
親と子はどのくらいの距離を保てばいい?わからないから、きっと踏み込んでしまうのです
前回大好きだった『週末旅の極意』。結婚10年目、全力で仕事に取り組み、その結果話す時間も顔を合わせる時間もない。そんな夫婦が週末旅をすることで、お互いの気持ちに向き合っていくドラマでした。
映し出される情景の美しさと、旅先だからこそ話せるであろう夫婦の本音と、とにかく私はどハマリしました。
あれから1年6か月。『週末旅の極意2』が始まりました。
今回は、家族がテーマです。
伝えたいことがある、でも家族だからって簡単には伝えられない
第2話は「親子の距離」。
今回の旅は黒部です。家族旅行だけれど、少しよそよそしい空気が残ったままの山岡家。
めぐみ(大原優乃)は、母・優子(石田ひかり)と父・義正(甲本雅裕)に伝えたいことがあって、週末旅を続けています。
伝えにくい、でも伝えなければならないことがあるとき、無意識にきっかけを求めてしまう。
自分の背中を押してくれるような何か。いや、追い込んでくれる何かかもしれない。
めぐみにとっての、日常とは違う旅先の空間のように。
伝えることで自分を否定されたり、関係が崩れてしまう結果になったりしたら怖い。つらい。家族だから絶対大丈夫とは思えない悲しさ。
めぐみが伝えられないのには、そんな想いがあるのではないでしょうか。
弟の誠(島村龍乃介)が言います。
「たぶんうちの親ってさ、普通の会社員が一番まともな生き方だって思ってるよね」
そう、めぐみの大好きな人は「会社員」という枠にはまる人ではない。
だからこそ伝えられないし、でも伝えたい。
親が知らず知らずのうちに、子どもに与えている圧って、なんなのでしょう。「こうあってほしい」「こうしてほしい」子どものことを想ってつい、けれどそれが積もり積もって圧迫してしまう。
子どもはいつだって、自分で考えて迷いながらも道を選択して生きているのに。
身に覚えがありすぎて、腕の針でツンツンつつかれているかのようです。
美味しいものと美しい景色、心と体をほぐしてくれる温泉があれば、距離だってきっと縮まる
めぐみと誠が感じていた、父と母の価値観。それを証明するかのように父から発せられる「収入が安定していれば」「ちゃんとした会社」の言葉たち。
親となったからわかるのか、言葉の遠い遠いはるか先に蜃気楼のごとく「めぐみのことが心配。彼がめぐみを幸せにできるのか知りたい」という気持ちが見えるのです。
親はいつだって、子どもの幸せを願っている。でも、その形は親が決めるものではありません。大人になったからこそ、親の気持ちと自分の気持ちが相容れないことに悩み、伝えたくても口に出せないのです。
しかし、気持ちは言葉にしなければわからない。
言葉を交わす機会が減るたびに、相手に向けた矢印の先が鋭くなって、いざ向かい合ったときには傷つけてしまうほどになってしまうこともある。
旅先という非日常の空間は、すべてをやわらかく包んでくれるのかもしれません。
普段は一緒に過ごしていない山岡家。でも、旅先では向かい合って食事をします。広い温泉でお風呂に入り、同じ部屋で寝るのです。
同じ時間を共有している幸せが、素直になるきっかけをくれるのでしょう。
めぐみは母にありがとうと伝えます。
「自由に、自分のことに全振りできていたのは、お母さんが家にいてくれたから」
「そのうち、ちゃんと話す」
きっと、いままでだって喧嘩して仲直りしてを繰り返したのです。
家族だからこそ伝えられないこともあるけれど、いつだって再生できる。
家族だからって、どこまで踏み込んでよいのでしょう。
私は息子に圧をかけず、生きられるでしょうか。
とりあえず、今日はそっと見守ろう。たとえ息子が洗濯物を出さなくても。学校からのプリントを見せてくれなくても。食べたあとに食器を片付けなくても。
明日には崩れてしまいそうな誓いを立ててみました。
『週末旅の極意2』は30分です。
もしかしたら、ドラマを見たあとの余韻の方が長いのではないか。
まるで異空間のような美しい景色、鮮やかで見るだけで美味しいことがわかる食事、いつか入りたいと願わずにはいられない広い露天風呂。
今回も、私に30分以上の満足を与えてくれました。