足立実の『ひと言』第1回 「四千万円多すぎない-反行政改革」 1983年6月10日
武蔵野市の四千万円退職金は多すぎない。三十年以上も働いて、これから老後失業時代に入るとき、少し大きい家が買える程度の金を得ることが、「世論」の袋叩きにあわなければならないような悪事なのか?
民間の資本家が、べらぼうに安い退職金しか出さないのが問題なので恨む相手を間違ったらダメだ。
武蔵野問題は、自治体の組合を萎縮させ、日本の労働運動を骨抜きにし、労働者全体を抑圧することが目的であり、マスコミのキャンペーンに乗せられるような、愚かな真似をしてはならない。
俺達は自治労の闘う人達を断固支持する。それが俺達の退職金を上げることに通じる。
自治労の人達に一言。
君達が未組織労働者の組織化や、労働者の闘いを支援すれば、地域の労働者は君達に連帯するだろうし、自分たちだけ良ければいいという態度をとれば、相応の反応が返っりてくるということである。
(画像は東京都武蔵野市の中心、現在の吉祥寺駅)
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背景
1983年4月の統一地方選を直前にして、東京・武蔵野市で起きた市職員の退職金問題。これは当時、「武蔵野ショック」と呼ばれていた。
当時の革新市長に対抗して出馬した保守系候補が、いわゆる“4000万円退職金”の実態を暴露、その引下げを公約に選挙戦をたたかい、前市長を僅差で破って当運した。
武蔵野市は前々市長時代から5期にわたって革新市政が続いており、市民参加や老人ケアなどの先駆的行政の実績で、全国的にも革新市政の象徴的存在としてその名を知られていたが、“4000万円退職金”の攻勢一本で敗れたといわれる。
「武蔵野ショック」とは、こうした敗戦が革新陣営に対して与えたショックをいうが、それのみではない。新市長は当選後直ちに退職金引下げの公約実現に着手したが、市職労との対立の模様や、武蔵野市のみならず全国の他の自治体の退職金の実態がマスコミで大々的に報じられたため、ショックは全国的なものとなり、該当する自治体での見直しが迫られることになった。
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このコラムは筆者が自ら組織した地域合同労組、東部労組の機関紙『東部労働者』に掲載を始めた貴重な第1回のコラムである。
コラムの題はまだ決まっておらず「社会批評“胸に国を思い”」と組合のスローガンになっている。
コラムの題が「ひと言」となるのは同年9月の第4回からである。
コラムで筆者は自治労の人達に未組織の組織化や闘争支援を呼び掛けている。
そして、労働者同士が退職金の多寡でいがみ合うことを戒めて世論が労組攻撃に向かうことを批判している。中小労働運動を牽引してきた筆者の本領発揮である。
一人称が「俺達」となっており、「べらぼうに安い」という言い回しが時代を感じる。
ちなみに武蔵野市長は現在は革新系である。
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