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鳥の声と、母の信条“寄りかからず”

海が遠い。

でも大きな河があるからか、
たまに遠くでカモメの声がする。
実家へは、海沿いの町から引っ越して来た。
カモメがいると懐かしくなる。

そして、夜になると
ごく近くからちょくちょく聞こえるのが
もっと賑やかで野太い、複数の鳥の声。

最近は、娘の習い事から戻ると、
母の感じの悪い声を聞きたくないなと思いながら車から降りる。

母は娘には優しい。
ほっと安心する反面、
気に入らない相手(私)以外には
ことさらに優し気に振る舞う態度のようで、
母が、幼稚に悲しくも見える。
幸い、誰に対してもベタベタしない人ではあるけれど。
そう、若い頃から、
人に寄りかからないというのが信条だった。
そんなことを思い出す。
そこに野太い声が長閑に聞こえて来て、
可笑しくなる。
某保険会社のCMのような声。

アヒルを飼っている農場なら、近くにある。
近くと言っても何キロか離れていて、声は聞こえて来ないだろう。
てことは、鴨なのかな?

片田舎のベッドタウン。
母は、何もない街と言う。
私もそう思って来た。
そうかな、結構楽しい時もある。
給食も豊か。

昨日は
寝る前に、私から、少し母と話をした。
父の持病の定期受診が近い。
耳の不自由な母が気づいていない点を、主治医に話して欲しいとメモを渡した。

酷かった母の咳は、だいぶ収まっている。
そう言うと、薬飲んだから、と母。
ようやく、かかりつけの耳鼻科に行ったらしい。
私がうるさく言った甲斐があったのか、
安眠できてもいるみたい。

薬の横にあった、メモを見せてくれた。
娘が少し前に母に渡したそう。

ばば、何時に寝るの?
たえこは試合だから、もうおやすみ☺︎

どうということのない筆談。
母は、
可愛くて、捨てられないの。
字も優しいのよね、と短く言った。

母達と、距離を置きたい気持ちは変わらない。
引きこもっている高齢者の毒素は、
そう簡単に薄まらない。
油断していると、酷く傷つくことがある。
私も毒素だらけで、お互い様なのだろう。

娘がいて、ほっとするのは私も母も同じらしい。
だけど、子をかすがいにはさせない。
これは離婚から学んだ教訓。
娘には、そんなことに存在意義を持たせない。
そういったら、行き過ぎているだろうか。
母も、そう思っているかもしれないし、
そうじゃないかもしれない。


今は、近くの公園の、紅葉が楽しみ。
娘は遊歩道を走るらしい。
私はお弁当と本を持って行こう。
寒くなったら、美味しいというスープ屋さんにも行こう。
まず、私が穏やかに過ごすこと。
母達とは、少し距離を置いて。







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miomioみお
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