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このままでは変わらないアフターコロナの組織

マイクロ人事部長の髙橋です。

さて、緊急事態宣言が解除になりました。

「ビフォーコロナにはもう戻れない」
「これからはニューノーマルだ」

メディアでも、盛んにテレワークや新しい働き方について報道しています。

でも、僕はこれに強い違和感を感じています。
「本当に、アフターコロナに組織の形や働き方は、変わるのか?」

日立製作所が、「脱・時間管理」を表明

昨日、日立製作所さんは在宅勤務を前提とした人事制度への改革を発表。

これ、素晴らしい取組だと思います。
経団連会長も務められている中西会長は、ビフォーコロナから誰も触れず形骸化していた「新卒一括採用ルールの廃止」に手を下し、「終身雇用は限界」という、極めてシンプルな「正しい」メッセージを出しています。
(旧態依然とした大手企業が英断を下せない中において突出した正しいメッセージを出されていて、僕がとても好きな経営者のお一人です)

僕はこのYoutubeを、これからの日本に必要な打ち手をシンプルにお話しされているので、学生に向けてもよく見せています。
(「若造で生意気だけどしょうがないな」というコメントが好き)

ずっと議論されて脱却できていないメンバーシップ型からの脱却、「ジョブ型雇用へのシフト」を表明。そして「時間管理」についても言及しているけれど、一体どのくらいの人たちがこの日立の方向性に舵を切るのか。

テレワーク 盛り上がっているように見えるけど

メディアでは、この緊急事態宣言中、テレワークの報道をガンガン出しているのですが、様々な企業の話を聞いているのと、僕の実感値は違う。
そんなにテレワークは、進んでいるのか?
(リモートワーク、テレワークと、言葉が混在しますが、この記事では政府が活用している「テレワーク」という言葉を使います)

ちょうどカオナビさんが、約1万サンプルで、調査結果を出していました。
結論、テレワークは、はっきり言ってそんなに進んでいない。

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フルテレワークをしている人は、たった17.4%。
一方、毎日出社している人は、58.5%にも上っています。僕の実感値も、これにとても近いです。

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僕が注目したのは、この2つの調査結果。
結局、「大手企業でかつ首都圏だけ、盛り上がっている(それでも半数)」というのが、結果です。

これでも「テレワークは進んでいる」状態なんでしょうか?

コロナでできなくなったことは、何か?

このコロナショックがもたらした本質的な「できなくなったこと」はなんでしょうか?僕はコロナでできなくなったことは、本当にシンプルだと思っています。

①人の接触制限
感染リスクがあるので、人との接触(リアルコミュニケーション)ができなくなった

②人の移動制限
感染媒介をしてしまうので、人の移動(リアルムーブメント)ができなくなった

コロナでできなくなったことは、この2つだけです。

でも、この2つの「できなくなったこと」が、経済活動はもちろん、組織活動にも大きく影響してしまいました。それは何故か?

組織活動が、リアルに依存していたから

この「リアル依存」が、人々に不便をもたらしたし、これまであれだけICTの活用やテレワーク推進、そして働き方改革も進まなかった理由だと思っています。本当に生産性を向上させたいなら、テクノロジーを活用して、やり方を変えてもやっていたはず。でも「やっぱりリアルが一番だよね」と、本気になってやってこなかった。そのツケが回ってきただけだと。

日経ビジネスでの篠田真貴子さんの問いは、本質だと思います。

・これまで、多くの大企業がいろいろな理由を付けて「リモートワークの導入は難しい」と言っていませんでしたっけ?
・1~2週間やってみて、「うまくいかなかった」といって、また元の働き方に戻ろうとしていませんか?
・リモートワークが効率的にできない理由は、本当に「リモート」だからですか?

僕自身、この2年間、福岡に某企業の人事責任者としての仕事を毎週のように行ってやっていました。それ以外の日はテレワークを使って仕事をするスタイルで、うまくいっているように感じていました。

でも、コロナによる「人の移動制限」ができなくなったことで、リアルに福岡に行けなくなってしまった。そうしたら、あっという間に業務破綻しました。現地スタッフとのコミュニケーションが疎遠になり、福岡の現場の様子が、全く見えなくなってしまったのです。

これはどういうことなのか。
僕自身はテレワークで十分機能していましたが、現地スタッフが「テレワークをしている僕とのコミュニケーションをどうとったらいいか分からない」というジレンマに陥ったのです。

「僕自身が(無意識のうちに)リアルに会える週1日に重要な業務を集中していた」のです。現地スタッフも同じで「リアルで一切会えなくなった僕とどう仕事を進めていいか分からない」。もっとテレワークを活用したコミュニケーションを日頃からとってリアルでないコミュニケーションに慣れていれば、このような形にはならなかったはず。つまり、僕自身もテレワークを組織目線で有効活用できていなかったということだと思っています。

地方格差(移動制限は何をもたらすか)

前のnoteで、地方との情報格差について書きました。

東京と、地方の情報格差は、あまりに大きい。
前述のテレワークの実施率の地方との差でも、それは歴然です。
「人との接触制限が東京ほど顕著ではないからだ」という意見もあると思います。確かにそうです(withコロナ直前に、東京と福岡の感度の違いを明らかに感じていました)。でも、東京を中心としたメディアのテレワーク報道は、明らかに地方との乖離はあると僕は感じています。
(むしろ、東京の方が特殊だと感じます)

当面は、コロナと年単位でうまく付き合っていかなければならないし、人の移動制限はしばらく続きますが、一部の先進的な企業を除けば、地方企業はやっぱりリアル回帰に向かっており、「リアルで来てくれないのなら難しいかも」という感覚。今の段階はパフォーマンスレベルの合意の難しさを感じています。

こんな記事もありました。
ボトルネックになっているのは地方の偉い人たちだけでなく、地域によるリアルに対する感覚の溝というのがあると感じています。

東日本大震災の二の舞になる

僕の中では、アフターコロナの組織改革や働き方改革は、このままだと進まなくなるのではないか、コロナワクチンができ、感染に対する抑止力が高まった時に何が変わっているのか。組織や働き方のニューノーマルは遠いのではないかと思っています。

今緊急事態宣言が解除になってから、一部の自律できる人を除いて、「やっぱりリアルがいいよね」と、これまで通りオフィスに戻ってしまう人たちが多くいます。そして、生活スタイルが安定していけばしていくほど「やっぱりコミュニケーションはリアルだよね」とか、「テレワークなんて大変なだけで生産性なんて上がらないよ」とか、「チームビルディングにはテレワークは不向き」とかのコメントが多数できるのは、容易に想像ができます。

そうなった時には、この2か月のみんなの苦労はなんだったのか。
コロナが収束した時に「ああ、あの時は大変だったよね。でも、元通りだからもうテレワークなんてこりごりだよ」となってしまったら、この2か月間は単に経済活動を止めて、日本の借金を増やし、体力のない企業をふるいにかけて、失業者を増やしただけの時間になってしまう。

東日本大震災の時に、あれだけ危機的状況になったにも関わらず、結果的に残ったのはクラウドシステムの活用だけ。組織も、働き方も(まあ少しは変わったけれど)結局劇的には変わっていない。今回のコロナショックも、この時の二の舞になるのではないかと、非常に危機感を持っています。

生産性を上げるために向き合うべき課題

僕は決してテレワーク推進信者ではありません。
組織づくりは、確実にリアルコミュニケーションの方が楽に決まっている。少なくとも今はコミュニケーションコストが膨大にかかっているので。

でも世界全体がリアルコミュニケーションに制限がかかったこのタイミングで考えられることは、山ほどあるはずです。大学の講師をしていても、講義の準備は圧倒的に大変になっていますが、教室のリアルコミュニケーションだった時に比べて圧倒的にインプットレベルが上がっているのを実感しています(特に1on1コミュニケーションにおいて)。

ニューノーマルを作り上げるなら、リアルとテレワークを含めたオンラインコミュニケーションの複合化が、間違いなくこれからの組織の生産性を上げていくのは間違いありません。でも、このままリアルの日常に戻ってしまったら、一部の本質を理解している企業を除いて、また形状記憶となり、生産性が上がらず何も変わらなくなることに大きな危機感を持っています。

制限があったからこそ分かったことがある。この苦しかった2か月を、しっかりと振り返り、そこで可能性があるものについては忘れずに、いいものをしっかり取り入れて形を変えていくのが、ニューノーマルのあるべき姿ではないでしょうか。

僕は、そこにチャレンジし続けたいと思っています。

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髙橋実@マイクロ人事部長
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