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雑音と、雪の下の紫陽花
冬の終わりに出て来る紫陽花
ずっしり重たい雪をかぶっても、淡々と静かにそこにある。
春には、次に咲く花の下で、ゆっくり土に還るのかもしれない。
人と違って、静かに、余計なことを言わない。
余計なことを考えない。
そう見えた。
この間は、何人かの幼馴染親子で集まった。
私は挨拶だけして用事を済ませに行き、
友人父母数人が、娘達と一緒にいてくれた。
送られて来た画像には、大人も子どもも雪山で遊ぶ姿。
小さなかまくらを作り、
上から滑り降りて、
笑い声が聞こえて来そう。
待ち合わせは、数年ぶりに行く小さな公園。
迎えに行っても、雪の中から顔を出し、
あと1時間だけ待ってー!と叫ぶ。
友人父は、私とバトンタッチで家に戻り
友人母は、実家のご両親の介護に向かった。
私は、車で本を読みながら待った。
夕方、日がだいぶ長くなった。
いつまでも家に入りたくない娘と、ここで毎日遊んだのはもう10年前。
階段で何回“ちよこれいと”をしたかなあ。
毎日、もうご飯作らなくちゃ、と急かしていた。
今も、習い事の時間に追われ、
覚えて欲しいこと、身につけて欲しいことに追われる中学生。
娘が、何にも追われずにこんな時間を過ごせることに安堵する。
娘のこの日のお土産は、ビニール袋に入った紫陽花。
紫陽花の仲間だけど、名前は違うんだよ、と言う。
友人のお父さんに花の名前を教わったそう。
花瓶に挿しておいたら、
翌朝母がゴミに出してしまった。
ごめんなさいね、私が飾って枯らしてしまったかと思って…と、母は申し訳なさそう。
確かにドライフラワーだった。
母はちょうど、私達の出勤、登校のタイミングで、
小さな玄関でゴミを一所懸命にまとめる。
今やらなくても…と、私達は顔を見合わせる。
大体は、小さな紙屑やプラごみの端切れが母の通り過ぎた後に落ちているが、気づかない。
歩行不安定な母が、これだけはやらなくちゃと家中のゴミを生真面目にまとめているので
私達は黙っておく。
また、紫陽花を探しに行こうかな。
今度は娘と二人で、もう一度花の名前も教えて貰おう。
何が余計で、何が大事なことだろう。
頭の片隅で思いながら、
雑音だらけでバッタバタな、送迎の合間に。
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