屋上同好会とエトセトラ(2)
2.「ッは〜〜ッ!」
その日の活動は、海乃の奇声から始まった。
「なんだ海乃、ついに頭がおかしくなったか。」
「どういう意味っスかそれ。」
「いやそのまんまの意味だけど…」
「いやァ〜、穏やかな春風が吹きますね〜…」
グンと背伸びしながら海乃が言う。
「それだけでそんな奇声をあげてたのかお前。」
その横で、グンと曲がった猫背の大江が返す。
「いやいや、それだけじゃないっスよ〜。平和ですスし。」
「まぁ、平和なのはヨシとしよう。しかしだ海乃。」
大江は真剣に言う。
「なんでス?いつになく真剣でスけども。」
海乃はぼけ〜っと返す。
「昨日も言ったけども、無いんだって…」
「何がでス?」
「"やる事"だよチクショウ!」
大江の一言は、どこか悔しそうであった。
「こうやって屋上でボーッとして!ただただひたすらに時間を消費するって何!?なんかこう、楽しみ方とかってこうさ!あるんじゃないの!?」
「…と、言われましても……」
大江の必死さに圧されたのか、海乃が考え込む。
「………まぁ、雑談ぐらいでスかね?」
「んんんんいつもと変わらんッ!そうじゃなく!屋上だけでしかできない事ってねーの!?」
「………まぁ、あるにはありますけど。」
「まじで!?最初っからそれやりゃよかったじゃんよ〜海乃よ〜!」
大いに喜んでいる大江が海乃の肩をポンポンと叩く。
〜2分後〜
「さあ、どうぞ。」
「……」
「さあさあ、どうぞどうぞ。」
「いや無理だろ…」
「でも屋上でしかできない事でスよ?」
「だからってこっから飛び降りろってかァッ!?」
大江は屋上の柵を越え、今にも落ちそうな所に立っていた。
「はい、スリー、ツー、ワーン…」
「バンジージャンプのノリ!?」
「もー、私だって必死で考えて、必死で絞り出した答えなんでスからね?」
「わかった!わかった!もう訊かない!死にたくない!」
「…うむ。なら、さっさと戻ってきてください。」
「冷たッ。」
雲が流れる。鳥が鳴く。
部活動に勤しむ奴らの声が聴こえる。
「……暇だな。」
「…暇でスね。」
そんな中でも、"屋上同好会"はいつも通りだ。