「売れ残りケーキ」と言われても怒らなかった私たち
「他人の承認を求めてはいけない」。――「自分らしく」が合言葉の最近、よく言われることだけど……なかなか難しいですよね。
私は子どもの頃から、弟のほうがはるかに優っていました。勉強、運動、音楽、美術、書道の全てにおいて……。だから、「私だって認めて欲しい」という気持ちが細胞に染みついています。
加えてADHDぎみで、需要がある働き口にきちんと収まることができないのです。集中しやすい興味ある分野でスキルを認めてもらわないと、職を得ることができませんでした。
このような傾向は、誰しも多少はあるのではないでしょうか。
今どきは、お茶くみ・コピー取りが仕事になった昔とは違います。どんな仕事にもPCスキルや生産性が求められ、評価にさらされます。幼少期から受験体制で競争に明け暮れた方も少なくないでしょう。
「人に認められることを求めるな」と言われたら路頭に迷うのは、私だけではないのでは?
1980年代まで、女性の人生における「他人からの承認」とは、クリスマス・ケーキ指標(24歳までに結婚しないと売れ残り)に従って、ちゃんと「売れる」ことでした。
私は売れ残りだったけど、珍しくここでは承認を求めませんでした。結婚願望はなく、彼氏もいなかったので、無理に結婚して時間を浪費したくはなかったのです。
不思議なのは、このように頑張って結婚年齢を上げた私たち売れ残り組が、そういえば「クリスマス・ケーキ」圧力に対して怒ってなかったこと。
なぜ疑問に思ったかというと、「SNS投稿で怒っている未婚の皆さまを見て」です。「結婚しないの?」攻撃に対する「余計なお世話!」という威勢のいい反発発言を多く見かけるので……。
(「うるせっ」だそう↓)
私たち世代の従順は、なんだったんでしょう? 「売れ残り」と洗脳されていたから、怒る資格なんかないと思っていたのかな……。
実家に出入り禁止になるほどの「結婚しろ圧力」をかけられても、両親に対して怒りや失望は感じませんでした。元々毒親だったし、「世間がこうだから心配なんだろう」ぐらいに思っただけ。
今考えたら、ずいぶん意気地なし。大学生の時には私に結婚を望む彼がいるのを知りながら、お見合いを強要した親なのに……。
人のせいにはしたくないけど、その彼とうまくいかなかったいきさつには、多分に親も関係しています。
その後、「今だったらいいかな」と妥協できるところまで自分のことをやった29歳で、間に合わせ結婚をしました。
そんな独身追い込み期に作った曲を、アメリカのレーベルからリリースされたセカンドアルバム(2022年)に入れています。
「人生でこういうこと↑がやっていきたい」との手ごたえを得るのに、クリスマス・ケーキ(24歳まで)は急すぎでは?
私に政略結婚をさせる気だった父は「音大なんてとんでもない」という方針。強制された普通の大学を出て自活しながらのわずか2年で、何が掴めるというのでしょう?
……な〜んて、怒ってどうなるものでもなかったですしね。
ところがネット社会の今は、堂々と「余計なお世話」系の意見を表明して、多数の支持を集める時代。正直な発言の勇気には感服です。巧みな発信力を活かして、次の世代に繋げる何かを残していただけるのを期待しています。
例えばこんなふうな直球で、周りを素敵に変えることもできるのですから。(介護サービスの新人スタッフさんのストレートな一言がすごい。スレッドをぜひ!)
私たち売れ残り組は、肩身の狭い思いを何年もしながらも、決して不本意な時期に結婚はしませんでした。そのみんなの記録があったから、今の35歳ぐらいまでの女性に時間の猶予を残すことができました。
もちろん、「下の世代のお役に立とう」なんて意図したわけではありません。だから今の未婚の方々も、ただご自分の気持ちに忠実に生きてくだされば、自然と次世代を利することに繋がるはずです。
それに当たって、ひとつ避けたほうがいいポイントを。(言葉の)暴力には要注意です!
私の世代は、全共闘(学生運動の全学連)のすぐ下の世代。あの方たちは、世の中に対する漠然とした抗議のために、人殺しをしたり、何もしてない先生を殴りつけました。
私の大学のクラス担任も、温和で主義主張のない先生なのに、意味なくさんざん暴力をふるわれたそうです。世の中が面白くないのはわかりますが、集団心理って暴走するもの。
その世代の女性たちがあえなく24歳までに結婚していたのですから、笑っちゃいます。体制に対する抗議は、どこに行っちゃったんでしょう?
勢いある独身の皆さまは、暴力的な発言で道化にならないよう、どうかお気をつけて。ネットの集団心理に煽られないように。
例えば既婚者を責めるような発言は、暴力の一種です。未婚の自由を主張するなら、結婚したり結婚を勧める自由だってあるはず。(私は既婚の娘にも誰にも結婚を勧めたことはありませんが)
確かに私も、最終的には周りの圧力に抗えずに結婚した弱い人間です。えてしてそんな弱い既婚者が、未婚を攻撃する側に回るようではありますが、全員じゃないですから……!
攻撃に報復したり、過剰な自己防衛って、つまりは承認を求めているからでは? そんなことしなくても大丈夫。生き方の魅力だけで次世代を育むことはできます。
最後に。カッコ悪い売れ残りだった私たちは、結果的に適齢期引き上げの先鋒となりました。最高にカッコいいです。
売れ残りケーキと言われても怒らず、世間の承認を求めなかったがゆえに、承認に繋がったのでしょうね。
未婚のアラサー・アラフォーの方々が還暦を迎えるころ、ご自分たち世代を「最高にカッコいい」と誇れますよう……。弱い先輩として、こそこそと応援しています!