UXデザイン連続セミナー2019 Day1
◆講師 井登友一さん。
◆AM UXD概論の講義
◆PM デプスインタビュー技法を実践
★デザインテーマ 「キャリアを通した継続的な成長のためのソリューション」
※デザインスコープ
理想的なwork experience(働く場、働き方、制度)、それを実現する製品やサービス、システムをデザインする
--------------------------------------------------------------------------------------
◇AM UXD概論の講義◇
第1章 UXD概論
ー良質なUXデザインとは?
価値と文脈(ストーリー/ルール)を創造する
近年世界を変えたものはすべてインターネットを経由している。
ex: Google/ youtube / facebook /twitter /Uber / Airbnb
→中身は一般のユーザーが作っていくサービス
これらに共通することはモノではなく経験を提供しているということ。
経験そのものに価値がある
近年30年でモノから経験へ価値が移ってきた。
○例えばコーヒー○
①その昔→コーヒー豆自体が貴重だった。「豆が手に入っただけでヒャッホイ!」コーヒー豆=価値
(コモディティ=コストによる差別化)
②豆が普及してきて製品による差別化が始まった。「マメ挽くの面倒だから焙煎して挽いてあるのがほしいな~」「飲みたいときちちゃちゃっと飲めるコーヒーがほしいな~」製品=価値
(製品=機能による差別化)
③飲みたいときにちゃちゃっと飲める製品が普及してきて当たり前になるとサービスを求め始める。「どうせ同じコーヒー飲むんなら雰囲気のいい場所で一息入れたいな。できればお店の雰囲気がいい場所がいいな…」
(サービス=感情による差別化)
④いい感じのカフェが普及してきて当たり前になると、経験を求めはじめる。「世界一のバリスタが煎れたコーヒー飲んでみたいな」「インスタにUPして自分ってこんなコーヒーチョイスする人間なんだぜ!ってアピールしたいな」
(経験=意味による差別化)
--------------------------------今後の予測…---------------------------------------
⑤自分の価値を高めてくれる、自分の中身を成長させてくれるコーヒーを求めるようになる…
(経験から変身へと人々の欲求は変化していくだろう…)byJames H. Gilmore
経験経済←(書籍のリンク貼ってあります)
⑥変身の向こうはリレーションシップ
★今後UXデザインを手がけていくなら”経験”の向こう側の、人々の変身願望やリレーションシップ願望を叶えていくコトを考えてデザインしていくべき★
◇これからの製品・サービスに必要なこと◇
良質な顧客体験を設計すること=エクスペリエンスデザイン(経験価値のデザイン)
ーではエクスペリエンスデザインとはなにか?
user(顧客)が、本当はそうしたかったけれども、そうしたいと言えなかったこと、無意識のうちにあきらめていたこと=experience(経験)を目の前に差し出してあげること
ー誤解してはいけないこと
顧客経験=ユーザーエクスペリエンス(UX)とは快適に、心地よく、簡単に便利にユーザーのしたかったことができるよう、デザインしてあげることだけではない
ー便利で高効率であればいいのか?
○例えば①バゲッジクレームまでの最短距離○
ヒューストン空港は顧客の最大のペインであった「バゲッジクレームで何もせずにひたすら荷物を待つこと」の解決策としてバゲッジクレームまでの迂回路を長くして、裏側のオペレーションが間に合うようにすることで解決した。→結果、顧客の最大のペインは解決しスカイトラックス(世界の空港を格付けする機関)の順位を上げた。
資金を最小限に抑え、やオペレーションシステム変更による手間も省きつつ顧客のペインをなくす解決策として迂回路を長くすることを選択したが、状況・立場・文脈が変われば別の最善の解決策が現れる。
例えば資金が豊富にあれば荷出しのオペレーションを超高速に行うとか、飛行機を退席した客の順番に荷物を流すシステムを開発する余地もあったかもしれない…
バゲッジクレームで快適に過ごす別の方法を提案するという解決策のあるかもしれない…
状況・立場・文脈(ストーリー)に応じて最善の解決策は変わるのだ
○例えば②山の頂上直前まで楽に登れるケーブルカー○
高齢の方や小さな子連れ、サクッと軽装で山に登って時短&最小限の労力で頂上の景色だけ楽しみたいという人には最善の解決策。
でもガチで山登り好きな人たちにとっては愚の骨頂。「苦労して登った先に絶景見られるから美しいんとちゃうんかいっ!」
状況・立場・文脈(ストーリー)に応じて最善の解決策は変わるのだ
いいエクスペリエンスか否かは状況や価値によって変わる
なので顧客が期待している経験価値はなにか?その経験をどういうルールで楽しみたいか?と常に探るべき
(ここでいうルールとは例えば「フロリダ」。SNS用語?で「今から風呂入るから会話から離脱します」の意味。仲間内でSNS上で使うから楽しい)
ーたった二つの良質なユーザーエクスペリエンスとは?
価値と文脈(ストーリー/ルール)
★良質な顧客体験とは、状況・立場・文脈(ストーリー)によって変化する。UXデザインをする人間はそれを考慮した上で最善の解決策を設計するべき★
そしてリサーチによって”価値と文脈”を見つける。
それは時に大胆で革新的/確信的なのもかもしれない。
「何がほしいかなんて、それを見せられるまで分からない」byスティーヴ・ジョブズ
--------------------------------------------------------------------------------------
第2章 リサーチ・調査技法
ユーザーは自信が本当に「欲しい物」や「したいこと」を上手く言葉にできない。
なのでリサーチによって顧客自身が説明できない95%の無意識の領域を紐解く必要がある。
コアユーザー…常識的な範囲の利用者 全体の95%を占める
エクストリームユーザー…超マニアックなオタク的使用者もしくは、何らかの条件や理由・信念があって使用しない人たちを指す 全体の5%
リサーチはコアユーザーに対して行う。
ファインディング…インタビューで20~30は発見できるたくさんの情報。断片的気付き。
インサイト…自分の中で見つけたシンプルで新しい解釈。一本通る確信的な発見、あるいは洞察。
様々な発見を複層的で多面的な視点で”解釈”した結果。
理解≠解釈 感情移入して探るべき
○例えばレンタカー企業の場合○
企業から見た顧客体験
①予約を取る
↓
②顧客を受付まで運ぶ
↓
③書類を完成させる
↓
④返却手続き
↓
⑤車を掃除する
顧客自身から見た顧客体験
☆旅行現地でのレンタカー情報を検索
☆複数の業者を比較
①予約を取る
☆予約メールを携帯に転送する
☆空港で荷物を詰め替える
☆空港の発着ゲートで送迎バンを探す
↓
②顧客を受付まで運ぶ
☆子供が遠くに行かないように気を配る
☆荷物の盗難に配る
↓
③書類を完成させる
☆最初の目的地をカーナビに登録する
☆ガソリンスタンドを探す
☆コンビニに立ち寄りスナックを購入
☆返却期限時間を確認
↓
④返却手続き
☆空港までの残り時間を確認
☆忘れ物がないか確認
↓
⑤車を掃除する
企業から見える顧客経験の外側に顧客にとってさらに多くのエンドゴールが存在している。
経験を捉える視座を転換する=顧客に感情移入して想像する
顧客自身も意識していなかった問題・経験は新しい価値を生み出す価値
良質なエクスペリエンスは従来の体験・経験を変える
↓
これまであったモノやコトとユーザーとの関係性を変える
↓
新しい価値を生み出す。”リフレーミング”する
価値と文脈の融合が生み出すものは新しい意味
新しい価値
↓
新しい当たり前
↓
新しい習慣
を創る → 「イノベーションを生み出す」
○意味のデザインとは例えばスターバックス○
日常的な飲み物から→自分の文化度を記号化するツールへ
○意味のデザインとは例えばiphone○
「小さなコンピュータです」と言わずに「電話の再発明」として発表した
○意味のデザインとは例えfacebook○
友達の友達を可視化した(世界を小さくした)
○意味のデザインとは例えばjinsのメガネ○
メガネは視力矯正器具→目を守るもの(ブルーライトカット)
○意味のデザインとは例えばLINE○
メッセンジャーアプリsns→タダで電話”も”できてかわいいスタンプも送れるコミュニケーションツール
意味のデザインとは人々の”普通”と”生活習慣”を変える
--------------------------------------------------------------------------------------
デザイン≒ユーザー中心であるべきだけでは不十分な時代にさしかかっている
ニーズを解決するだけではもう足りない
人は「進化」を欲している
ーイノベーションとは?
だれかと市場のパイを奪い合うのではなく、今はまだない「無」を創造すること
デザインとは”愛”である by R.ベルガンディ
「突破するデザイン」by R.ベルガンディ(←書籍リンク貼ってあります)
そのためには、まだ問題として気づいている人が少ない、今後問題になってくる新しい問いを創出し解決することが必要
ーこれからの時代に求められるデザインの考え方は?
母性愛のデザインから (全部できる?これ分かる?困らないように快適にしておいたからね…)
↓
父性愛のデザインへ(将来こういう人間になってほしいから、あえて今これを送る…!)
「ブランドが神話になる日」 byダグラス・B・ホルト(←書籍リンク貼ってあります)
ー根付いていくUXをデザインするためには?
顧客の本質的なニーズ(未だニーズとして育っていないジョブ)に答える
(いずれ)最良の体験となる文脈で提供する
ーイノベーションの源泉になる原動力とは?
新しい問い・ゲーム・チャレンジ
ーさらに、今の時代に重要なこととは?
スピード×イテレーション(反復)
ーなぜなの?
過去の延長線上にはない価値の探求によりこれまでにはなかったモノ・コトを生み出す
不確実性を含んだ新しい価値提案
体験が実体化してはじめてユーザーが生まれる・評価が発生する
ずっと完成しない…
youtube/Airbnb/Uberなどがそうであるように…
-------------------------------------------------------------------------------------◇PM デプスインタビュー技法の実践◇
ー主要な定性調査法は下記の5つ
1.観察法
2.デプスインタビュー
3.心理描画図法(コラージュ法)
4.カードソーティング
5.文章完成法
今回は2のデプスインタビューを実践してみる。
ーデプスインタビューとは?
通常の質問では得られないような個人の奥深くに秘められたような心理や感情、考えなどを聞き出す面接法。一般的なリサーチルームではなくフィールド(インサイトすべきテーマが行われる現場=自宅、オフィスなど)で行われることで背景情報などの非言語的情報を収集することにも有効。
インタビュアーが行うべきこと
1.場づくり…何を話しても否定されないな…と思わせる。なんでも思ったことを話しても大丈夫なんだな、気取らなくても、分かったフリになくてもありのままでいいんだな…と思わせる。
2.舵取り…誘導ではない!タイムキープと進路調節を自然な流れで行う。
3.深掘り…「なぜ?」「それによってなにが起こる?」と表面的な答えに満足せず深層心理へ少しずつ掘り進んでいく。※でも「なぜ?」の問いは5回まで
良いデプスインタビューのための10のTips
1.「何を知るための調査か?」をとにかく明確に
インタビューテクニック<インタビュー設計
知るべき範囲と知らなくていい範囲をはっきりさせとく
○例えば、「企業で働くひとにとっての、働くことに関する現状や課題を知りたい」というテーマだった場合○
問いの目的を適切に設定することが大事
<悪い例>
日々の働き方を把握する
<良い例>
典型的な1日の生活パターンを知る
<良い例>
1日の中で行っている仕事内容について深く知る
目的を分類しながら書き出してみる
・睡眠時間は?
・日々の食生活
・運動してる?
・家族と過ごす時間は?
・休みの日何してる?
・同僚・上司・部下との人間関係は?
・ストレスに感じることは?
・ハッピーな瞬間は?
2.「ラポール」と「ムード」がすべてを決める
ラポール…インタビュアーとインフォーマントとの間の心的状態。
3.「共感」と「理解」を忘れない
「でも」と「しかし」は使わない
代わりに「例えば」「話は変わるんですが…」を使うようにする
4.「誘導」しない
5.生活者は「ニーズを語るプロ」ではない
「近い体験ってどんなのがあります?」とか分かりやすい言葉で助ける
6.被験者に「弟子入り」しよう
行動観察とインタビューを同時に行うこともある
7. 生活者は平気で「うそ」をつく
バイアスに注意。自分は人からこう見られたい、こういう理想でありたいという心理から演じてくることも多々ある。自分の言葉ではない表現を感じたら、「具体的には?」と深掘りすることで探る。
8.「なぜ?」を繰り返そう
とはいえ5回まで。それ以上繰り返すと根源的な回答になってしまい違うテーマでも同じ答えになってしまう。これぐらいでいいな、と思ったら話題を変える。
9.被験者の「過去~現在~未来」をタイムスリップしよう
10. 百聞は一見に如かず
記憶を再生するのではなく現地でリアルに行動してもらいつつインタビュー
インタビューの際の注意点
・抽象的な事象を扱う場合には、まず具体的な切り口から。
抽象→具象→抽象→具象 のサイクルを意識する。
・深掘りと拡張
・メタファーを探る
・ひたすら記録する。インタビュー中に「判断」はしない。
振り返りの際の注意点
・聞き手と話し手の間に信頼関係はあったか?
・上手下手だけでなく、インタラクト(相互作用、交流、やり取り)できていたか?
・インフォーマントが「話したかったこと」にアクセスできたか?
・インフォーマントが「話そうと思っていなかったこと」に話題が及んでいたか?
ファクトイド抽出の方法
ーファクトイドとは?
事実として提示された虚偽の主張あるいはまやかしの主張
インフォーマントの人柄を示す発言・しぐさをインタビュー後に抽出
・パーソナリティ
・知るテーマについての独自の捉え方
・フェイルとペイン
・表情の変化(気道哀楽)
・違和感
・重複
・言い換え
※繰り返し違う表現で出てくる言葉←インフォーマントが強調したいこと、分かって欲しいこと
※フェイルとペインは裏返すとキーがあることがある