4th album - microcosmos - リリース後のあれこれ
9月15日に4枚目のアルバム「microcosmos」をリリースしました。日頃から聴いてくださっている方のお陰もあり、何とか形にすることができました。いつもありがとうございます。
このアルバムは前作の「sketch」からいくつかサンプリングしたもの、旅行の際や近所を散歩した際に録った環境音を取り入れたものを織り交ぜています。今回はシンプルでありつつも、自分がこの地球に生きていることを実感できるような要素を持ったものをコンセプトに、輪廻(ループ)の中に様々な変化を持たせながら発展させることを意識して制作しました。
3rd album - sketch -
https://big-up.style/KXQ9AQLKA1
音のスケッチと同時に、抽象画についても記事にしていますので、よろしければご覧ください。
前作のsketchについてまとめていなかったので、それも込みで今回のアルバムについて少しお話ししようと思います(ちょっと長い上にひとりごとみたいになっているので、読みたい方だけスクロールしてくださいね)。
sketchはその名の通り、ひとつのシンセサイザーを使った(DTM的な言い方をするとひとつではなく、同じシンセをトラックを分けて使い、異なる音域で鳴らしたりしているので、実質は同じシンセを2〜4トラック程)シンプルな曲で、昨年の10月上旬から11月頃までの1ヶ月間で制作したものをアルバム用にまとめたものです。なるべく鮮度の高い方がいいよなあと思いながらも、アルバムとして聴いた時の満腹感はあった方がいいだろう、と尺を伸ばしたり、手を加えたりしました。
自身の楽曲制作に於いては、今までもこれは作ってよかったなと思うことはあっても、もっとやれたんじゃないかとか、心底満足できることは未だなく、常に新しいものを探している節があって、作曲自体にマンネリを感じていました(マンネリの原因は、アウトプットが多く、インプットが少なかったり、勉強不足になった頃によく陥るというか、考えてしまう癖ではあるのですが…)。
私なりに聴き易さを重視して、馴染みのあるコード進行を基盤にしつつ、そこにひと工夫入れることを常に考えながらやっていたせいか、楽曲を構成するものの大部分がコードになってしまい、それにかなり捉われていたことに気付きました。
まずはそこから脱却しようと、メロディーとコードが顕になる状態を作り、スケッチのようにささっと思い浮かんだことをメモるぐらいの気持ちで始めたのがきっかけです。あくまでも浮かんだものを音に残すだけで、メロディーやコードがどうのという雑念が起こらないように、1時間以内にその作業を終えることをルールとして制作しました。
日によってパッと浮かぶ日もあれば、浮かばない日もあり、20分程で出来上がる時もあれば、1時間ギリギリになったり、その日のコンディションによって様々でした。ただ、その日にしか書けなかった音楽も沢山あったので、一時とはいえやって意味のあることだったと思っています。
その後アルバムにするか悩んだのですが、これも私、そう思ってリリースするに至りました。
しばらくは完全にネタ切れで何をしようか思いつかず、歌物を作ったりしている内に、ユニット(tohk)でお世話になっているkasaiさんと忘年会(通話)をすることになりました。
普段使っているアプリの話を持ち出し、何か使い勝手のいいものないですかと。その時に出会ったのが「koala sampler」でした。サンプリングが常なhip-hop界隈では名の知れたアプリで、シンプルな画面に編集や切り取りをするにも必要最低限のものだけが視界に入ってくるので、余計なことを考えて脱線しがちな私にはぴったりでした。
それからまんまとそのアプリの虜になり、日がな自分の曲をサンプリングしては散歩に出て、拾った環境音を加工してドラムセットを作り、細々と制作を続けていました。今思えば、この時が一番音楽を続けている中で自分が探している答えに近づけそうな予感がしていたかもしれません。今まで自前のドラムセットの音作りなんてした事もなかったので、まずは一歩前進したかな。
そのサンプラーは自身でメトロノームの音を聴きながら音を打ち込むことができるのですが、その際の細かなアタックの違いや、いい感じのズレを作ることができたり、案外その偶然性みたいなところが楽しく…久々に子供に戻った気分で無我夢中でした。もう子供の頃の感動や嬉しさを生涯で経験することはないのだろうと思っていたのですが(子供時代の純真無垢な状態と比べたら、30年間で色々知りすぎてしまったような気がするので)、そんなことはないんだなあと。生きていれば何かしらの出会いはあるのだなあとしみじみ思ったものです。
メロディーとコードに着目することが多かった私に欠けていたリズムの重要性。4枚目のアルバムは、リズムに着目して制作することにしました。
デコボコで、ちょっと不恰好だけど、それでも愛すべきもの。完璧ではないけれど、夢中になって作った愛着のあるおもちゃを解体するように、少し勿体無いけれど、置くスペースがなくなってきたら、新しい形の模索をしなければ、解体された限られた素材で、限られたスペースでの創作は難しいと考えています。敷地を増やすこともできますが、ただ増やし続けるだけでは、新しいものは生まれません。当然の如く、過去と向き合うことが必要になってきます。
何度か過去の記事に書いたことがあるのですが、新しいものは、ただ新しいのではなく、必ず過去を持っているんですよね。根っこがあって、その派生系が今の新しいもの。根本から新しいもの、例えば細胞や化学物質などが見つかれば、それは今やノーベル賞に匹敵するほど、簡単には見つからないものです。
自身が新しいもの、と思ってやっていることは、大体は先人が既に見つけたり、もうやっている人は多くいると思っています。ただ、内容が全く同じものかと言われたら、そこは十人十色なので似て非なるものかな。だから、少なくとも自分にとっては意味のあることだと信じて、自身の音楽表現はあの手この手で今後もいろんな形で追求していこうと思っています。
リズムに関しても、私が今出力出来るものは過去に聴いてきた音楽や経験に左右されているものが大半であり、突拍子もないものが出てきたわけではありません。ひとつ新しいものといえば、このアルバムのタイトルにもなっている「microcosmos」は、拍子よりも横の流れを意識して制作したもので、改めてメトロノームと合わせて聴くと、結構違和感のある曲です。曲として聴いている分には、拍子感を抜きにして風が通り抜けていくような感覚で聴けるかなと思います。サンプリングしたシンセサイザーを逆再生した際の反応の遅れを利用した、私なりのフィーリングで書いたお気に入りの楽曲です。
この曲は元々没として保存していたのですが、最初に打ち込んであった4小節が気に入っており、どうしても曲として残したいと考えていました。今まで過去に作った曲からわざわざ引っ張り出して作ることは少なかったのですが、今回はそれが好転して、少し壁を越えられたような、過去を上手く昇華できたような気がしています。
久々に3000文字以上の長文を書くにまで至ってしまいました。日頃から文字を書き留める癖をそろそろつけるべきかなと思いつつも、その時の感覚や感情は私の稚拙な文章よりも、共にしている音楽にした方がいくばくか伝わるものが残せるだろうと思ったりして、いつもこのような長文のお気持ち表明みたいになってしまうのですよね(これを書いている時間の方が音楽を作るよりも長く、何度も下書き保存をしては見返したりと時間がかかるもので、ついつい後回しに…)。
そんなわけで4枚目のアルバム「microcosmos」を今後ともよろしくお願いいたします。まだ聴いてない方は、よろしければ以下のリンクやYouTubeからご試聴いただければと思います。
BIG UP!
https://big-up.style/Nj1e0F5TIY
BOOTH
https://tohma-cps.booth.pm/items/5010037
Bandcamp
https://tohma20.bandcamp.com/album/microcosmos
それでは、また。
tohma
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