ある労働運動指導者の遺言 足立実の『ひと言』第79回「先進者の悩み」 1998年3月
新しい支部の活動家の悩みの一つは、組合結成のときはみんな燃えて参加したが、時がたつにつれ組合員が会議に出なくなり、あるいはやめていくという問題のようだ。
これをどう理解し解決するか。
私は自分の利益をどういう方法で守るかというそれぞれの認識の差から生まれる分岐だと思う。
先進的な人は、経営者と断固闘わなければ労働者の利益は守れないと考えて先頭に立って闘っている。
後れた部分は、会社に幻想をもったり、労働者の力を信じられないので悲観的になり、組合活動にたいする意欲が減退してしまう。
その間に中間的な人たちがいる。先進的な人と後れた部分は少数で中間が大多数という場合が多い。
対策は先進的な人が確信をもってみんなを引っぱることである。同時に中間的な人たちと団結し、次の目標と方針を明示し、彼らに自分の利益を守る方法を倦まずたゆまず理解させていくこと、そして彼らがやれる闘い方を探して行動してもらうことだ。そうすれば中間的な人は変わるし、後れた人もついてくる。決定的なことは先進的な 人が実践と学習によって、その役割をしっかり果たすことだと思う。
五年間中断した「ひと言」を復活し、組合員の皆さんとの交流の場を与えてくれた編集部に感謝する。
読者の反論や討論を歓迎します。
足立実
筆者注
98年3月号のために書いたが「確信をもって春闘をやろう」に書きかえ、この原稿は投稿せず。
(画像は、ある東北地方の高校に掲げられている看板。斎藤茂吉が作詞した校歌の中に「倦まずたゆまずほがらかに」という歌詞があるらしい。)
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“筆者注”にあるように、この原稿は機関紙には掲載されず“ボツ”となった幻の「ひと言」の原稿である。
なので、20年以上の年月を経てここに人目に触れることとなる。
3月のまさに「春闘時期」の原稿なので時宣にかなった「確信をもって春闘をやろう」の原稿に差し替えたようである。
しかし、本原稿は「時がたつにつれ組合員が会議に出なくなり、あるいはやめていくという問題」についてこれをどのように「理解し解決するか」といった労働運動を指導していく上での普遍的な「先進者の悩み」についての一定の解答を与えてくれている。
それは「先進的な人が確信をもってみんなを引っぱること」であり、「同時に中間的な人たちと団結し、次の目標と方針を明示し、彼らに自分の利益を守る方法を倦まずたゆまず理解させていくこと、そして彼らがやれる闘い方を探して行動してもらうことだ」と述べている。
いずれにせよ「倦まずたゆまず」粘り強い働きかけが大切であるということであろう。
この原稿の署名は筆者のフルネームでされている。