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心揺さぶられた映画で振り返る2021

2021年、心揺さぶられる作品にたくさん出会った。

劇場で観た作品はそれほど多くはないけれど、去年に比べたら映画館に足を運べたと思う。


さて、12月29日の時点で、動画配信サービス+劇場で98作品鑑賞。
せっかくなので、年末までにあと2作品、合計100作品まで観るつもり。


そして2021年も残りわずか。
総括として、今年鑑賞した映画のうち、特に心揺さぶられた作品について記録しておこうと思う。


*以降、紹介するすべての過去記事はネタバレ含みます。これからこれらの映画をご覧になる予定のある方はご注意ください。


ちなみに、ベスト10はこんな感じ。


一作品づつ、紹介していきます。


1.『すばらしき世界』

西川美和監督作品「すばらしき世界」は本当にすばらしき作品だった。

この映画では、人生のレールを踏み外した男、三上が見た世界が描かれる。

人は、居場所がなければ生きてはいけない。が、私たちの生きる社会はこの上なく不寛容。そのことが三上を苦しめる。

ラストカットがとても象徴的で、鑑賞後に受けた衝撃にも似た余韻は、今でも忘れられない。この映画が投げかける「すばらしき世界」とはいったい何か?
そんなことを考えさせられる作品だった。

そして、役所広司の演技が本当にすごい。まったくもって期待を裏切らない。
また、仲野太賀の演技が光っていたのが印象的。

私の中で、2021年ベスト1の映画です。



2. ファーザー

これは傑作だった。
「すばらしき世界」と優劣つけがたく、最後まで1位にするかどうか迷ってしまったほど。

この映画は、認知症のアンソニーとその娘の物語。記憶の喪失と混乱がもたらす残酷なる世界を描いている。

自分が見ている世界を誰にも理解されない主人公アンソニーの苦しみが見る者に迫る。その一方で、変わっていく父の姿を見守るアンの絶望が胸に突き刺さる。

認知症患者アンソニーの視点で「喪失の過程を生きる不安」を体現する作りが見事。
ポプキンスの演技は圧巻だった。



3.偶然と想像

2021年も終わり近づいた12月後半、すばらしき映画に出会えた幸せ。。

「偶然と想像」は、「魔法」「扉は開けたままで」「もう一度」の3編からなる短編映画。
濱口竜介監督の世界観を存分に味わえる「会話劇」が秀逸すぎて、鑑賞後の満足感たるや。

そして、偶然こそが人生を形作っているのだと改めて。

「魔法」では、話題作に多数出演の古川琴音が主演。偶然が呼び寄せた、感情のもつれが描かれる。
「扉は開けたままで」では渋川清彦の存在感に魅せられた。可笑しみのあるオチに「あらら」と思わず声が出てしまうような。
そして、ラストの作品「もう一度」で描かれる偶然がこれまた秀逸。
前向きなトーンで作品を締める構成もお気に入り。



4.スウィング・キッズ

1951年朝鮮戦争下、捕虜を収容した韓国巨済島捕虜収容所を舞台に繰り広げられる物語。

イデオロギーに翻弄される登場人物の葛藤や苦しみがヒシヒシと。

にしても、資本主義?共産主義?それが何だというのだ。
生きることは、もっとずっとシンプルなのに。

自由の意味や価値を改めて。

そして、劇中音楽がすばらしき&ド・ギョンス演じるギスのタップダンスシーンは圧巻。



5.花束みたいな恋をした

菅田将暉、有村架純W主演というだけでも期待値があがるが、それをまったくもって裏切らない作品だった。

誰しもが一度は経験したであろう「恋が始まってから終わるまで」の貴重な時間。
それらが丁寧に、そして共感性を持って描かれる。
「好き」という想いの尊さを改めて噛みしめながら、そして、自分自身の「あの頃の恋」に重ね合わせながら鑑賞した作品。

坂元裕二脚本ならではの秀逸なダイアログがツボ。



6.野球少女

鑑賞後、「諦めないこと」について思いを馳せた。
女だから男だから、あるいはいい齢だからという理由で目標や夢を諦めるのは自分へのエクスキューズでしかないのだ。

スインの気持ちに感情移入しすぎて、ガラガラの映画館で鼻水を啜るほど泣いた。

さて、絶対諦めない少女、スインを演じたのは「梨泰院クラス」で注目されたイ・ジュニョク。彼女が、真っ直ぐで、情熱と不屈の精神を持つ少女を好演していて、ファンになってしまった。



7.ドライブ・マイ・カー

なんと言うか、小説のような映画だった。
(原作は村上春樹の同名小説)

こちらも濱口監督らしく、秀逸な会話劇。
3時間という長さを感じさせない、独特の世界観だ。
登場人物たちの抱える喪失感がジリジリと伝わる。

そして、鑑賞した後も「何か」が心にひっかかっている。
未だ作品を消化できていないのかも。
そのひっかかりの正体を知るために、もう一度観たいと思っている映画。
心に「跡」が残るような、不思議な感覚を味わった。



8.あの子は貴族

松濤に暮らす裕福な家庭の箱入り娘華子と、苦労しながら東京で生きる地方出身の美紀の物語。

親の人生をトレースするという意味で、上流階級の人々と地方で暮らす人々は似ているとする視点が興味深い。

自分の居場所を懸命に探す二人の姿に寄り添いたくなる良作。



9.BLEAK NIGHT 番人

高校生たちの友情と、もつれた感情がリアルに描かれた作品。

主人公ギテの心の叫び、そして彼の死によって行き場のない感情に苛まれる友人たちの葛藤。それらが淡々と描かれることで、かえって切実に痛みが伝わってくる。

臨場感のあるカメラワーク、時系列の交錯などの演出が独特、且つ効果的。
地味な作品であるけど、間違いなく秀作。

イ・ジェフン、パク・ジョンミンなど、韓国実力派俳優の共演もみどころ。



10.KCIA南山の部長たち

1979年の大統領射殺事件が描かれる。犯人は、大韓民国大統領直属の諜報機関、中央情報部(KCIA)の部長キム・ギュピョン。

そのキム部長を演じるイ・ビョンホンの迫力がすごい。いい男の代名詞のように思っていた彼の別の顔を見たような。演技の幅に唸る。

韓国映画は現代史ものが本当に素晴らしい。
「KCIA南山の部長たち」も期待通り。



最後に

最近は韓国コンテンツに夢中な私だが、今年は日本映画が豊作だったという印象。


なんだろう。
やっぱり映画は日本がいいんじゃないか?

「すばらしき世界」「花束みたいにな恋をした」「あの子は貴族」そして、濱口監督作品「ドライブ・マイ・カー」「偶然と想像」と、ここに紹介しただけでも5作品。

どれも繰り返し見たくなる。
(もちろん、その他にもたくさんヨキ作品あり)



さて、2022年はもっと劇場で作品を鑑賞したいと思う。

動画配信サービスで気軽に観るのもいいんだけど、やっぱり「映画を観るぞ」という意気込みと共に、大画面で作品を味わいたいと思う今日この頃。



みなさま、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。


*2021年ドラマベスト10の記事も書きました。


*2021年、個人的に目標としていた「ドラマ・映画ブログ」を立ち上げました。
こちらも是非ご覧ください。


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