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SとTの海物語


「海へ行こうか」
「海に行こう」
「間に合うかな」
「今は午後0時15分だから干潮が始まってる頃だ」
「それだったらちょうどいい」
「今から河を下っていけばちょうど砂浜が見られる」
「蟹がいるかな」
「エビもいるよ」
「ヤドカリはあわてて砂にもぐるよ」
「楽しみだな」
「楽しみだ」
「ところであの古い市場の魚屋の裏に海があるのは知ってたかい」
「海があるのかい」
「小さな海なんだ。魚屋の裏手に駐車場があるんだが、午後になると、そこに親爺が仕入れた魚を運んでくる」
「明石の昼網だね」
「魚が入った発泡スチロールの箱に入ってる海水をそこに捨てる」
「水たまりができているね」
「よく見ると水の中に小さなエビや蟹が混じってるんだ」
「そこは海だ」
「海の一部なんだよ」
「なんだか面白いね。そんなところに海があるなんて誰も知らないね」
「砂浜を見に行ったあとでその小さな海も見に行こうか。ちょうどいい時間の頃合いだから」
「時間と場所のタイミングが合うほど気分のいいものはないね。さあ、出かけよう」



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