『吉原御免状』を観た

久々すぎる更新は観劇のおはなし。
前の更新からいろいろあり、私はあれよあれよというまにうつ病になってしまい休職からの退職、現在お仕事はできていません。
ですが、だんだんとじわじわと元気にはなってきていて、いろいろなところに出かけたり、いろいろなものを見たりできるようになってきました。

この夏は劇団☆新感線の『バサラオ』を堪能しまくりました。博多、東京、大阪と、全部で8バサさせていただきました(斗真くんファンの母はライビュ含めて10バサしておりました)。

バサラオの際に座席に置いてあったフライヤー。
そこで私は表題の『吉原御免状』を知りました。
劇団☆新感線で19年前に上演され、今回ゲキ×シネとして上映するとのことでした。

私が初めて劇団☆新感線に触れたのは8年ほど前。
そこから母の影響で、斗真くんが出演する作品はすべて観劇させていただいていました。
もちろんゲキ×シネの存在は知っていましたが、観たことはなく 観てみたいと思っていた矢先でした。
それに舞台は吉原。私は昔の風俗(色の意だけではなく)に興味もある。
しかも『バサラオ』で美しすぎる殺陣を披露されていた川原さんが「一番お気に入りの殺陣」(意訳)とコメントされていて、観るしかない……という強い気持ちが湧き上がってきて、8バサ後の熱にあてられながらムビチケを購入したのでした。

ここから先は『吉原御免状』ネタバレを含みます。
あらすじなどは公式サイトをどうぞ。


観終わったあと、とても乱暴な言い方ですが私はバカでかい感情を抱えて雨の新宿を歩きました。
3時間どっぷりと私にとっては初めての笑いのない劇団☆新感線に触れられて、自分のなかの核みたいなものに手を突っ込まれた感じがしました。

まず、殺陣がすごい。
私は殺陣どころか演劇にもそんなに明るいわけではないので詳しくここがあれがすごい、などとは言えないのですが、スピードが段違いでした。
バサラオでのTTコンビ(斗真くんと倫也くん)の殺陣が速すぎて、とんでもねえ……はやすぎてなにしてるかよくわからんって……と思っていたのですがそれを凌駕してくる堤真一さんと古田新太さんの殺陣。
目が追いつかないほどでした。

そして太夫のおふたりの美しさ。
京野ことみさんはショムニ(しかも再放送)のイメージしかなかったので驚きました。
あんなに清楚で凛とした太夫だとは。
松雪泰子さんはもう、わかりきっていたことですがとても艶やかで、吉原のシーンになるたびにおふたりに見とれていました。
Dolby Atmosで観たのですが、私もいま吉原にいますか!?と錯覚するような臨場感でした。

さらに。私は劇団新感線のオープニング(というのが正しいのかわかりませんが)が大好きなのです。
観たことがある方ならわかっていただけると思うのですが、劇団☆新感線の舞台では(少なくとも最近は)演出で緞帳などに映像が投影されることが多いです。詳しくなさすぎて文章で説明するのが難しいですが、プロジェクションマッピングみたいなイメージです。
それを使用して、タイトルがばばーん!!!と映し出されるのです。
たとえば『バサラオ』では、主人公 ヒュウガが登場し、決め台詞ののち、バサラオの題字が舞台に出現します。
あれが一種の癖といえるほど本当に大好きでして、何回観てもぞくぞくして今回はどんなオープニングなんだろう……!!と作品ごとにわくわくするのですが、『吉原御免状』はどんなだったんだろうと思っていました。
約20年前の作品ですから、いまより技術的にもできることは少ないはず。ひょっとしてなかったりするのかしら、と思っていたところ、ありました。
しかもドドドド最高のかたちで。
もし今の技術が使えるとしても、あれ以上のオープニングはないです。
吉原という場所を最高に活かした演出で、映画館で声をあげそうになりました。


そしてもちろんストーリーがとてもよかった。
幻斎のセリフが、いちいち私の心を抉ってくるのです。

「優しいのは悪だよ」
「それで持つのかい、自分もまわりも」

そしてラスト、修羅に目覚めたあとの

「俺はいままで、なにをしていたんだ」

という誠一郎。

人に優しくすることがなにより大事だと思って生きてきました。人に優しくできない自分は嫌いですし、それが当たり前だと思っていました。

しかし人間は仏ではなく誰しも心に鬼がいて、
修羅に目覚めなければ、鬼にならなければならないときがあるのだと 鬼を押し殺しているだけでは「本当に」優しくはなれないのだと

お前は自分が優しくいることに酔っているだけで、
きちんと自分の中にいる鬼に向き合っていない

そう言われた気がしました。


終演後、なぜスタンディングオベーションができないんだ、させてくれ!私にスタオベさせてください!それかお金を払わせてください!という気持ちになりながらも、いまこの作品に巡り会えた奇跡について想いを馳せていました。

『吉原御免状』が約20年前舞台で上演されていたころ、私は8歳でした。
舞台好きな母に連れられて舞台自体は観に行っていましたが、もし当時『吉原御免状』を知っていても観たいとも思えなかったでしょうし、観られなかったと思います。内容的に。ゲキ×シネとしてもPG12ですし(私はR15だと思います)。

ただそのころ、もうDVDは存在していたので、「映像に残す」という技術や文化があったわけです。
そしてゲキ×シネとして上映できるところまで技術が追いついた。
そして、私も成長して観られる年齢になった。

この3本の時の流れが、いま私に『吉原御免状』を観させてくれたのです。

これって奇跡だよなあとしみじみ思いました。
いろんなことがあったけれど、生きていてよかった。

今年の夏秋は、最高のエンターテイメントを享受することができてよかったです。

いったん『吉原御免状』の上映は終わってしまいましたが、今度は11月下旬からDolby Cinemaで上映がまた始まるようです。
……また観るんだろうなあ!!

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