フランスな日々。 #留学編2
ここで生きていけるのかと悩みつつも、久しぶりの学生生活は楽しかった。
広がる風景は、まるで子供の頃に夢見たおとぎの国のようだ。
日本ではお目にかかれない日常が、あちこちに点在している。
街には馬車が闊歩する音、通学路にある花市場やクレープの香り。
「学生時代は、学べる楽しさが分からない」
大人になって、この言葉が身に染みた。
自ら学ぶ事はひじょーに楽しい。
だけど昔、こんな言葉も聞いていたな。
「興味のない科目が、将来何の役に立つのか分からない」
これに関しては、私の考えは今も変わらない。
いや、むしろ悪化したように思う。
人には向き不向きがあるのだと確信した。
餅は餅屋というではないか。それぞれが得意なことをすれば良いのだ。
話は前後するが、私が留学したのはロワール川流域の中心的な街である。
なぜここを選んだかというと、単に留学仲介会社のツテである。
最初はパリに行きたいと考えた。
アートに関わるなら、誰もが一度は憧れる街だ。
出来ればパリに留学して、美術館などを見に行く生活をおくりたかった。
しかしである。
予想はしていたがパリは全てが高い。
しかも、今からは私は学生のご身分……。
ボンジュールしか判らんレベルの自分が、高いお金払ってパリに行くのはどうなのだよ?
いやいや、私はきっと勉強そっちのけで美術館などに行きまくるに違いない。
「きゃーこれ可愛いー♡♡♡」
「きゃー、この建物美しいー!!」
そんな自分がすぐに浮かんだ。
パリだけは選んじゃあかん!!!(少なくとも今の時点では。)
そこで仲介会社の担当の女性に相談した。
すると、彼女はこう答えた。
「ロワール川流域は、昔王侯貴族が住んでいた地域なので、美しいフランス語を話します。だから最初の留学場所にはいいと思いますよ。」
へー、そうなのかー。
「お城もたくさんあって景色も素敵です♡」
お城ねー。歴女にはたまらないw
「それにパリまでTGV(新幹線)で90分ぐらいですから。週末にパリに行けばいいじゃないですか。」
なるほど。それはいい考え!
「じゃあそこにしまーす。」
これが、私がこの街にやってきた理由である。
入学したての3月頃、駅や学校に桜のような花が咲いていて感動した覚えがある。
桜を見ると、卒業式や入学式の気持ちなるところが日本人である。
こうして通うことになった語学学校は、地元では評判の高い学校だった。対象は初心者から仕事活用までと幅広い。
授業内容は文法、発声練習、会話、聞き取りがメインで、レベルが上がると料理や歴史、音楽などがテーマの課外授業なども盛り込まれてくる。
放課後には自由に参加できるオリエンテーションなどもある。
授業は午前中だけでもいいし、夕方まででもいい。自分で自由に選べるのだ。通常の学校ではないので、入学は随時可能だ。
私のクラスは当然ながら、初心者レベルである。
クラスは10人ぐらいで、私の他には日本人が一人のみだった。
他は韓国、リビア、サウジアラビアなどから留学生だ。
担任の先生は、優しくもきちんとした女性で、私達をフォローしてくれた。
クラスに入った初日に待ち受けるのは、恐怖の自己紹介だ。
私は頭が真っ白になり、せっかっく覚えてきたこともすっかり飛んでいた。
しかしこんな事もあろうかと、私は自作絵のポストカードをその場で配ってみた。
アートは国境を越えるのだ。(漫画絵だったけど。)
そのおかげで先生もクラスの子たちも、私がどういう人なのか、一発で認識してくれた。
日本=漫画、と世界中で認知されているのは非常に有り難いことである。
まあ、人間フランス語になるのにそれから1ヶ月を要したのだが。
しかし最初に入ったこの初級クラスの出会いこそが、私にとって本当に良かったと後々思うことになるのである。
迷走しながらまだまだ続。<(_ _*)>アリガタヤ・・
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