
鹿肉を食べる老夫婦と、その娘
近所のスーパーで、鹿肉のスライスを発見した。
100グラム110円しないのには驚いた。
たまに入荷するらしい。
お肉を自分で料理するのは初めて。
これ、何肉かわかる?と母に見せると、
牛かな?ラム肉?と言う。
赤味が豚肉とは違う。
母は、鹿だとわかると、
じゃあ塩胡椒だけで食べてみたい、と急にいきいきした。
今日から娘は遠征で、私は珍しく送迎なし。
両親と私の三人で食事する。
フライパンに薄く油をひいたのを、すぐに後悔した。
なんて脂が多いんだろう。
部位はバラ肉かもしれない。
脂の多い白い部分を、牛脂みたいに使えば十分だったみたい。
大量の脂をキッチンペーパーにせっせと吸わせる。
ところで油と脂とは、どう違うのか。
固体が液体になると油、なのかなあ。
気になる方、どうぞ調べて教えてください。
食中毒が怖いと聞くので、弱火で十分に火を通す。
スマホで見ると、高タンパク、低脂肪、鉄分とビタミンも豊富らしい。
嬉しい、
でも脂の量、すごい。
塩胡椒だけだと少し物足りなくて、マジックソルトも足した。
味はあっさり、でも香りはしっかり。
ラム肉に似て、深みがある。
食べ終えて、ハッとなる。
お皿に、早くも白くワセリンのような脂が膜を張っている。
両親は、唇や口の中に膜が張った感じだと言う。
父は、うまかったけどこれには閉口するなと言う。
娘の語彙がやや文学調なのは、父の影響かもしれない。
でも90歳近い両親と50代前半の私が、
脂の多い肉をしっかり一人130グラムほどは食べたのだから
やはり我々は大食い一家なのだろう。
母が好きな星野道夫さんの写真の中に、
アラスカで、アザラシを解体する光景があった。
あの、ゆうに10センチはありそうな脂肪のついた肉を思い出した。
母は、子どもの頃食べた鯨の話をする。
そして鹿肉を今度は一度茹でたらいいかもしれない、と提案する。
私は、春菊とか、何かハーブと合わせたらいいかも、などと話す。
また食べる気満々な面々だ。
食後に父はコーヒーを淹れる。
母はミルクをガスであたためるのが面倒だと言い、レンジであたためる。
このところ父が担当していたが、やはり“お父さんに申し訳ない”と言い、部分的に母も動く。
母はレンジの前で、両手でカウンターに掴まり
小さく背伸びをし出した。
ふくらはぎの屈伸?
あら、リハビリ、お母さん偉い!
私が褒めると、
毎日やってるのよ、レンジの時だけ、と笑った。
鹿は、春夏に若芽を食べて味が良くなるらしい。
またこうして食べたりできるかな。
いいなと思ったら応援しよう!
