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娘の作った夕飯と、檀一雄

土曜、夕方
私が帰宅すると、娘はするりと庭へ出て、トレーニングを始めた。

父は趣味の会、都心の書店へ寄って来るらしい。
母は横になっていた。
娘は9:30過ぎにゆっくり起きて、
友達宅に行き、
友達が用事で出掛けると自宅でゲームやネットを満喫していた模様。
昼まで寝たいと言っていたけど、高齢両親が起きている気配の中では難しかったのかも。
そして、私の指摘やお説教からは逃れたようだ。

明日も試合。
宿題はどうした?
と聞きたいけれど、様子を見る。

何やらまな板に野菜が乗っている。
母が何か作りかけなのか。
私は夕飯の下拵えを始めた。

しばらくして家に入って来た娘。
今日はたえこが主菜を作る、と言う。
まな板の野菜は娘が出したそう。
タブレットで見つけたレシピらしい。

とは言え
娘は何かと母を呼ぶ。
私より優しいから?
お説教しないからだと私は思う。

ねえ、ばば、にんにくってどこにあるの?
ねえ、ばば、豚の薄切りってある?
ねえ、ばば、鶏がらスープってどこにあるの?
あ、料理酒ってどこ?

私も娘の真似をする
ねえ〜、ばば、コンソメってどこ?
母は露骨に迷惑そうな顔になる。
全然優しくなんてない。

娘の“主菜”と、私のクラムチャウダーは、両親に好評だった。
このところ私の作るのは地味な和食が多かったので、両親はパッとしなかったみたい。

この二人は、お見合いの後、最初の食事がロシア料理だったらしい。
“神保町のバラライカ”
いつか行ってみたいと思いつつ90年代に閉店したそうで、私は行かずじまいだった。

父は昔、何やら九州の料理を作ってもいた。
九州出身ではないのだけど。

Amazonより
時代を感じる帯の文だッ

父の持っているのは、文庫版


娘は食後、またゲーム。
しばらくして気づく。
約束のスクリーンタイムを大幅に超えていないか。
指摘すると、直ぐにタブレットを閉じて、シュンとしている。

ルールを守れない。
こんな状態なら、皆に負荷がかかる習い事なんて反対だと言うと、
ますますしおらしくなった。

こんな時、
叱るのも、ルールを一緒に考えていくのも、私一人。
しんどい。

そう母にこぼす。
しかたない、あなたに配偶者を見る目が無かったのだから、との返事。
その通り。

両親も夫婦喧嘩は多いけれど、やはり気が合うのだろう。
味の好みも、概ね合うみたい。

娘との、ネットやゲームをめぐる攻防はこれからも続くのだろう。
気の合う配偶者がいない私は、
あと何年“うるさくておっかない母”をしなくてはならないのかな。








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