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【読書記録】重松清『とんび』 家族は育つ。
母を亡くした、父一人、子一人の三十年間の記録。
♦家族は育つ。
親も子育てに迷い、失敗し、それでも子どもを育てていく。
そのように私を育ててくれたのだろうか。
この本を読むとそんなことを考える。
私は親という立場をまだ経験していないけれども、
父や母に「迷い」や「失敗」なんてものはないと思っていた。
だけど、
今、母が結婚し私を産んだ年齢に近づき
今の自分にもし子どもがいたら
教えられることなんて、何にもないような気がするし
私自身がまだ成長が足りていない気ばかりして怖くなる。
家族って育つんですね
と美佐子さんは言う。
一人が二人になって、二人が三人になって…。と
家族は増えて育っていくけれど、
子どもだけでなく
親も、子を育てる事で成長してくのだと感じる。
♦家族のカタチ
家族のカタチも様々である。
早くに母を亡くし、父も行方知らず、叔父夫婦に育てられたヤスさん。
早くに両親を亡くした美佐子さん。
妻・美佐子を亡くし、二人で暮らすヤスさんとアキラ。
不妊治療をしても、子どもには恵まれなかった昭雲和尚と幸恵さん。
家の事情で娘を置いて出て行くことを選んだ、たえ子さん。
親のいないヤスさん、美佐子さんもアキラが生まれたことで
家族が育っていった。
幸恵さんと照雲、たえ子さんはアキラを実の息子のように
育て、
アキラは由美さんと結婚し、血のつながりのない健介の父親となった。
ヤスさんの父親は知らない場所で血の繋がらない子どもの
父親となっていた。
血のつながりがなくたって、家族は育っていく。
血の繋がり以上のものがある。
家族とは不思議なものだ。
♦周りの力で育っていくこと。
アキラは母がいない代わりに、
周りのいろんな人の力を借りて育ってきた。
この物語で描かれている時代
(原作は昭和三十七年~、ドラマは昭和四十七年~を描いている)程、
今は周りの人の手を借りる事は難しくなっているかもしれない。
けれども、私も思い返せば、
ピアノの先生、担任の先生、部活の顧問、友達のお母さん…
親以外の色々な人に色んなことを教わり、叱られながら
育ってきた。
家族だけで背負わなくていい。
周りの人の手を借りながら。
私も、
子供ができたときはそうやって育てていけることを願う。