日本屋さんに行ったら、本家本元の「鈍器本」の新刊を見つけました。見つけた時さすがの貫禄におおっと思いました。厚さ6.5㎝、重さ1.2㎏だとか。わたしのはちっちゃなちっちゃな鈍器・・・もう鈍器ですらないですね。というか、京極夏彦さんのこの正真正銘の鈍器本でさえ3,600円なんですから、私の本はもうちょっと安くていいはず――!Amazonさん!
というわけで、つらつらと電子書籍周りのことを書いてきましたが、なにかご参考になるようなことがありましたら幸いです。
最後に、今回の記事でどうしてもやってみたかった「表」について。
コメさんのこちらの記事を参考にさせていただきました。
コメさんはご自身のブログに注力されていてnoteの方ではもう書かれていないようなのですが、本当にわかりやすく、有難い記事でした。素晴らしい記事ありがとうございます!!