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【掌編小説】人見知りのジェスチャー
乗り込んだ列車には
すでにたくさんの人が座っていた。
デッキにも人が立っている。
「2号車の8列A、窓際の席」
僕は自分の指定席を探す。
そこには──
誰かが座っていた。
イヤホンをした若い男が
目を閉じている。
眠っているのだろうか。
……一旦スルー。
僕は何事もなかったかのように
僕の指定席を素通りし、
デッキまで抜けた。
(どうしよう。このままデッキで3時間?)
(……いや、無理だ)
人見知りな心が顔を覗かせる。
人が多いのも苦手、
知らない人に話しかけるのも苦手。
「怖い人だったらやだなぁ」
でも、ここは
強気に行くんだ。
そこは僕の席なんだから。
「すいません。そこ、僕の席です。」
「???」
相手は外国人だった。
結局最後は、ジェスチャー頼り。
【あとがき】
先日JRに乗った時のほぼ実話。平静を装いながら心の中では人見知りしたり、緊張してるタイプの人間です。
ちゃんと席には座れました。