冬はつとめて。

冬が好きだ。
冬の匂い。澄んだ空気。オリオン座。もこもこのニット。イルミネーション。クリスマス。年越し。初詣。魅力だらけの欲張りな冬が好きだ。
年々寒さ耐性がなくなりつつあるような気はしているけど。
中学生、高校生の頃はくるぶし丈の靴下でもへっちゃらだった。今ではそんな装備で冬を越していた自分が信じられない。正気の沙汰ではない。
毎年冬になると温暖化なんて嘘なのではと思ってしまうし、夏が待ち遠しくなる。夏が来たら来たで冬が早く来ないかと思う。

それでも、冬が好きだ。
冬の朝は遠くの富士山が、夜にはオリオン座や夜景が綺麗にみえる。夏に比べて空気中の塵や水蒸気が少ないから綺麗にみえるそうだ。
朝、電車に乗っている時に遠くの景色が綺麗にみえるとなんだか心がしゃんとするような気がする。

清少納言が『枕草子』で冬は早朝だと言ってたが、わたしは星が綺麗に見える冬の夜も好きだ。切ない気持ちが良く似合って、そもそも失う恋なんて今はないのに無性に失恋ソングを聴きたくなる。

朝、布団がなかなか離してくれない。
家のドアを開けると澄んだ匂いがする。
吐いた息が白くなる。
植物やフロントガラスに霜が降りている。
落葉樹はその名の通り葉を落としていて、目に入る緑の殆どは針葉樹の深い緑。
帰り道、オリオン座を見つける。
そんな刹那に冬の訪れを感じる。

9月に入り急に秋めいたと思えば、10月に残暑のような日々。9月と10月が神様のいたずらでひっくり返ったような2021年。今年の冬はどれくらい寒くなるのだろう。