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夢の続き
「俺さ、夢の続き見れるんだよね。」
「…お前、大丈夫か?」
この話をすると大体の話し相手に眉を顰められてしまう。
気を病ませているのか、という心配と
おかしくなっちゃったのかなという心配。
これでも割かし真っ当だし、ほとんどの人には信じて貰えない今回のお話。
これはいつの間にか会得する事が出来た人並み外れた俺のとんでもない超能力なのである!
なのであ~~~る!
良い夢を見ながら、もしくは悪い夢の中。
最高のシチュエーション、最高のストーリー展開はされているものの、クライマックスには辿り着けず夢半ばで目が覚めてしまう経験は誰しもが経験にあるはず。
この能力の開示の仕方は至ってシンプル且つイージーで、全ては「気合い」です。
あと付け足すのならば俺の類稀なる最高の想像力です。
真似出来る?
例えば恋心を抱く相手がいるとしよう。
その御相手が夢に出てきたとしよう。
その御相手と最高のシチュエーション、もうB。B辺りまで展開できた。でも目が覚めちまった!
クッソゥ…とある程度の人間ならば嘆くのであろう。
でも俺は全部モノに出来る。出来るのだ。
クックック。
クライマックスはおろか、エンドロールさえも隈無く脳で感じる事が出来るのだ。
ハッハッハ。
どうだ、羨ましいだろう。
そんな人並み外れた能力を持つ俺はある日、大変興味深く実にリアリティ溢れる夢に遭遇する。
以下、全~~~~部夢の話。
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某配信限定ドラマ
"100人の子供たち"
~ワンハンドレッドチルドレン~
赤楚衛二さんが演じる青年「ヤマト」が主人公。彼の人生は何色にも例えられない。何とも退屈で変わり映えのない微妙な毎日に嫌気を感じながら、ただ何となく生きる日々を過ごしていた。
彼はある日、生まれ育った街に帰省中、何者かに誘拐されてしまう。
その後目を覚ますと見ず知らずの100名の少年少女、及び青年達に出会う。
その子供たちを仕切り、まとめる女性が一人。長谷川京子さん演じる女性、「ハルミ」であった。
他、外出が多く、恐らく彼女のパートナーであろう津田健次郎さん演じる男「スガワラ」。
2人は子供たちを自らの支配下におき、その集団の掟を破るものには厳しく暴言、暴行を行った所謂、集団監禁を行っていた。
子供たちは脱出を図りハルミがふとうたた寝をしているタイミングで監禁場所、その子達が生活をさせられていた領域からの脱出を試みるのだ…。
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ここ!!!!
ここで俺の目が覚める!!!!
最悪のタイミングでの目覚め。
なんと言う夢に出くわしてしまったのだろう。
にしても内容がリアル。スリル溢れるものだ。
配役等に関しても具体的で本当に映画とかに有りそうなやつなんだもん。
とんでもなく続きが気になってしまった。
虚ろな目を開き枕元の時計は起床時刻の1時間前を指していた。
ここで例の能力の開示を試みる。
これまでの話を最大限に思い出しながら自らの想像力で脳を巡らせる…。そして再びトリップ。
停止画面が再開された脳内シアター。
以下、続き。
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ここは8階のビルで数人の子供達を逃してしまった妻ハルミはスガワラに激しく叱咤暴行されてしまう。
そして青年ヤマトはある日単独での脱出を試みるが、スガワラからは逃れられず失敗。
で、確かなんやかんや色々あって青年ヤマトは二度目の脱出を図り、監禁先からの逃亡に成功。
その後、長い間監禁されてしまっていた彼は行き場を無くし小さな居酒屋でアルバイトを始める。
アルバイト先で知り合った青年が現実から逃げてしまいたいという心に抱える苦悩と心情をヤマトに吐露する。
ヤマトは話す、「逃避先が最悪の居場所だとしても今以上の幸せを得られる自信はあるか?」と語り掛け、脳内のモニターは黒い画面に切り替わった。
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以上、全~~~部夢の話。全部架空。
なんでしょう。
一か八か、もしくは不本意ながらも現実から逃げ出せたり追い出されたとしても、そこが最悪の逃避先だった場合のリスクを背負う位ならば今を必死に生きてみろ。的なお話だったのかな。
ここまで読んでくれて有難う。
なんか文章にすると薄いっすね。笑
いや、でもめちゃくちゃ気持ちが高まったというか考えさせられる話だったんだ。
あ、それにしても主人公のヤマトを誘拐した人物は一体誰だったんだろう。
そこだけがすごく気掛かりだ。
そんな事を考えながら家を出る。
その日の晩、食事の席にて俺は友人に意気揚々と話しをする。
「あァ、そうそう。俺さ、夢の続き見れるんだよね。」
友人は数秒間の間を残し、応答する。
「…お前、大丈夫か?」