「セクシー田中さん」の著作権問題に思う
昨年放送された日本テレビ系のドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが今年1月に急逝したことに関し、同作の発行元・小学館が芦原さん死去に関わる経緯を外部発信しないとの報道が出ている。この問題については、いろいろと思うことがあるが、少子高齢化社会で出版物の市場縮小のなかで売り上げ拡大を図るには、紙媒体だけでなく、テレビや映画などの映像メディアへもいろいろ対応させていく必要があるという背景があると思います。漫画雑誌だけではなく、映画化、ドラマ化、ネット配信などは必然的になっているという事情があると推測されます。
問題は、著作権者が自分の著作物を映画やドラマなどの制作側にゆだねたものの、勝手に世界観やストーリーを変更して作り変えられるときに起こるのではないでしょうか。ドラマ「セクシー田中さん」は、契約上、著作に忠実であることが前提になっていたが、いざドラマ制作となると原作者の意思とは違ったものが出来上がっていたことにあると言われています。しかし、著作権者の芦原さんの代理者である小学館が原作者の意思より自らの利益(出版権)を優先してテレビ局のドラマ制作側と交渉していたなら、それは完全な利益相反行為ではないかということにあります。原作ファンの読者を中心にこの疑惑を払拭するためにも小学館はきちんとした対外的な説明が必要ですが、芦原さん死去に関わる経緯をきちんと検証し、再発防止策を外部発信しなれば、このような悲劇が再び起こる可能性は残ると言わざるを得ないです。
原作漫画の実写化が当たり前の世の中になっている現在、著作権者の代理である出版社は責任のある会社なのですから、今回の経緯説明や問題点の把握、今後の変化への道筋などが示されなければ根本的な問題解決にはならないです。先日、テレビを見ていたらある漫画家がこの問題をあまり大げさに取り上げないでほしい、うまくいっているところはあるのでいい流れを止めないでほしいと言っていましたが、実写化にあたって以前から危ういと言われていたアニメの著作権者の権利問題をこのまま何も言わないのは未来への改善策を提示できる最大のタイミングを失することになるのではないでしょうか。
本日、小学館の公式声明として「著作権」と呼ばれる権利には「著作財産権」と「著作人格権」があり、「著作財産権」が利益を守る権利に対し、「著作者人格権」は著者の心を守る権利を指すが、今回の問題は小学館の編集者がついていながら結果的に著者の心を守ってあげられなかったことに悔いを残したとされています。著者の気持ちに寄り添い、「著作者人格権」という著者がもつ絶対的な権利について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を広げることが再発防止の核となると小学館は考えているとのことでした。今後、原作者を守ることを第一として映像制作サイドと編集部の交渉で具体的に何で是正できるのか、実際は試行錯誤しながらとなるのでしょうが、二度とこのような悲劇を起こしてはならないのは確かだと思います。