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大喧嘩と、牛すじ大根 2

幸いに、娘は登校した後だった。
友達何人かと待ち合わせして行くそうで、いつも早めに出て行く。

私は母に言った。
娘は、食事を私と二人でしたいと言っている。
険悪な雰囲気だし、お父さんお母さんは私に何か指摘されるのがお嫌なのか毎日押し黙っている。
せっかくお二人が好きなものを作っても無言で悲しくなる。
それでいて、聞こえよがしに不満を漏らしたり。
精神衛生上よくないから、食事時間を分けませんか。

母は被せるように言った。
いいですよ。フン

かくして、今日からは夕飯も別々にとることになった。
(朝食は元々別メニューで、時間もずらしていた。)

娘が言う。
なんか、ずっとこれがいい。

私は答える。
うん、私もこれが楽!

高齢の父の食べ方の癖、
座り方の癖、
自分のおかわりを、足腰の弱い母にさせること、
うまくいかないことへの子供のような八つ当たり、
そして母の咳に、
無責任な受診拒否。
加えて、万事にいらいらしていた私。

娘もストレスだっただろうと思う。

食事は、家族皆で揃って。
それが当たり前、私はそう教えられた。
そんなの、守らなくていい。
毎日、ブスッと不機嫌な顔を並べているより、
別々で(ひとまず)平和なら、その何がいけないのか。

これは私の発達障害故の、トラブルなのだろうか。
50代の娘が、80代の高齢両親に反抗。
かなり体裁は悪い。
怒りの爆発は、そりゃあ良くは、ない。
だけど、毎日、不機嫌さを撒き散らすよりは百倍ましだ。
そもそも普通ってなんなんだ。
私は、嫌なものを嫌だと言って生きて行く。

母は、私達と入れ替わりにキッチンからリビングに移り、
いつものように“おご馳走様でした”と私に言った。
どんな心持ちかは、わからない。
気持ちが和むには時間が掛かるだろうけど、しょうがない。
私は、自分達の平和を守りたい。

牛すじ大根を、娘はおかわりした。
スティックブロッコリーとゆで卵のサラダ、
ご飯、お味噌汁も。
おかわりはいつもするけど、
今日は特にしみじみ嬉しかった。
娘の、推しの話も、楽しかった。
小さな自由を感じた。







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