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秋は夕暮れ。
金木犀が好きだ。世間では「トイレの臭い」だなんて言われることをたまに、いやしょっちゅう耳にするがわたしはそんな金木犀の匂いが好きだ。
秋風にのってふわっとどこからともなく香る、主張しつつもさり気ない唯一無二の香りが好きだ。いつだかの京都旅行で金木犀の香水が売られていたときは値段を見るよりも先に手に取ってレジに向かってしまった。それくらい好きだ。
わたしは植物が結構好きなのかもしれないと最近気がついた。在り来りな表現だけど桜の蕾が膨らめばわくわくしてくるし、その桜の緑が深まるとああもうすぐ夏か、なんて思う。向日葵が太陽に向かって咲いているのをみると元気を貰える。彼岸花が芽を出せば秋をしみじみと感じ、椿が花開くとどこか切なくなる。わたしって、単純なのかもな。
日本には四季があって、それぞれの季節が代表的な植物を持っている。よく考えてみるとそれはとても素敵なことだ。四季自体は日本特有の気候というわけでは無いのだけど、日本は昔から季節についての和歌を詠んだり年中行事を通して諸外国よりも季節の移ろいを大切にしてきたのではと考えている。だから日本の四季について海外の方から関心が寄せられているのではないか。なんて、論文めいてきちゃったけど。
秋そのものも好きだ。四季の中ではいちばん好きだ。心がきゅってするほど綺麗な夕焼けが見られて夜になると涼しくて。さつまいものお菓子がたっくさん売られて。マックの月見バーガーも始まって。○○の秋にあやかる色々なイベントが開かれて。さつまいものお菓子がたっっっくさん売られて。え?2回目だって?さっきよりも「っ」が多いって?………さつまいも好きなんだもん。焼き芋、ミスド、スタバ、タリーズ、コンビニスイーツ。たくさんのさつまいもによって秋は生き長らえている。これからもよろしくお願いします、さつまいも農家の方々。
もうすぐ9月も終わり10月。いよいよ秋が本腰を入れる頃だ。今年は9月に入った瞬間に風が秋の匂いに変わった。金木犀も彼岸花も去年より早く咲いてしまったから既に次の秋の準備を始めている。来年はどんな秋になるかな。
最後に古今和歌集から紀貫之の和歌を。初めて読んだ時衝撃を受けた。たった31語の中で季節が過ぎるのを詠んでいる。こりゃあすごい。
春たちける日よめる
「袖ひちて むすびし水の こほれるを 春立つけふの 風やとくらむ」
拙いながら口語訳
(去年の)暑い夏には袖を濡らして掬った水が冬には凍ったのを立春の今日の風が溶かしているのだろうか。