たましいのぬけがら
「蒲鉾とソーセージ」
「豆腐とチーズ」
「発泡スチロールとおこし」
「段ボールと油揚げ」
折紙で鶴を折りながら「似ているもの」あるあるを言い合う。
「豆腐と納豆は字が逆よね」
「豆が腐ったらなっとうで、豆を納めたらとうふじゃない?逆よね。ずっと思ってるの。変だなあって」
商店街のはずれにあるしもた屋を借りて役所が作った集いの場所。冷房がきいていて涼しいので、夏はみな涼みに来る。
何もしないのも退屈なので、折紙をしたり箸袋を作ったりする。
私はさっきからストローを割いて端から三角に折って正四面体を作ろうとしているのだけれど、うまくいかない。
「端から三角に折っていくでしょ、そうするとそのうちなんだかきざしがあらわれて、そうしてなんとなくカタチになる」
「それがなかなかならないの」
「爪でこすってスジをつけるといい」
「やっぱりならない」
ガラス戸越しに表を見ていると、おそろしく背の高い男の人が通っていった。
「食堂横のケバブ屋台の主人は昼過ぎに段ボールを敷いて北西にむかってお祈りをしているよ」
「あちらがメッカ」
「こちらは現世」
「米が無いとか金が無いとかめんどくさいねえ」
「無いと困るもの」
「腹が減らなきゃいいんじゃないの」
「ホトケ様じゃあるまいし」
「まあ、いつまでもというわけじゃないよ」
遠くからゴロゴロと音がして、雷の気配がしてきた。外はひどく蒸し暑い。ひと雨きそうだ。
「降る前に帰ろうか?」
「看板を中に入れないとダメ?」
「ああ、それは私が片付けるからいいよ」
そそくさと帰り支度をして、みなが一人また一人といなくなる。私はひとり居残ってここでまだしばらく雨を見ていようかと思う。
表からのぞきこむ人の顔。ここで雨宿りをするのも自由。招き入れるとお茶の支度にとりかかる。さて、次のお題は。何にしようかな。