おにぎり山の悲劇 (前編)
おにぎり山は今、秋たけなわ。
木々は色づき、きのこが各種生え揃い、ネコは枯れ草ベッドで丸くなっている。
しかし、豊かな実りの秋を迎えているにもかかわらず、ここに一匹のびんぼー人がおった。
「あー、働きたくニャイよー」という、にゃまけ者である。しかし、失業保険ももう切れる。ニャローワークに行かねばなるまい。
「いらっしゃいませ❤️こんにちはー」
窓口のお姉さんはやさしくほほえみかけてくれる。
「どんなお仕事がしたいですかあ?」
うーむ。なまけものは仕事などしたくない。できれば一日中ゴロゴロしていたいのであるが、そんな事を言ったらドツかれるという事はよくわかっていた。が、思わず、
「そーですにゃー、太陽のよく当たる屋根の上で寝ながらできる仕事とか」言ってしまった。
「はあ、なるほど。ソーラーパネルの設置とかですかね?」そうツッこむお姉さんの目は笑っていない。怖い! ((( ;゚Д゚)))
「昼寝は仕事とは言いませんねー、……そーねー、アナタ、もふもふの茶色い毛並みがおきれいね?ちょっとそこに丸くなって座ってみて下さる?」
「おにぎりせんべい🍘そっくりだわ❗」
カタカタ… ←パソコンで検索する音
「今月末におにぎり山で催されるイベント、『ようこそ!おにぎり山フェス』で単発バイトしてみません?」
「おにぎり山のご当地ゆるキャラ、'おにぎりくん' のサブキャラになって、丸くなってるだけでいいわよ。当日天気がよければ、丸くなって昼寝もできるかもーー」
「'おにぎりくん'の横でじっと丸くなって、おにぎりせんべい🍘になってればいいだけだから!日当は一万円!」
にゃまけものは前足で顔を洗いながらつぶやいた。「わるくないニャ…」
さて、おにぎり山フェス当日である。
本日のメインイベントは、毎分1000枚のおにぎりせんべい🍘が焼けるという、スーパーおにぎりマシーン での焼きたてせんべい食べ放題。
さきほどから整理券が配られ、大人も子どももせんべいが食べたくて、昼ごはんも抜くありさまである。
にゃまけものは、イベント会場中央に据えられたスーパーおにぎりマシーンの横で退屈しのぎにおにぎりくんのお尻で爪とぎをしたりして、やりたい放題であった。
「やめてくださいよ~ボクは爪とぎじゃありませんよう~💧」
「固いこというにゃよ。爪のひっかかり具合がちょうどいいにゃ。ソレ、ばりばり🎵」
「備品破損でバイト代から引きますよう~」
にゃまけものは寝るのに飽きたので、おにぎりくんをおもちゃ代わりにしていた。
かわいそうなおにぎりくんは、お尻のあたりがボロボロになり、うわ~ん、と泣きながら控え室に走って行った。
「根性のないやつにゃ」
勝手な感想を述べたにゃまけものは、いよいよスイッチの入るスーパーおにぎりマシーンに並ぶ人たちを眺めていた。
(続く)
※ サブリミナル効果?で「おにぎりせんべい🍘」が無性に食べたくなる場合がありますが、
一時的なもので健康には問題ございません。
後編はこちら↓