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インフォグラフィックポスター「ヘルプマークってなぁに?」制作過程まとめ


デジタルハリウッド本科UI/UXD専攻の課題でインフォグラフィックのA2ポスターを制作することになりました。

「デザインで社会課題を解決する」というのが私の志の一つなので、ヘルプマークをテーマに選びました。

【 1. そもそもヘルプマークとは? 】

そもそもヘルプマークって何??
私自身、インフォ課題に選択する前は恥ずかしながらヘルプマークについて詳しくは知りませんでした。
その年の4月に上京する前は公共交通機関で見ることもあまりありませんでした。上京後に目にする機会が増えて気になってはいたものの、「何かの障害か病気をお持ちの方がつけているのかな?」程度の認識でした。
ヘルプマークとは、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう作成されたマークで対象者は下記です。

<対象者>
義足や人工関節を使用している方
内部障がいや難病の方
妊娠初期の方
その他、援助や配慮を必要としている方

【 2. 現状調査 】

まずは、ヘルプマークの現状を調査。
調査した結果は下記1〜7です。

1.ヘルプマークの認知度は、首都圏は55%、その他の地域では認知度は38%にとどまる。

2.認知経路は「SNSなどインターネットを通じて知った」、「公共交通機関を利用した際に知った」の割合が高い。
首都圏では「公共交通機関を利用した際に知った」、その他の地域では「SNSなどインターネットを通じて知った」が高い傾向。

3. ヘルプマークを「実際に利用したことがある」人は22%、首都圏における利用率も29%に留まる。
ヘルプマークを利用していない理由は「入手方法がわからないから」、
「利用時の周囲の反応が気になるから」、「認知不足により役に立たないと思うから」が上位。

4.ヘルプマークを使っている人のうち、約半数が「役立っている」と回答、利用目的は「公共交通機関の利用時などに周囲から配慮してもらう」ため。

5.ヘルプマークを知らない人のうち、ヘルプマークを「利用したい」と回答した人は約半数、特に首都圏以外の地域でその傾向が顕著。

6.ヘルプマークを利用したくないと答えた人のうち、「入手方法がわからないから」「利用時の周囲の反応が気になるから」「認知不足により役に立たないと思うから」の回答が上位3。

7.ヘルプマークは東京都が作成し、2012年10月から都営地下鉄大江戸線で、2013年7月から都営地下鉄など各路線で配布されてきた。現在では各都道府県が発行しているが、発行していない各都道府もあり。
またヘルプマークは発行しているがヘルプカード(援助の詳細を書いたカード)は発行していないなど自治体によりばらつきがある。

また、ヘルプマークの対象者を詳しく調査したところ以下の6つに分類されました。

1.内部疾患がある
2.人工関節を入れている
3.脳に病気や障害がある
4.妊娠初期
5.義足を入れている
6.心に病気がある

上記1~6の対象者人口は約1010万人。日本の人口の何割かを算出すると、なんと総人口の13分の1に該当することがわかりました!

【 3. 要件策定 】

日本の人口の実に13分の1に該当するヘルプマーク。
本来、とても身近なマークであるはず。
該当者がヘルプマークに該当することが決して特別でないことがわかれば、利用時の周囲の反応を気にして、援助が必要な人が身につけることがためらわれるようなことが減るのではないか…。
ヘルプマークはどんな人に該当するのかと援助の仕方がわかれば、周囲の人の認識や対応も変わるのではないか…。
今すぐでなくても5年後、10年後にはマタニティマークと同じくらいみんなが知っている一般的なマークになってほしいな…。

調査を通してポスターの方向性が固まってきました。

<コンセプト>
絵本のように楽しくヘルプマークについて学べるインフォグラフィックポスター

<5W1H>
~WHY? なぜこれを伝えるの?~
ヘルプマークについて正しい知見を広めたい。

~WHO? 誰に向けてのメッセージ?~
ヘルプマークについて詳しく知らない人たちのうち、次世代に育っていく10歳くらいまでの小さな子供たちに(それを一緒に見る母親・父親にも知ってもらいたい)。

~When?Where?いつどこで見るの?~
日常生活の中で目にとまるようにしたい。
駅、電車やバスの中、役所や学校などの公的機関、人の集まりやすい商業施設や商店街など。

~What ターゲットに何を期待する?~
ヘルプマークについて正しく・詳しく知ってもらうことで、配慮が必要な方が不安なく日常生活を送れるように導きたい。

~HOW? どのようにして目的を達成するか?~
ヘルプマークについてより詳しく知ることができるポスターを誰にでもわかりやすいように作りたい。
特にターゲットである小さな子供たちが興味を持てるものを作り、「これなぁに?」と親子でコミュニケーションをとる中で楽しくヘルプマークについて知って欲しい。

【4.著作権申請】

ヘルプマークの著作権は東京都にありますが、多様な主体による作成・活用を促すため、一定の用件を満たす場合、自由に作成・使用できるとのことで、担当事務局である東京都福祉保健局障害者施設推進部計画課に電話して問い合わせて詳細を説明しました。
内容の詳細を説明した限りでは作成は問題ないとのことでしたが、
・ヘルプマークに著作権があること
・ヘルプマークに関する情報が間違っていないかの確認
のために、ポスター制作の際には申請書の提出が必要ということで、デザイン案が固まった時点で申請書にデザイン案を添付して許可をもらう必要があります。
許可が出たデザインについては
・自身のポートフォリオへの掲載可(webを含め)
・学校内での展示可
・学校のwebサイト・ブログなどでの掲載可
とのご回答を頂きました。

【5.デザインに突入、、からの迷走】

ここまできてようやくデザインです!…ウソです。。
このヘルプマークのインフォグラフィック課題、デザイナーがやってはいけない手順をしっかり踏んでしまった反省があります。。
それは要件策定をしっかりしないまま、まだターゲットやコンセプトが固まりきっていないままデザインに入ってしまったということ…!
調査にかなり時間をかけたのでその間にどんどんやりたいアイデアが出てきてしまってラフを上流が固まりきる前に作成し始めてしまいました。。

その結果がこちらのデザイン案たち。(再び汚い手書きですみません…)

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ターゲットがバラバラ…。さらに言えば課題テーマであるインフォグラフィック感もかなり低い…。

【講師から1回目FB】
・自己啓発ポスターではなくあくまでもインフォグラフィックポスターの制作が課題(自己啓発っぽく見えてしまう)
・数字的データをもっと使う
・ヘルプマーク横のサブ文章、自己啓発っぽくなるので別の表現方法が良い

なんか前提の段階で間違えた感アリアリ…。
ヘルプマークという社会的な課題を選んだことで頭の中にACジャパンバイアスがかかっていたことを猛省。
要件策定に戻ってもう一度、ターゲットをどこに置くか、どう伝えるか、何を伝えたいか、ユーザーシナリオなどを作り直しました。

ようやく【 3. 要件策定 】に記したようなコンセプトが固まり、今度こそ間違えないようにラフ制作。

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一回目FB内容を下記のように修正しました。
1.自己啓発によらないように
→ターゲットを子供に絞ることで回避しようとして見ました
2.数字的データをもっと使う
→ヘルプマークに当てはまる人を6種類に分けそれぞれの総人口を記入しました
3.ヘルプマーク横のサブ文章、自己啓発っぽくなるので別の表現方法が良い→消しました

ここまできてやっとポスターの骨組みができてきた!

【6.アイソメトリックデザインに挑戦】

講師からの2回目FBもいただき大方骨組みができたデザインラフがこちら。

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ヘルプマークをつけている方が援助を必要としている時にどうヘルプしたらいいのか?を伝える情報も左下にプラスしました。
インフォポスター課題のもう一つの大きなチャレンジはアイソメトリックデザインです。昔から美術は得意だけと技術は苦手、という私。
自由な発想でのものつくりは得意ですが、ものを寸分の狂いなく作るのが、苦手です!
デザイン案にアイソメトリックデザインを入れたときも心の中で「絶対これだけは選ばない」と決めていました。苦手だと分かっていたし、工数が恐ろしく多り時間的に苦しむ予想がついたので。。

それでも講師の「デザイナーになりたいならアイソメトリックやっといたほうがいいよ」という一言でやることを決意。苦手で面倒だからやらないと逃げていた自分の心にも後めたかったし、何より工数のかかるデザインなら学生のうちに挑戦せずいつやるんだ!ということでチャレンジしてみました。

つくり始めてやはり正確にぴったり作るのは骨が折れて大変でした。
やり始めると凝り性の私、寸分の狂いをごまかせずもうひたすら黙々黙々つくるのみ。
企画段階から完成&課題発表まで時間はたったの3週間!
後半は完全に時間との戦いでした…!
発表1週間前でまだこの状態↓。。
今見ても震えます…

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【7.ついに完成!著作権申請再び】

今でも忘れない8/23、発表当日の午前2時。
ようやくポスターが完成しました。

ヘルプマーク高解像度

実際に印刷してみると色味が少し違い、修正と印刷を繰り返しました。
このポスター、本来は左上と左下のヘルプマークにストラップがついています。
ですが、完成してから再度著作権チェックのために都の担当事務局に画像を送ると「WEB版ではストラップを外してください」とのこと。
印刷版はストラップ付きでOKだそうです。
なのでWEB版はやや頭のさみしいデザインになってしまいましたが、なんとか間に合った、、!
助けてくれた友人と先生に心から感謝です。
デジハリの授業ブログでも取り上げていただきました。


【8.制作を通しての感想】

インフォポスターを通して学べたのは、イラレの技術はもちろんですが、上流工程の大切さ。
上流が甘いままデザインに入ってしまうと結局ブレブレで誰にも刺さらないデザインになってしまうし、巻き戻ることになると余計に時間がかかってしまう。 要件定義をしっかり行うことの大切さを学びました!

あと、完成したとはいえまだまだ未完の作品だと感じています。
私が目指したのは絵本「だるまちゃんとかみなりちゃん」や「ウォーリーを探せ!」のようなごちゃごちゃした賑やかで探すのが楽しいデザイン。
となるとあと最低でも2倍はオブジェクトが必要でした。
つまりイラレに入ってから2週間という制作期間では不可能。
その辺のタイムマネージメントの狂いも実務では許されません。
期間がここまであるからこのデザインは完成させられる、できないならどこをどう調整するのか、という部分をより現実的に考えながら進めなければいけないと思いました。

とはいえ、この課題のおかげでIllustratorにすっかり慣れ使いこなすことができるようになったのはよかったです!

長文お読みくださり、ありがとうございました。


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