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桜吹雪の日
落とし物の小さなパーカー
手に取ると
ポッケからさらさらと砂がこぼれた
床に落ちた砂の中に
沢山の茶色い紙撚りの様によじれた塵
小さくて
薄い紙のような
干からびた塵
微かに淡いピンク色が混じる塵
そっと集めて気がついた
あぁ、そうか
この子は
散った桜の花びらを
集めてお家に持って帰りたかったんだね
そう言えば子供の頃の私も
校庭の桜吹雪を集めて
ノートにはさんで持って帰った
夜に開いたノート
ページに張り付く様に乾いた
桜色でなくなった花びらが
とても残念だった
桜をずっと残しておきたくて
いつでも桜色を見たくて
祖母にも桜を見せたくて
ノートに挟んだ花びらの
変わらない色を期待した
春をずっと持って居られると思ったのに
突きつけられる様に
『叶わない思い』を手にして
『ままならない現実』を目の当たりにしたのは
あの春の日が最初なのかも知れない
小さい紺色のパーカー
ポッケには
砂と花びらがまだ少し入っているけれど
あえてそのままにしておこう
ポッケに入れた時
確かにそれはその子の宝物だったはずだから
例え余計なお世話でも
少し祈っておこう
お母さんに咎められませんように
花びらを集めた時の
尊いと思った事や
見せたかった気持ちが
ちゃんと伝わります様に
ポッケに詰め込んだ花びらを
その子がちゃんと見届けられます様に
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