【保存版】妻の闘病に寄り添って知った「がん治療」のこと。
闘病生活を家族として支える中で、最も精力的に行ったことは「徹底的に調べる」ことでした。そしてその情報は逐一アップデートしていくことを今でも心がけています。おそらく僕と同じ境遇になる人が悲しいことにたくさんいるはずなので、僕なりに調べた情報や体感したことについて簡単にまとめようと思います。
【ご注意ください】今後、この情報をもとに色々と考える方もいらっしゃると思いますが、正直この情報が本当にすべて正しいのか、この情報を取り入れるべきなのか、については個々が判断することだと思っています。僕なりに取捨選択をして、その後間違ったと思っては軌道修正を繰り返してきましたが、これをお読みいただいて納得できる方は参考にしてください。
①がんと分かって最初にやってくる課題とは何か。
この答えは「意思決定」を一瞬でしないといけないということだった気がします。がんと診断された患者本人もそう、その家族もそう、基本的にほとんどの人はがんに対する予備知識や対処方法は知らないんです。身近な病気だと言われながらも、正直身近であるはずがない。
そんな「よく分からないもの」に罹りましたと言われた時、どのようになるかと言うと「言われた通りにするしかない」んです。
でも、先生が言っていることってあっているんだろうか?とか、他の方法ってあるのかな?とか、セカンドオピニオンって言葉は知っているけど、実際にやるにはどうしたらいいんだろう?など気になることがいくつもあります。そして、自宅に帰ってネット検索してみた時に、初めてさまざまな情報に触れることになり、そうすると「先生はこれを教えてくれていない」とか「こんないい治療法があるとネットに書いてあるのに言ってくれていない」など、勝手に「先生は信頼できないんじゃないか?」みたいな気持ちになることがあります。でも、そんな気になることをモヤモヤさせたまま意思決定をすることになるんです。なぜなら、時間が惜しくなってしまうからです。
がんと分からなかった今まではなにも気にせずに生きていたはずなのに、がんと分かった瞬間に「今すぐに治してほしい」「1秒が惜しい」となります。特に進行が進んでいる場合は、1日の遅れが一生を決めるんじゃないかというくらいの時間感覚になってきます。ともすると、先生のことを100%信頼しなかったとしても「治してください!手術してください!」というのが最優先になってきます。
経験者として言えることは、冷静に「セカンドオピニオン」やってくださいということです。
【セカンドオピニオン】がんの診断や治療では、患者や家族が正しい情報に基づいて担当医と十分に話し合い、納得して治療を受けることがとても大切です。しかし、担当医と十分な話し合いを行っていたとしても、「別の医師の話を聞いてみたい」と思うことがあるかもしれません。診断や治療選択などについて、現在診療を受けている担当医とは別に、違う医療機関の医師に求める「第2の意見」をセカンドオピニオンといいます。セカンドオピニオンは、今後も現在の担当医のもとで治療を受けることを前提に利用するものであり、「セカンドオピニオンを聞くこと=転院すること」ではありません(国立がん研究センター「がん情報サービス」より抜粋)
基本的にがん治療の方針は「ガイドライン」というものがあって、そのガイドラインに沿って行われます。簡単に言ったらがん治療の教科書があるということです。このガイドラインが存在する前はいわゆる「トンデモ治療」がたくさんあったようです。現在ではこのガイドラインが最も科学的根拠に沿ったもので、効果が実証されている治療法が載っているものです。さらに言うと科学的根拠があるからこそ「保険適応」されています。
教科書に書かれている治療パターンはさまざまで、いくつもパターンがあり、どの治療パターンを選択するのかは病院や先生によって異なります。(実体験しました)
家電を買う時って、いろいろな店で値段見たり、店員さんの話聞くと思うんです。ネットでも比較しますよね。それががん治療になると「先生のお任せします」となってしまって、やれなかったりするんです。冷静ではいられなくてモヤモヤしてても意思決定を焦ってしまったりします。セカンドオピニオンしている間にがんが進行してしまうんじゃないか!みたいな。ここは冷静になって立ち止まってみましょう。治療方針の違い、先生の人柄、言葉の使い方、伝え方、当然ですが相手も人なので全部違います。治療は手術して終了ではなく、その後も継続したり、場合によっては数年単位でお世話になることだってあります。ここは納得して進むことが何よりも大事だと思います。
②情報の取捨選択が大事。何を選び、何を捨てるか。
これがすごい大変です。まず注意すべき人は、学歴がある人や、収入が高い人なんだそうです。
一般的に学歴がある人、収入の高い人は日常において「お金を多く支払うことで、良いサービスを受けた経験を持つ人」の可能性が高いですよね。それはつまり、がん治療で周りの人よりも多くの費用を払えば、通常の人とは違った選択肢で治療を受けられるのではないかと考えてしまう可能性がある人だと言えます。
がん治療は「標準治療」と呼ばれる治療法を医師から説明されるはずです。この標準治療というのはお金を持っている人も持っていない人にも等しく提示されるやり方です。正直、言葉が悪いです。とはいえそんな文句を言ってもしかたありません。標準治療の上のレベルの治療=「優良治療」などという言葉や治療方法はなくて、この標準治療というのが「最も有効性が実証されている治療」だそうです。
一番効果のある治療をお願いします!と医師に伝えれば間違いなくガイドラインに沿った標準治療を説明されます。
次に、検索能力がある人も要注意です。「〇〇が良さそう、〇〇をしたらいいらしい」そんな情報ばっかりネットにあります。
2009年の情報なのでかなり古いのですが・・・がんについて日本語で書かれているネットの情報が正確かどうかを検証した際に、正しい情報だった割合は次の通りだったそうです。
Google:29.6%
Yahoo!:45.5%
これは正しかった割合です。悲惨な結果ですよね。つまり、ネットで得られるがんの情報は半分以上間違っているということです。がん治療においては自分が調べた情報が正しいとは考えないほうがいいです。僕も色々と調べて、いろいろと試してきましたがその都度違う情報に出会い、情報を更新し続けています。以前に自分がした意思決定に対してまったくの逆のことを意思決定することもあります。
③補完代替医療の存在
免疫療法、食事療法、それだけでなく本当に胡散臭い〇〇治療法などもいくつかあるようですが、妻ががんと診断された直後は、とにかくこういった情報に食い入るように見入っていました。なぜなら「がんは食事で治る」とか平気で書いてあるからです。
治るのかどうか、本当のところは僕には分かりませんが、このような言葉に誘惑されることはほぼ毎日でした。吸い込まれそうになります。ある程度冷静になれてから僕はこう考えるようにしました。
がんの性質というのは個人ごとに一人一人が違っていて、治療法も個々に変わってくる以上、がんは〇〇で治る!のような言葉は「マーケティングのための言葉」だと。自分がマーケティングの仕事に関わっているからこそ、そのようなワードを使うだけできっとその書籍や、治療法の売り上げが何百倍にもなるであろうことが透けて見えます。
おそらく罹患した本人はもっと吸い込まれると思います。冷静にジャッジできる家族がしっかりと寄り添いながら「冷静に」やるか、やらないかを決断すると良いのではないかと思います。全否定するつもりはありません。
我が家では一時的に食事療法を導入しました。特に〇〇は食べてはいけないという「制限」をしました。が、2ヶ月ほどで辞めました。
理由は、抗がん剤治療を行っている妻のことを考えると最優先するべきは、「抗がん剤治療を継続できる体力がある」ということだからです。そうすると、食事制限をするというよりは、良い食材で、良い調味料を使って、良い食事をして、よく食べる!ということのほうが圧倒的に大事なのではないか?という考えに変わり、もちろんがん発覚前のようなめちゃくちゃな食生活をするわけではありませんが、栄養バランスや量を気にした上で、好きなものを好きなように食べるという方針に転換しています。
④がん保険には入るべきなのか?
よくSNSで「保険にお金を払うのは情弱だ」といった論調の情報発信を見ますが、そもそもお金がある人は保険に入る必要はないし、毎月のお金を節約してなんとかやりくりしているような人は入ったほうがいいのが保険です。
もし、いまの家計の中で月10万円〜15万程度の出費が増えることが問題ない家庭であれば必要のないものですし、その出費が厳しいという家庭であれば入っておいたほうがいいのではないかと、実際に給付金を受け取った家族として思っています。必ずこうしろというわけではありませんが、我が家では本当に助けられました。
特に、今のコロナの状況で面会ができない状態にあって、がんでパニックになってしまっている本人にLINEの文字だけで元気づけるのは正直無理です。我が家のがん保険の給付金の使い道は「個室代」でした。いつでも連絡できるし、毎晩長電話しながら話ができるからです。結果、心の底からよかったと思っていますし、保険の給付金の存在があったからこそできた決断だと思います。
この件について書いてある記事があるのでもし気になる方はこちらをご覧ください。(有料ですが・・・)
⑤結局、どんな生活をしているの?
がん患者とその家族が「超大変な闘病生活を送っていて、人生を投げ打ってでもなんとかしている」という印象はなぜ僕らは持っているんでしょうか。おそらくテレビドラマだったり、キツい闘病生活を余儀なくされた人たちが体験記を書き、それが売れるからだと思います。
もちろん、キツい場面がないわけではないし、抗がん剤というのは副作用が必ずあり、人によってはキツいのは間違いありません。(これは本人ではないから出しゃばってはいけない部分かもしれません・・・。)
ただ、意外だったのは副作用を抑えるための薬だってしっかりと考えられているということでした。がん治療をしながら、副作用を体感しながらもその副作用を抑えながら日常生活を送っています。
これも人によって違いますが、我が家では2週間に一回通院で抗がん剤を投与しに病院に行きますが、その当日含めて3日ほどは体調の優れない日、そこから徐々に回復をしていき、通院前日はこれまでと変わらないくらい元気です。なので、家族で外出したり、外食にでかけたりしています。旅行の計画なども立てています。
家族として全力サポートが必要なのは、体調の優れない3日間でそれ以外は役割分担をしながら過ごしています。
⑥治療費について
基本的に標準治療という治療を選択する場合には、全てが保険適応になります。さらに高額療養費制度という制度もあり月額の上限が決まっています。収入によって違いますが、通院の交通費(タクシー代)を含めて月10万程度だと思っていれば間違いないです。
標準治療以外の治療方法を選択する場合は保険適応ではないので、下手したら数百万円という高額な治療費がかかってきます。
なので、標準治療を選択するのであれば超高額な費用が一気にのしかかるようにはなっていません。日本の医療制度は本当にすごいなと感動しました。
ですが、当然、ボディーブローのように効いてくる出費はあります。保険のところで書きましたが、今の家計にプラス10万円の出費があって問題ない家庭であれば心配はいらないかもしれません。ただ、そうでない家庭にはかなり効いてきます。
交通費、食費、治療費(上限あるものの)、その他諸々かかります。
我が家は2人とも会社員ではなくフリーランスです。会社員であればもらえるような傷病手当といったものは、休業手当のようなものは一切ありません。心配があるかどうかと聞かれたら、もちろん心配です。仕事量を調整すればその分、収入は落ちます。
それもあって、多くの方にnoteで支援をしていただけたのは本当に感謝でしかありませんでしたし、そのお気持ちを大事に家族で闘病頑張ろうと思いました。
⑦「家族の」メンタルはどうか?
ここで書いているのは、闘病する本人ではなくて「家族のメンタル」です。家族は第二の患者と言われるそうですが、それはたぶん本当にそうなんだと思います。精神的な圧が相当かかります。
自分の愛する家族が「死」に直面するので当然です。そして、家族だからこそのプレッシャーもあるなと実感しました。
家族にできることってなんだろう・・・。と色々と模索してきましたが、やっぱり「勇気づける」ということと、「自分は冷静でいること」なんだろうと思っています。
罹患した本人は絶対に落ち込みますし、絶望します。そしてそれは家族だって同じです。しかし、同時にみんなが絶望しても希望はやってきませんし、希望に導いていくことができるのは、本人ではなくて家族だからこそできる仕事なんだろうと思います。
そんなプレッシャーもあり、精神的に追い込まれてしまう人もいるのかもしれません。家族がうつ状態になることも少なくないと聞きます。
僕が個人的におすすめしているのは「外とのつながりを持つ」ということです。患者本人はもし抗がん剤治療が始まって、脱毛が進んでとなると外出したい欲はどんどんなくなると思います。それと同じように家族が一緒になって閉じこもってしまうのは本当に危険だと考えています。共感したいし、時間を共有したいことは間違いないんですが、あえて離れる時間を作るべきだと思っています。
家族は外の人とのつながりを持って「冷静でいれる時間」を作るということが長期的な治療に寄り添う上で重要だと思います。
最後に・・・
まだまだ闘病歴3ヶ月と期が浅いため、今後も色々な壁を体感することは間違いないと思います。その都度、この記事は修正しながらアップデートしていくつもりです。
家族が病気になるなんて気にもしない人が大半だと思います。気にしたことが杞憂で終わることが一番いいのですが、万が一があるということが多くの人に伝わったらいいなと思って書きました。ここまでお読みいただきありがとうございました。
・・・最後に正直なお願いをさせてください。
読んでくださって本当にありがとうございました。長文の長文なので大変だったと思います。そんな皆さんにお願いすることは少し心が苦しいのですが、もしこの記事を読んで応援したいと思っていただけた方は、どうかサポートをお願いします。
家族で元気に闘病するための資金として大事に使わせていただきます。
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妻のがん闘病を支える家族の視点
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