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足立実の『ひと言』第38回 「大久保製びん所新労組を支持する」 1987年6月10日

 富士宮管理者養成学校では「心身を鍛える」と称して夜中に四十キロの強行軍をやらせるそうである。心身の鍛錬はそれぞれ個人の意思でやることであって、問題は非常識な訓練を人に強制する点にある。
 繁華街で大声で演説させたり、歌を歌わせたりもするそうである。自分の意思でやるのならいい。強制される者は、はじめ耐え難い恥ずかしさに苦しみ、慣れた時は恥を知らない人間にされている。
 こうして養成された、人間らしい感情を持たない職制は、労働者を大声でどなりつけ、非常識な労働強化を強要して、資本家の儲けと欲望を満足させる。
 「地獄の特訓」の目的はここにある。
 大久保製壜所新労働組合が、会社が小林誠氏を強制的に富士宮に行かせることに反対するなかで結成されたことは、労働者としてまったく正しい行為であり、私達は全面的に支持する。
 会社は職制を動員して、東部労組に対するデマ中傷を吹き込み、新労組と東部労組の間を引き裂こうと躍起である。
 会社がいくら悪口を言っても、それは東部労組が断固として労働者の側に立っており、労働者の利益を守る力を持っていることを証明するだけである。
 会社からほめられるためには、東部労組は障害者差別に賛成し、仲間を富士宮送りを支持しなければならないではないか。
 そんなこと出来るわけがない。
 新労組と大久保支部は団結し、大労組の仲間と団結して「地獄の特訓」をやめさせよう。 (実)

(画像は富士宮管理者養成学校の非人道的な「地獄の特訓」を報道するテレビ番組。大の大人が泣き崩れる)

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注釈

・富士宮管理者養成学校
静岡県富士宮にある管理者養成研修施設。徹底したスパルタ教育の合宿が特色。
1967年、セールスマンや管理者向けのテープ教材を製作する株式会社社員教育研究所を設立する。その後創立者のひとりである財部一朗が図書館で得た第二次世界大戦中の兵士を育成する「新兵教育」(ブートキャンプ)に影響を受け、ビジネスマンとしての基本教育のあり方を研究し、1979年に管理者養成学校を設立した。
当初は代々木の駅前にて夜間に通学、数ヶ月の受講で修了という形式であったが、2ヶ月後には13日間合宿訓練(極限の訓練)が開始。現在行われている「管理者養成基礎コース」となった
参考

管理者養成学校(ウィキペディア)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%A1%E7%90%86%E8%80%85%E9%A4%8A%E6%88%90%E5%AD%A6%E6%A0%A1

参加費37万円の「管理者養成学校」が過酷すぎる 駅前で名前を大声で言わせる訓練もhttps://www.excite.co.jp/news/article/E1487661232727/

・職制
(工場・会社などで)役づきの職員。係長・課長以上の管理職。

・大久保製壜所新労働組合、大労組
大久保製壜所が主導してつくった第二組合が大労組(大久保製壜所労働組合)。その中の比較的若い組合員が中心となって新たに結成されたのが大久保製壜所新労働組合である。
この時点で大久保製壜所には東部労組大久保製壜支部、大久保製壜所社新労組、大久保製壜所労組と3つの組合が存在した。

・大久保支部
東部労組大久保製壜支部
筆者所属地域合同労組東部労組の支部
足立実の『ひと言』第4回 「方針のこと」参照https://note.com/minoru732/n/n3308040cf2c4

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障がい者差別を続ける大久保製壜所の御用組合である大労組から生まれた新労組を断固支持するコラムである。

この新労組が結成された原因となった富士宮管理者養成学校は驚いたことに今現在もまだ存在しており社会的に問題となっているようである。

これについては「こんなのただの洗脳」「ブラック企業を合法だと思わせるよう仕込んでるだけ」「こういう思想が付いた人が社会に出てくると考えるだけでも最悪」「完全な社畜兵を作り上げる」といった声があがっている。

このような研修を強要する会社に対して若い労働者がそれに反対して会社と闘う労働組合を結成することは「労働者としてまったく正しい行為であり、私達は全面的に支持する」と述べている。

最後に「新労組と大久保支部は団結し、大労組の仲間と団結して『地獄の特訓』をやめさせよう」とまとめているが、この後新労組は東部労組大久保製壜支部と合流した。

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