【読書記録】町田そのこ『夜空を泳ぐチョコレートグラミー』
息をする。
息を吐く。
ただそれだけのことなのに、
苦しさを覚えると、気づけば呼吸が浅くなっている。
自分の居場所に満足しているひとはどのくらいいるだろう?
楽に呼吸をできているひとはどのくらいいるだろう…?
必死にヒレを動かして、自分なりに答えを求めて、
そこが居場所なんだって自覚するように。
それとも、
他の広い海を求めてもがくように。
囚われない、自由な自分でいれたらなんて楽だろうと思うけど、
何にも囚われていなひとなんていない気がする。
自分の住む街や家族という小さな水槽の中で、
苦しさを覚えて、生き方に迷う。
留まる決断をするひともいれば、
広い海や違う水槽を求めて飛び込むひともいる。
そんな人たちに焦点を当てた連作短編集。
短編といえども、連作とある通り、出てくる登場人物は
直接的ではなくともつながり合っています。
誰でも、形の違う水槽の中で泳ぐ魚なのかもしれない。
タイトルのチョコレートグラミーは自分の口の中で
稚魚を守り育てる魚みたいです。
もちろんだけど、魚の生態にも意味があるんですよね。
物語と重なりあう魚の意味も、読み進めて納得してほしい作品です。