入院と、暮らしの手帖
母が入院した。
意識ははっきりしている。
処置室からストレッチャーで運ばれて来て
私に気づき
“お姉さんに知らせて。お見舞い受付中”と言って笑った。
お姉さんというのは、私の姉のこと。
不幸中の幸いだったのは
私がたまたま自宅にいて付き添えたこと、
救急で自宅近くの病院に受け入れて貰えて
我が家の馴染みのある病院だったこと、
脳は異常なかったこと、
冗談も言える。
検査中、私は入院手続きをした。
面会時間は仕事をしていたら難しい時間帯。
1日4組しか病棟には入れず、
完全予約制。
面会が難しい。
特に父はまだ風邪症状があるから、
会いには来られなさそう。
致し方なし。
それを母に伝えてから引き上げようと思ったら
“娘さん、ごめんね、こっちは予約ないと入れないのよ”と、病棟看護師さん。
致し方なし。
姉と相談し、
私は母に、愛用しているiPadを持って行くことにした。
家で、ひとり呆然としている父に、
一言母に手紙でもと言うと(父はLINEが苦手)、
何やら熱心に便箋に書き留めている。
この子どもみたいな人も、年老いた。
だけど書くことを生業として来ただけあるな、
変に感心する。
老眼鏡と、
生物はダメだけど、チョコレートならどうかな。それらをまとめ、
書店に寄り、母の好きな本を買う。
iPadを院内のWi-Fiに繋ぎ、詰所に預けた。
病院によってはWi-Fi環境がなかったりするから、これも、幸いだった。
早く、私達の中に、暮らしに戻って来てね。
そう願いながら帰った。
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