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世界一EV市場をけん引する意外な中国企業

 中国の国家標準「自動車運転自動化分類」では、自動運転車両をレベル0からレベル5まで6段階で定義しており、レベル3(条件付き自動運転)、レベル4(高度自動運転)、レベル5(完全自動運転)の自動運転車両が対象となっています。
 2022年8月に武漢市郊外で自動運転レベル4に相当する完全無人タクシーのサービスが開始されました。また、北京市内に「無人運転の街」とも呼ばれる自動運転車の実験区があり、2024年1月からは無人のパトカーも導入されています。
 中国では、インターネット検索大手である百度(バイドゥ)などが自動運転タクシーを展開しており、北京、広東省深圳市、湖北省武漢市などでサービスが提供されています。また、深圳市には自動運転関連企業が国内で最も多く集積しており、2023年8月末までに15社、自動運転車両325台に対し、走行テストと実証実験の認定通知書が発行されています。
 2024年4月25日から5月4日まで中国・北京で開催された「オートチャイナ2024(北京モーターショー2024)」は、日欧米韓の自動車メーカーに対して2-3年先行し、独自進化した中国オリジナルEVの驚愕の姿を見ることになりました。世界一のEV市場である中国は新興ブランドや電動化に立ち遅れた国営系メーカーも参入し、中国国内の競争も熾烈を極めてきました。
 ここ数年、ファーウェイやシャオミが通信事業からシフトを進め、自動車のIT化領域に投資し、その成果が出始めています。知能化がEV市場をけん引し、高級EVで差別化を図っています。ファーウェイは、2019年に自動車産業に参入、パワーユニット、制御装置、車内シアターなど自動車向け部品・装置の事業拡大を拡大しています。
 ドローン大手のDJIも自動車産業に参入し、DJIオートモーティブ社はドローン技術を活用した自動運転システムを提供しています。価格は7000元と競合他社の価格の数分の1です。完全自動運転を実現しており、リアルタイムで信号や人などを認知、7つのステレオカメラを装備しています。演算処理を1か所に集約し、格安で自動運転ができるようにしています。
 中国の国産自動車メーカーはここ2年で知能化を重視しており、消費者も知能化を重視するようになってきました。自動運転車両が大衆化しています。フォルクスワーゲンなど海外20社も自動運転システム搭載を検討しており、ガソリン車でも使えます。EVに出遅れている日本の自動車メーカーも自動運転システム導入を検討中です。
 習近平政権が策定した2021-2025年の中期経済目標「第14次5か年計画」では、自動運転を重点分野のひとつとしており、中国はインフラ協調型の自動運転技術の実現にも動き始めています。
 米国大手の電気自動車メーカーであるテスラは、主要市場の中国で自動運転システムを展開できる見通しとなりました。車から集められるようになる多量の走行データを技術の発展に活かせるかどうかが成長回復のカギを握っています。中国で外資企業が自動運転技術を使って車を走らせるには当局の許可をもつ現地企業との提携が必須ですが、テスラは中国IT大手の百度(バイドゥ)との協業によりこの障壁をクリアする見込みです。中国当局からの承認が得られたとの報道が最近、ありました。
 自動運転技術の基となる人工知能(AI)の学習に中国の走行データも活用できるようになるとみられ、開発にプラスの効果が見込まれます。テスラは自動運転技術に一層注力し、無人タクシーを8月にも披露する予定です。マスクCEOは今年100億ドルをAI開発に投じる方針も示しています。
 知能化が進むEVの進展に、日本の自動車メーカーもうかうかしていられなくなってきました。逆走や危険運転をする人間による運転のリスクを考えれば、日本でも安全な自動運転へ舵をきっていくことが必要ではないでしょうか。中国の意欲的な姿勢は不況の中でも明日を信じて活力ある技術開発の姿、社会実験を終えて大衆化している姿を見て驚きを隠せません。

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