【お願い】コロナ禍での犬暮らしに言いたい【聞いてくれ】
犬は良い、と公共放送で力説した思想家?だったか、いたらしい。(テレビは見ないのでネットニュースのヘッドラインのみ、チラリ情報である)
コロナのことを解説した番組だかで、この騒動でのおうち引きこもり生活にストレスをためまくっている人が多いことを憂いてのアドバイスだったのだろう。
わかる。よくわかる。犬は良い。
無神経なようでいて空気は読む。何も言わないが行動は起こす、目で語る。何よりかわいい。触ってもいい。嗅いでも(臭くとも)いい。さすがに食べるのは、、、止めておいた方がいいだろう。生きている、軟らかく暖かなものがそばにいるだけで心はほっとするものだ。
おうち引きこもりの代償として、犬やらペットを飼う人が増えた、ともニュースで見た。海外では引き取り待機の保護動物施設が空になったという、嬉しいニュースもあったらようだ。良いではないか、良いではないか、と思って、しかしハタ、と気づいた。
犬は1匹しか飼った経験がないのに言うのもおこがましいかもしれないが、今この状況で新しい犬を飼うというのは芳しくないのではと思うのだ。
犬は社会性の高い動物だ。家族という群れと、家族の外の社会生活と、両方を持って生きていく。
うちの子・テテさんを飼い始めた時、そもそも犬を飼うのも初めての経験で右も左もわからなかったので、幸い親戚にドッグトレーナをやっている人がいたので大いに頼った。
教わったのは、犬にいろいろな社会経験を与えてあげるべきだ、という事である。
家族だけじゃない、世の中には男の人女の人、若い人年老いた人、小さなこどもや赤ちゃんもいる。同じ犬だって、大きな犬から小さな犬までいる。犬以外の動物もいる。車や電車、雷や花火が大きな音を立てる。いろいろなにおいがある、いろいろな食べ物がある(食べちゃいけないものもある)、温かいもの・冷たいものもある、様々なさわり心地のものがある。
人間がだいたい80年の人生でいろいろ学んでいくことを、もっと短い命の犬たちはぎゅっとそれらを体験していく。別に体験させないから良い、と言ってしまえばそれまでだが、狭い監獄みたいな生活で、本当にその子は幸せに暮らせるのだろうか?
いざという時にストレスにならないようにという点でも大事、と教わった。自然災害で被災して、家で暮らせなくなって、避難所生活になるとしたら。慣れない場所でストレスがたまるのは人間もそうだが、ペットたちもそうなるだろう。ストレスがたまると攻撃的になったり、自傷行為をしてしまう子もいると聞く。そうならないためにも、万が一家にいられなくなっても、ハウスとか落ち着ける場所で安心できるようにしてあげれるようにするべきだし、様々な経験を積んでおくべきだ、と。
家に犬を迎える時、アジリティが上手にできるとか、スリッパや新聞を運んできてくれる器用な子になってほしいとか、そんなことは想像しなかった。REX(知っている人だけ反応してくれ)みたいになるには、犬も人間も多大な努力が必要だということは分かる。そこは目指すところじゃない。
まず犬自身がストレスをなるべく少なく暮らせること(飼う直前に、知人の家の犬がしっぽ自傷事件を起こした。新しく生まれた乳幼児との生活にストレスを感じたためらしい。それが教訓になった)。当然我々も負担は少ない方がありがたい。できればご近所さんや、犬友達とはフレンドリーが良い。おでかけも一緒に楽しめればよい、出かける過程も、出かけた先でも楽しいのが何より。ただ、一緒に楽しく暮らせればよい、そんなフワッとした願望だった。
教わった通りに、小さい頃からなるべくいろいろな人や動物に触れあえるよう心掛けた。家族だけじゃなくよその人にも良く触って撫でてもらい、いろいろなところに出かけ、いろいろなものを見せ、においをかがせ、おうち以外でもご飯を食べさせた。「幼稚園」ということでトレーナさんに預けたことも何回かしたが、初日は半日預けて一度もトイレをしなかったという。緊張して! あの家の中では暴れまわって一日何度もトイレに行くヤツが!と大変びっくりした思い出がある。何回か通い重ねるうちに慣れていったようだが、そんなことを繰り返して、テテは大変社会性の高い犬になっていった。
否寧ろ、社会性が高すぎた。外に出れば猫かぶりのイイコちゃんで、あちこちいろいろな人にしっぽ振り撫でてかまってもらって、そのくせ家に帰れば暴れん坊。マツケンサンバと上様のギャップの比じゃない、「白いカラス」を観た時の衝撃、お分かりいただけるだろうか。ちなみにレクター博士はミケルセンの方が好みである。(話が逸れてる)
思い出話が思わずシャボン玉みたいにふわふわ大量に膨らんでしまったが、言いたいのは「犬は社会で生きる生き物である」ということ。
人の触れ合いを避けなければならない今のこの状況は、犬の社会性を育てるのに大変不向きだと思う。犬の散歩も人の少ない時間に、と推奨されてすらいる。この状況下では、犬の社会は全然広がっていかない。
人間以上に幼児教育が重要だという。今子犬を飼い始めたら、一番大事な幼少期に社会経験が軽薄になってしまって、長じてストレスフルな生活になってしまうのではないか。
まだ飼っていないが飼おうと検討していた人がいたら、お願いだからちょっと待ってほしい。あなたのストレス解消にはなるかもしれないが、犬の短い人生に責任を負うには今は大変不適切だ。
既に飼ってしまったならば。せめて散歩をいっぱいして、触れ合うことは少なくとも近所の範囲でいろいろなものを見せてあげてほしい。ちなみに、ロングリードはコントロールが効かなくなるのでお勧めしない、と私は教わった。ソーシャルディスタンシングしつつ安全に交流するのはちょっと難しいかもしれない。きっと、お散歩は楽しいだろうけど触れ合いが無くてさみしいだろう。せめて家の中ではいっぱい遊んであげてほしい。
犬は生き物だ。人間のストレス解消のために、その命と生きざまを蔑ろにするようなことはあってはならない。どうか、皆にもそう思ってほしい。