君のつむじを描きたい
学校で、2人1組を作るやつ。
グループを作りなさいってやつ。
あれって残酷だよね。
私は、1人だけぽつんとしてる子が居ないか、探すクセがある。
子供の頃、近所の知的障害の子と小学校6年間〜中1まで一緒だった。
グループを作るときは必ず私と一緒のグループで、2人1組の時は私と組んだ。
さすがに母が怒って、中2から別のクラスになった。お世話係にされてたことは薄々分かっていたけど、私はそんなに嫌じゃなかったけどね。
そして中2には、登校拒否の子の家に迎えにいく係になった。
ひとつ手放せば、またひとつくっつけられる。
そして、やっぱり私はそんなに嫌じゃなかった。
多分、人に対して色々鈍かったんだと思う。
いじめられたり、変わってるって言われたり、そういう子たちの何が変かよく分からなかった。
彼らも含めて、人間は同じような形をしていて、みんな似通っていた。尻尾が生えてたり、手で歩いたり、空を飛んだりしなかった。
大人になっても、まだなんだかよく分からない。
特に容姿がわからない。
可愛いとかイケメンとか、それは学習で覚えた。こういう顔だと世間は可愛いというのだと。
私には全部、美しく見える。
生き物は全て美しい。
そんな私は、ずっと鈍いまま人間と付き合っていて、そして人を観察するのが好きになった。群れの中からはぐれている子はいないか探すのも、癖になった。
だから、本当のことを言うと、可愛い女の子、かっこいい男の子を描くことがまったく分からない。美醜がわからないから、世間が美しいと思う顔を描ける自信がない。
ただ、人はみんなけっこう可愛くて、なにかが中から外に滲み出ているのは分かる。
仕草とか、表情とか、そういう美しさには敏感だ。それらを描き記したいと渇望している。それはじりじりと私の手を焦がして、私のペン先を滑らかに動かす。
人の顔も名前も覚えるのが苦手だけど、声や表情はよく覚えているし、つむじの位置とか、爪の形とか、変なパーツを覚えていたりする。
だから私は、君のつむじを描きたいと思うよ。
君のつむじは美しい。
その整えた眉よりよっぽどね。