【読書記録】辻村深月『傲慢と善良』
※ネタバレも含みますので内容を知りたくない方はご遠慮ください💦
意思決定というのは辛いものだ。
人生は選択の連続。
今日は何食べようくらいの選択ならなんてことないが、進学、就職、恋愛、結婚…。
人生の大きな選択には、多くの迷いと不安とがつきまとう。
周りの声、自分の心。折り合いをつけるのは難しいと思うときがある。
この物語は、坂庭真実と西澤架という二人の”婚約”がきっかけで始まる物語だが、
あるきっかけで彼女の「過去」を知っていく中で、互いの中にある傲慢さ、善良さ、そして自分自身の傲慢さにも気づいていく。
特に第1章は”坂庭真実”という人物の印象が読み進めるほど変わっていく。
最初は傲慢な架と善良な真実という関係図が徐々に崩れていくのだ。
ページをめくり、最初と違う印象を受けるたびに驚きがあるのだが、
考えてみればこういった一人の人物の中での性格の矛盾みたいなものは、必ずしも私たちの中にもあるものだろう。
気が強いと豪語する人が意外と繊細だったり、逆に普段は大人しい人の中にも、頑固さがあったり。
そして、「傲慢さ」は気づかないうちに、
自分が身を置いた外的環境によっても形成されていく。
私も地方出身者なので自分自身も経験があることだが、地元の中にも有名な高校、大学、就職先があってそれは地元の中では大きなステータスになる。
ただ、一歩外に出ればそれは通用しない。そして、自分が思う以上に他人はそれに興味がない。
何事にも上には上がいる。でも、どんなステータスでもそれにプライドを持っている人はいる。
大人になってから人を好きになることの難しさ。
アプリで出会うことの難しさ。また、うまくいかなかった時の落胆。
そんなリアルさもある中、このお話は恋愛だけにとどまらない、
「自分自身と本当の気持ちを探す旅」だ。
身近な人のこと、そして自分自身のこと。
思っている以上に、知らないことがあるのかもしれない。
そんなことを思った。