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Medium Ambient Collection 2023 に寄せて

ご縁あって、12月20日発売の「Medium Ambient Collection 2023」にて、Blurという曲で参加させていただきました。
来年の3月で音楽活動を始めて4年目に差し掛かろうとする中、初めてのフィジカル作品への参加は、私にとって大きな一歩となりました。
配信やダウンロードコンテンツが主流の中、フィジカルでの作品に一員として加われたこと、また、数あるアーティストの中から探し出していただけたこと、大変光栄に思います。お声がけいただいた宇都宮のアーティストNozawaさんには、心より感謝申し上げます。

ライナーノーツには、私の活動についてアンビエントやエレクトロニカの境界領域とあり、まさに私が今居たい場所のことが書かれていました。書き添えられた楽曲は私にはありがたすぎるぐらい美しい作品で…私の根底にクラシックがあることを見抜かれていたことにも驚きました。そんな素晴らしい仕事をされる方に自分のことを書いていただけて、本当に嬉しく思います。ありがとうございます。


以下は私の独り言です。せっかくなので、思いや経緯などを書き記しておこうと思います。


これまで自身の創作を軸にしながら、ボーカル曲、クライアントのニーズに合わせた楽曲制作など、ジャンル問わず様々に作曲や編曲をしてきた。元々音楽大学に通っていたので、出身と言えばクラシックにはなるが、そこでは答えがずっと出なかったこと、環境の変化で長らく音楽から離れてしまったことで、ここに至るまでに随分と時間がかかってしまった。
そして、今までの私からは遠くにあったと思われるエレクトロニカとアンビエントの狭間に何故立っているのか、その答えが今回のご縁によって一気に引き寄せられた気がしている。

幼少の頃に初めて触れた電子ピアノ。電子ということもあって、ピアノ以外の音にシンセサイザーもあり、その音がずっと好きだった。それはもう、弾いている自身の視界や、内蔵されていたデモ曲すら今も鮮明に思い出せる程に。しかし、小学校高学年の頃、父親の転勤を機に引っ越すことになり、アップライトピアノに変わった。もうその音と会えることはなく…ただ、ピアノの音も等しく好きだったので、寂しさはなかった。

長年電子ピアノを弾いていた癖なのか、習っていたピアノの発表会などでグランドピアノを弾く機会があった際に、他の人に比べてややタッチが弱いことを母はずっと気にしていた。最初から、せめてアップライトピアノで練習させておけばよかった、と。
もう25年以上も前の話にはなるが、当時の電子ピアノはアップライトやグランドピアノとは全く異なる質感だった。打鍵した時の深み、タッチの強弱が音に反映されるほどの電子ピアノが出たのは、もっと後の話。

とはいえ、そんな経緯があるからこそ、私は今ここに立っているし、辿り着けたのは紛れもなくあの電子ピアノのお陰だと、寧ろ私は母に心底感謝しなくてはならない。ようやくお気に入りの音に出会えて、あの時の音とはまた違ったけれど、それで作った曲が認めてもらえて、世界中の人に届けられる機会に恵まれたこと。もうこれ以上、他に昇華の仕方があるだろうか。そこに繋がった瞬間に思わず目頭が熱くなった。

楽曲についてあまり公に話すことはないのだが、書き下ろした「Blur」について少しだけ。
タイトルは、ぼかしや滲みという意味を持つ。そもそも自分の曲がアンビエントに属するとは考えたこともなかった。一応シンセ(サイン波)だし、エレクトロニカ?にしては抽象的、かといってアンビエントにしてははっきりものを言い過ぎているような…と。
今回のライナーノーツに書かれていたアンビエントやエレクトロニカの境界領域という表現が、私にとってもしっくりきた。思えば、空のグラデーションなど色が移り変わっている様を見ることが好きで、そこに美しさを感じたりする。添えた写真はそれを体現している。 

楽曲制作は、初めて向き合うアンビエントを、今のスタイルにどう調和させるかに頭を悩ませた。中でも、循環コード以外で自然と横流しに聴けるような、違和のない音の流れを作ることは、アンビエントの要素として必要だと思っていた。例え、始まりの音と終わりの音が異なっても、間に違う流れが混入しても、さもそれが自然だったかのような流れ。
ただ、あくまでも環境そのものにリンクさせるというよりは「音楽的であること」を軸に作曲した。

この曲をきっかけに、よりアンビエントに関心を寄せることとなる。実際にこの目で見たものや美しいと感じたものを音にしたい、という気持ちはずっとあった。具体的にどういう音楽を作りたかったのかは、この後にリリースした5枚目のアルバム「drift」に、その答えに繋がる要素を入れることができた。
私の表現したい音楽としての美しさとは、静かに遠くを見つめるようなものなのかもしれない。

driftについては、また後日談を書く予定。


長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。


tohma


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