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フランスな日々。 #留学編5

その日はついにやってきた。

ビミョーだった寮生活から、私はついに脱出できることになった。

フランスに来て2ヶ月ほどたった頃だったと思う。

クラスメートが、知人の家を紹介してくれたのだ。

聞けば、彼女がお世話になっている人の家族の家らしい。

「とてもいい人だから、気にいると思うよ。寮よりも安いし、空いてる部屋を使わせてくれるって。ただね・・・」

「ただ?」

「学校からちょっと遠いかな」

ちなみに私がいた寮は街の駅の真横で、学校へも徒歩15分ぐらいだ。

そのいい人の家から学校までは、バスで10分、更にバス停から徒歩5分ぐらいだった。

『まあ、定期券買えばいっか…。』

「どうする?会ってみる?」

「会う!!」

「決まり!じゃあ放課後一緒に行こうね」

持つべきものは良き友達だ。日本でも世界でも。

実際、この出会いが私のフランス生活を特別なものにしてくれた。

紹介してくれたクラスメートには今も感謝しかない。

そして放課後、私はクラスメートと一緒にお世話になる人の家へ向かった。

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フランスではパーソナリティーが重視される。そのため信頼ある人の紹介で、家や仕事や結婚があっさり決まったりもする。

多民族国家なので、相手の地位よりも先ずは信頼が重要になってくる。

たまたま出会って、好きになった相手が実はテロリストだったなんて洒落にならないだろうし。

ちなみに私がフランス人の家に入れてもらったのは、このときが初めてだった。

ほとんどの日本人留学生は、学校に頼んで朝晩食事付きのホームステイを選ぶ。

私がそうしなかったのは、毎日フランス料理を食べるのは身体に合わないと思ったからだった。

それに1人のほうが気も使わないだろうし、勉強に集中できると思っていた。

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しかし、その考えは間違いだったとすぐに気づくことになる。

私を迎えてくれたマダムは優しく明るく、そして深い心の人だった。

緊張しつつ「ボンジュール…」と挨拶をすると、マダムは優しく返事をしてくれた。

「ボンジュール!はじめまして。我が家へようこそ」

彼女は空いてる部屋に案内し、キッチンやバスルームなども自由に使っていいと話してくれた。

要は間借りだ。食事はキッチンで自分で好きなものを好きなときに作れる。

寮のときも思ったが、フランスは日本のように必ずしも家にバスタブがあるわけではない。マダムの家もシャワーのみだった。

私はフランスの水道料金が高いことを留学して初めて知った。そのためフランスの家庭ではバスタブがあっても、ほぼ水を貯めないらしい。

風呂好きの日本人には悲しい現実である。

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マダムの家にはこじんまりした裏庭があり、ちょうどピンクのバラが綺麗に咲いていた。

なんだかほっとした。

庭にはテーブルにベンチとパラソル、日光浴のチェアーも置かれていた。

木に鳥の給餌器が下がっている。

「ここは野鳥が来るのですか?」

「そうよ、あなた鳥が好きかしら?」

「大好きです♡♡♡(^0^)」

マダムはにっこり微笑みながら、野鳥のポケット図鑑を見せてくれた。

私は心底ジンワリした。

いい人で良かったなぁ…。


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お世話になり始めた数日後のことだ。
私のことを聞きつけたのか、マダムの友人たちが家に尋ねてきて一緒に食事をすることになったのだが、その時の会話を今もよく覚えてる。

1人の友人がマダムにこう言った。

「ねえ、彼女にまだフランス語でやりとりするのは難しいんじゃない?英語も交えて話したら?」

「あなたも英語も交えてのほうがわかりやすいわよね?英語はわかるでしょ?」と、私は英語で言われた。

だが、マダムはピシャリと友人たちに言い放ったのだ。

「絶対にだめよ!!彼女はフランス語を覚えるためにフランスにきてるのよ。だから私は絶対にフランス語でしか話さないわ。彼女のためにもあなた達もそうして!」と。

私はこの時、マダムがとても強くて優しい人なのだと感じた。

まあ、私、正直英語もビミョーなんだけど…。


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庭には野鳥がよく訪問した。

週末にはマダムの友人たちもよく訪問した。

小鳥たちのさえずりとマダムたちの声。

マダムは私を自分の友人たちに紹介してくれた。

友人たちも皆、とても良い人だった。

よくわからん留学生のたどたどしいフランス語を、皆じっと待って聞いてくれた。

良い人の友人は良い人だ。

マダムは朝から夜まで仕事で忙しい人だったが、週末たまに地元である催し物に招待してくれたりした。

たまに城跡や遺跡で音楽会や演劇などが催されるのだが、そのような催しにたびたび招待してくれた。

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寮と違い、否が応でも朝から晩までフランス語を話さなければならない環境だ。私は何とかマダムと少しでも意思疎通ができるよう頑張った。

日本から持ってきた食材やダシを使い、たまに日本料理を奮ったり、日本のお菓子を差し上げたりしながら、少しづつだが日々フランス人家庭の生活に溶け込んでいった。

今思えば、部屋に1人フランス語を覚えるより、私にとっては効果的だったのだろう。

“ああ、これがホームステイの良さなんだなぁ…”としみじみ感じた。

後日、学校で「なぜかフランス語を1つ覚えるたびに、英語を1つ忘れていく気がするんだよね…。」と話したら、他の日本人留学生たちも全く同じことを言っていた。
やはり母国語でないせいか、脳が混乱し始めるのだろう。

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ところで、マダムはバリバリのビジネスウーマンだ。

フランスに専業主婦は、あまりいない。
女性も自立していて、自分の仕事や目標、人生に熱中している人が多い。

男性と張り合うためにバリキャリを目指すのではなく、フランス人女性は自分軸を持っている。(フランス人に限らないけど。)

それに女性が活躍できるための環境が、おそらく日本よりも整っている。

男性側もその辺をよくわかっているし、女性軽視をすればすぐにセクハラ問題になりそうだ。


そして年齢差別や区別があまりない。

何より結婚するまで相手の年齢を知らなかったというカップルも多いのに驚いた。

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「恋はするものではなく、落ちるものだ。」


学校の先生は授業中によくその話していたし、教科書にもそんな話がよく出てきた。

とにかく愛にまつわる表現が多く、恋人を呼ぶときの愛称もこれでもか、というほどある。(気になる人はぜひ検索してみてほしい。)

アジア系とイスラム教系の生徒たちは、皆きっと同じことを思っただろう。

“さすがフランス…。”

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続きます…。毎回すいません…。






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