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足立実の『ひと言』第30回 「自民党は本当に勝ったのではない 衆参同日選挙の結果を受けて」 1986年8月10日

 同日選挙で自民党は三百四議席を獲得して、中曽根は大得意である。社会党と民社党は惨敗してうろたえている。
 だから中曽根やニューリーダーが専用飛行機で飛び回るほど、史上空前の金権選挙をしているのに(田中角栄がヘリコプターを使ったときは金権選挙と、大騒ぎだったではないか)すかさず追及する気力すら失っている。
 情勢は確かに人民にとって不利である。中曽根の反人民政策は「任期延長」になるだけでなく、いっそう露骨になるだろう。
 だからこそ、私達労働者は事態を落ち着いて分析する必要があると思う。
 自民党は本当に勝ったのではない。重要な「勝因」の一つは、社会、民社が「全民労協」を促進した点にある。「全民労協」は、会社の云うなりになれという御用組合である。労働者の遅れた部分は「会社の云うなりに」自民党に票を入れただろう。
 また多数の労働者が、社会、民社、共産のどの党も、労働者階級を代表して闘わないことに失望して支持しなかったろう。
 同日選挙は、「全民労協」に反対し全国労組はじめ闘う労働戦線を発展させることが、労働者の利益を守る正しい道である ことを教えた。また、労働者階級の真の政治的代表が必要であることを教えた。
 このように教訓をつかみ実践すれば、情勢は一歩一歩労働者に有利に開ける。
 なにも悲観したり慌てたりするにはあたらない。(実)

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注釈

・「同日選挙で自民党は三百四議席を獲得して、中曽根は大得意である」
1986年7月6日に行われた第38回衆議院議員総選挙。第14回参議院議員通常選挙との衆参同日選挙であった。この選挙は自由民主党が衆院で304議席を獲得する圧勝に終わった。これは自民党結党以来の最高記録である。
この結果中曽根内閣はさらに、2期4年を1年延長し、5年の長期政権を実現する。

・社会党
日本社会党。現在の社会民主党の前身
1955年社会党の左右両派が再統一し、その後護憲運動・原水禁運動などで活躍。1960年に右派の一部は脱党して民主社会党(民社党)を結成。野党第一党ではあるが党勢は横ばいを続け、党内では路線の対立もみられた。1994年に委員長村山富市が自民党、新党さきがけとの連立内閣を組閣し首班となる。その後「社民党」と党名を変更するが、民主党の結党などもあり党勢は衰退している。

・民社党
1960年1月に結成され、1994年12月まで存続した右派社会民主主義政党。安保闘争の進め方をめぐって日本社会党を離党した西尾末広(すえひろ)・西村栄一らが結成の中心メンバーであった。1970年4月には党名を民主社会党から民社党にかえ、社会民主主義政党の色彩をさらに薄めた。1994年12月の臨時党大会において解党を決定、新生、公明、日本新党とともに新進党を結成し、35年間に及ぶ歴史に幕をおろした。

・「田中角栄がヘリコプターを使ったときは金権選挙と、大騒ぎだったではないか」
1974年参院選では当時現役の田中角元首相はヘリコプターもつかって全国を駆け回った。

注5・「全民労協」
全日本民間労働組合協議会の略称。労働戦線の統一を目ざして1982年(昭和57)に結成された組織。1989年日本労働組合総連合会(通称連合)の結成によりこれに参加した。
『ひと言』第17回 「投降主義に反対しよう-全民労協批判」参照https://note.com/minoru732/n/n22a43b8d057c

・共産
日本共産党
日本の共産主義政党。1922年に結成され、日本の政党のなかでは、第二次世界大戦前・戦後を通じて同一の党名でもっとも長く存続し、もっとも古い歴史をもつ。第二次世界大戦前の23年間は非合法状態にあり、さらにその半分である1935年から1945年までの10年間は中央委員会が破壊され、組織的活動は中断された。共産党が国民の前に公然と姿を現し、合法的に活動を開始するのは、敗戦後のことである。

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1986年7月6日に行われた衆参同日選挙で自民党が歴史的大勝利をおさめたことをうけてのコラムである。

これは、自民党対社会党、保守対革新という政治構図の55年体制を支配者の側からぶち壊すといった衝撃をもった出来事であり、ここから中曽根は新自由主義的な政策をさらに加速させることとなるのである。

そういう意味ではこの選挙における自民党の304議席獲得は筆者の言うように「情勢は確かに人民にとって不利である。中曽根の反人民政策は『任期延長』になるだけでなく、いっそう露骨にな」ったのも事実だが、しかしこれは敵の階級支配の破綻を表すものでもあり「自民党は本当に勝ったのではない」と言っている。そして「教訓をつかみ実践すれば、情勢は一歩一歩労働者に有利に開ける。なにも悲観したり慌てたりするにはあたらない」とこの選挙結果にうちひしがれることを戒めている。

管理人にとってもこの選挙は印象深いものであった。

当時、まだ選挙権がなかったがこの選挙の毎日新聞の世論調査のアルバイトをしたとき、投票先を尋ねる人ほとんどが「自民党」と答えていた。

そして選挙結果はその通りになった。あれは衝撃的であった。

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