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「みの太家の魔法にかかった夜」

ある日の夕暮れ、金町に事務所を構えるサブローとミツルは、ムーニンの自宅がある柴又へと自転車を走らせていた。
目的は一つ、ムーニンに貸した5,000円の取り立てだ。

「5,000円なんて大した額じゃないけど、返してもらわないと帳簿が合わないしな」とサブローが言うと、ミツルが「まあ、でもムーニンって奴、ちょっと面白いキャラだよな」と笑いながら答えた。

柴又の静かな住宅街にあるムーニンの家の前に着き、サブローがインターホンを押すと、奥からムーニンがのんびりした顔で出てきた。
「ああ、サブローさんとミツルさん、どうもなんだムー。今日はなんのご用なんだムー?」

サブローは腕を組み、「いや、ムーニンさん、そろそろ例の5,000円、返してくれないと困るんだよね」と少し強めに言った。

ムーニンは少し戸惑った顔をしてから、「ああ、それなんだムー。でも、今日はどうにも手持ちがなくてな…でもさ、二人にぴったりの場所があるんだムー」と突然話をそらす。
そして「とっても素敵な居酒屋があるんだムー。せっかくだから一杯どうだムー?」とにこやかに提案してきた。

サブローとミツルは顔を見合わせ、少しばかり疑わしげだったが、ムーニンの強引な誘いに押され、「まあ、少しなら…」と返事をし、ムーニンについていくことにした。

数分後、三人が辿り着いたのは「みの太家」という名前の小さな居酒屋だった。店の外観はどこか懐かしく、木の温もりが漂っている。
ムーニンはドアを開け、「ここが最高なんだムー!」と自慢げに言った。

店内に入ると、店主のみのるさんと息子のはるとくんが温かく迎えてくれた。
「いらっしゃい!今日は新しいお客さんだね?」
とみのるさんがにこやかに声をかける。

三人はカウンターに腰を下ろし、まずはビールを注文。
目の前に出てきたのは、香ばしい焼き鳥や煮物の盛り合わせ。
サブローは焼き鳥を一口食べると、「おい、これ、うますぎるだろ!」と感動し、ミツルも煮物の柔らかさに驚いた。
「いやあ、ムーニン、ここ最高じゃないか!」と二人はすっかり食事に夢中になってしまった。

さらに、店内のカラオケが盛り上がりを見せ、はるとくんが軽やかに歌い始めると、ムーニンがまたもや「さあ、サブローさん、ミツルさんも一曲どうだムー!」とマイクを手渡してきた。
最初は渋っていた二人だったが、酔いも回ってきたこともあり、いつの間にかデュエットで熱唱する流れに。

歌い終えると、みのるさんが「いやあ、二人とも歌が上手だね!さあ、もう一杯どうだ?」と気前よくビールを注いでくれた。サブローとミツルはますます気分が良くなり、ムーニンと談笑しながら何杯もおかわりを重ねた。

夜も更け、ふとミツルが時計を見て「あれ…俺ら、何しに来たんだっけ?」とつぶやいた。
サブローも「…えっと、確か取り立てに来たんだったような…?」とぼんやりした表情。

ムーニンはにっこり笑い、「まあまあ、今日は楽しい夜だったムー。また今度、ゆっくり話そうなんだムー」と、うまくかわしてニコニコしている。

結局、サブローとミツルは取り立てをすっかり忘れ、美味しい料理と楽しい時間に酔いしれたまま、「みの太家」を後にしたのだった。

葛飾区鎌倉-もうひとつの我が家-
居酒屋・ご飯処 みの太家
https://minotaya.jimdofree.com/

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