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平和な暮らしと、親バカと

寝る前に、ああ、平和だな、と思う。

数年前までは、そうではなかった。
まだ幼い娘がなぜこんな目に遭うのだと、
悔しくて、泣きながら寝た事は、数え切れない。
私と娘にとって
ようやく辿り着いた、
闘って手に入れた、穏やかな暮らし。

娘、妙子(仮名)の所属するクラブチーム。
試合後にぞろぞろ退場して来た子達
幼馴染もぞろぞろいる。
そのうちの一人、よしこ(同じく仮名)が言った。

たえこのママ、
試合の時、“よしこー!ドンマイ、立って!”って言った?

          聞こえてた?活躍したね!

ねえ、よしこ達には呼び捨てなのに、なんでたえこにだけ“たえちゃん!頑張れ!”なの?
ちゃん付けでさ。

           あら、そうだった?

おばさん、贔屓かい!

           (ひいき、って…)

試合で負けて少し前に涙していた幼馴染男子が、言う。
彼は今日主将を勤めた。
贔屓って言うか、親バカだろ。

そうか⚡️、親バカなんだな、私。

まあいっか。

毎日、毎日
弱って、かつ頑なになった両親には心底イライラするし、
娘にも穏やかでいられないことが多い。
両親にも、娘にも、鬼のような形相と言われてしまった。

だけど、週に数回、
大きな河と橋を渡って
水面や空を見ながら、ひたすら体育館に向かって車を走らせる。
こうして、親バカと言われる時間を過ごす。
帰りはSpotifyで掛ける曲に、互いに文句を言いながら、夜の道を走る。
この時間は、私達がやっと手に入れた平和だ。



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