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足立実の『ひと言』第44回 「鴻池利雄さんへの誓い」 1988年2月10日

 二月二十五日は、鴻池利雄さんの七周忌にあたる。
 この日、パラマウント製靴労組を代表し大久保製壜支部の都労委傍聴支援中、クモ膜下出血で、七十三年の最後の一日を大久保闘争のために捧げて急死された。
 私達は鴻池さんや支援してくれた何十万の人々の恩を忘れることはできない。このような支援なくして、大久保闘争の現在はなかった。
 大久保製壜闘争は東部労組、新労組、大労組の仲間、すべての支援者の十二年の奮闘の結果、所期の目的を達成しつつある。
 同時に、新たな矛盾が主要な位置に上った。それは、会社が大久保実前社長らの覚醒剤謀略事件のため、対外信用を失墜し、重大な経営危機を招いたことである。
 私達は「共同声明」にもとづき、障害者差別解消、全労働者の労働条件の向上のために、経営危機の打開という新たな任務に取り組まなければならなくなった。
 いままでは、障害者差別・労働者いじめに対する憎しみだけで闘ってこれたかもしれないが、今からは状況も任務も違う。団結の質も、もっと強いものが要求される。
 この新たな任務を、立派になしとげてこそすべての支援者の献身と期待にこたえることができることを心に刻もう。 
 そして、私達は鴻池さんが身をもって示したように、生命の最後の瞬間まで闘い抜くことを心に誓おう。(実)

(画像は故鴻池利雄氏)

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注釈

・「この日」
1982年2月25日

・大久保製壜支部
筆者が所属した東京東部労組の支部
『ひと言』第4回 「方針のこと」 参照https://note.com/minoru732/n/n3308040cf2c4

・都労委
東京都労働委員会
労働委員会は、労働者の団結擁護・労働関係の公正な調整企図を目的とする行政委員会。使用者委員・労働者委員・公益委員の各同数で、国・地方公共団体に設置する。

・新労組、大労組
大久保製壜所がつくった第二組合が大労組(大久保製壜労働組合)。その中の比較的若い組合員が中心となって新たに結成されたのが新労組(大久保製壜新労働組合)である。
この時点で大久保製壜所には東部労組大久保製壜支部、新労組、大労組と3つの組合が存在した。
『ひと言』第38回 「大久保製びん所新労組を支持する」参照https://note.com/minoru732/n/n41c38d63c5ef

・覚醒剤謀略事件
新労組結成であせった大久保実前社長は、1987年11月6日、元暴力団員を使って支部の指導的組合員のオートバイに覚醒剤を隠し、警察に密告させた。そして当該の組合員は逮捕された。前社長の目的が彼を刑務所に入れ、支部・新労組の解体にあることは明白だった。
東部労組と支部は委員長を先頭に警察署に厳重な抗議をおこない、総力をあげて真相を明らかにし、当該組合員は釈放された。
この事件により前社長は逮捕され、実刑二年の判決で服役した。

・「共同声明」
支部と新労組が会社に対して争議全面解決を提案した1988年の共同の声明

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支部と新労組の争議全面解決に向けた「共同声明」が出されたことにより、大久保闘争が新たな段階を迎えたことを受けたコラム。

「今からは状況も任務も違う。団結の質も、もっと強いものが要求される」と支部組合員を新たな闘いへと奮い立たせている。

コラムの最後に「私達は鴻池さんが身をもって示したように、生命の最後の瞬間まで闘い抜くことを心に誓おう」とあるが、筆者はこれを実践した。

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